日本版オーマイニュースの狙いは打倒権威主義

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 正式発表までブログに書くのは控えてほしいと頼まれていたのでこれまで書かなかったが、昨年末に韓国オーマイニュースのオー・ヨンホ社長が僕に会いたいと言ってきた。僕自身もぜひお会いしたい人物だったので、喜んでお会いした。約2時間ほど、いろいろと意見交換した。
 そのときのオー社長の来日目的は、日本版オーマイニュースの立ち上げ準備だった。日本でオーマイニュースを立ち上げて果たしてうまくいくだろうかというオー社長の問いに対して、わたしは否定的な見解を述べておいた。

 以前、裏ブログにも書いたが、オーマイニュースの韓国での成功はその時の韓国特有の条件の下でなし得たことで、それを別の国で再現することは非常に困難
であると僕は考えている。韓国では、既存メディアの多くが保守に傾倒していた上、オーマイニュースがスタートしたときにはまだブログという消費者発信メ
ディアが普及していなかった。
 日本には「2ちゃんねる」というお化け掲示板があるし、ブログもかなり普及した。オーマイニュースを真似た市民記者型のニュースサイトも幾つか既に存在
する。そんな中へ進出してきても、市民ジャーナリズムの中心的存在になるのは非常に難しいと思う。もちろん個々人の市民記者の中にはすばらしいジャーナリ
ズムを実践する人も出てくるだろうし、記事の中にはすばらしい記事も出るだろう。そういった単発的な成果を別にして、韓国オーマイニュースのように既存の
報道機関と肩を並べるような報道機関としての地位を確立することはそう簡単ではない。
 ただもちろんやり方次第で不可能ではない、と思っている。まず必要なのはプロモーションだ。ただ「サイトを作りました。皆さん、記事を投稿してくださ
い」だけでは、サイトは盛り上がらない。サイトを盛り上げるためには、かなりの力技が必要になる。優秀な記者を集め、特ダネを連発し、人が集まる工夫をた
くさん盛り込まなければならない。つまり金がかかるわけだ。放って置いても記事が集まるようになるまでには、かなりの資金を投入しなければならない。資金
はどうするつもりなのか、とオー社長に聞いてみた。オー社長は、出資を検討してくれる人がいる、ただまだ確定していない、と答えていた。
 市民記者型サイトにもう1つ必要なのは、テーマ、主張だ。韓国オーマイニュースは、テーマを打倒保守政治に設定することで革新派の若者の支持を集めた。
既存メディアにないテーマを全面に押し出したことで、既存メディアに不満を持つ人たちが集まったのだ。日本版オーマイニュースはどのようなテーマを掲げる
つもりか、とオー社長に聞いてみた。オー社長は、「日本の既存報道機関は権威主義過ぎると聞いた。日本版オーマイニュースは打倒権威主義をテーマにするの
がいいのではないかと思っている」と答えていた。
 さて今回の記者発表で僕にとっても意外だったのが、ソフトバンクが7億円近い資金を出資するということ。市民記者サイトがそれほど成長性のあるビジネスだとは、僕には到底思えない。ソフトバンクは何を考えてこれほどの資金を投入するのだろうか。今度ぜひ取材してみたい。
 一方、今後の展開で気になるのが、日本版オーマイニュースをヤフージャパンのサイトの一部にするのか、独立したサイトにするのか、ということ。ネットは
リンク1つで簡単につながるわけだしヤフージャパンはソフトバンクの影響下にあるわけだから、ヤフーの中で展開しようと別サイトにしようと本当は違いは何
もない。ただ新聞業界のおじさんたちにとっては大きな違いに映る。新聞業界はヤフーに対して警戒感を強めている。ヤフーがメディアになるのではないか、報
道機関になるのではないか、という警戒感だ。紙の新聞の部数減が止まらなくなり万が一ネットが情報流通の首位に立てば、われわれはヤフーの下請け業者に成
り下がるのではないか、という恐怖感を持っている。ヤフーの井上社長や幹部が最近しきりに「ヤフーは報道機関になりません」と繰り返しているのは、新聞業
界との関係がぎくしゃくし始めた何よりの証拠だろう。
 ヤフーとしては新聞各社との関係を良好なまま保っておけば今後もニュースを比較的安く入手できる。よって日本版オーマイニュースをヤフー内には取り込みたくないだろうし、できればある程度の距離を保っておきたいだろう。
 オーマイニュースとしては、ヤフーの集客力をぜひ利用したいところだ。
 ソフトバンクはどのような戦略に出るのだろうか。ヤフーに迷惑がかからないように、オーマイニュースのプロモーションを控え目にするのだろうか。それと
も、既存メディアに対抗することでオーマイニュースの存在感をアピールするのだろうか。後者の戦略を取った場合は、記者クラブへの入会を強引に希望するな
ど既存メディアに対して意識的に揺さぶりをかけることだろう。
 出資金額が少なければ「控え目」戦略であると判断してもいいのだが、今回の出資額は大きいと判断すべきか小さいと判断すべきか・・・。大きいのであれば「強引」戦略に出る可能性も否定できない。

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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