「小さな積み重ねがプライバシーを失う」-伊藤穰一氏

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 前回に引き続き伊藤穰一さんとの対談からの抜粋。今回は伊藤さんのプライバシーに対する考え方を聞いた。


「伊藤穰一氏インタビュー 第2回音声ファイル」

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○伊藤 プライバシーのことを少し話をすると、いまプライバシーの基本というのは、プロファイリングなのね。いまは例えば、『赤旗』を定期購読していたとして、大企業によってはたぶん入社できないと思うし、下手をすると結婚もできない。どこの住所の人だったら結婚できない。こういう差別はすでにあるわけ。プロファイリングが、いまテロのあれでだんだん進んできて、例えば、デパートメンタル・フォーマルセキュリティなどは、ちゃんとプロファイリング用のスキーマーが作っている。まずデータベースというのは合体するのが難しい。
みずほ銀行などは合併しようとしても、住所、氏名があっても簡単ではない。でもこれをデータベース化して背番号を付けてしまうと簡単なのね。だから、テロ対策でアメリカは、いま何をしているかというと、いろいろな新しい技術を使ってプロファイリングを楽にしているわけ。そうするとどうなるかというと、いまアメリカだと、名前が似ているとか、誰かと前に住んでいたとか。この間ロンドンの地下鉄で殺されてしまった男がいるじゃない。もしかしたらテロリストかもしれないという人の家に、その人がたまたま住んでいて出ていったときに、ちょっと怪しそうだったから、シグナルが上がって、最後は撃たれるわけです。これは彼は間違った所に住んでいて、その住んでいた人が、たぶん行動などを起こしてプロファイルされているわけです。
 そうすると、僕は何をするかというと、僕にはいま中近東で研究している友達がいて、その友達がこの間メールを送ってきて、自分が研究していたメディア会社のアルマナールがテロリストリストに載った。「僕には2度とメール書かないでね。なぜかというと、あなたとつながることによって、僕はアメリカのテロリストリストに載るとどうなるかわからない」と。
 だんだん世の中が進んでくると、こういうプロファイルの人たちは、こういうことになる。例えば、アメリカが日本に来て、セキュリティアップするので、日本の中で我々はテロリストの定義というのは、例えば、中近東の人とこれ以上付き合っている人とか、こういう本を借りている人とか、こういう行動が多い、海外旅行のパターンなどを全部合わせて、トップの100万人の名前を出してくれ。彼がアメリカのボーダーでブロックすると、1人だけでもテロリストが捕まれば、100万人の日本人に嫌な思いをさせてもいいやと。それはアメリカから見ると合理的だと思います。100万人の日本人と1組のテロリストはバランスが取れています。僕たちに対してもいいかなと思うけど、そうすると行動を変えますよね。
 今度は何をするかというと、自民党やアメリカの政権が、自分たちの政党に対して危険な人たちは、なるべく自分たちに近付けないようにしようと。そうすると自分も反体制的な意見を言わなくなったり、反体制的な人と対談しなかったり、そういういろいろな行動のチリングエフェクトが起きてくると思います。
 これは何かというと、1かゼロではなくて、プロファイリングしやすくすればするほどプロファイリングのコストが下がる。そうすると利用度が上がる。結局データというのは環境問題と同じで、一旦出ていってしまうと、なかなか直らないし、小さいものの積み重ねでプライバシーを失っていくのです。いまでもGoogleで探せば、いろいろな情報が出てくる。ただ、Googleだけで100万人の日本人のアメリカから見て、いちばん危険な人たちをリアルタイムで出せと言ったら、そういうのは結構難しい。そういう社会に、いまアメリカやテロ対策で動こうとしている中で、なぜ自分のデータを分析しやすくしなければいけないのかなということを考えた上でやるのなら別ですが、全く考えないで、ひたすら番号をあちこちで使おうとしていることに対して反対しているわけです。
○湯川 でも、利便性は上がるわけですよ。国民IDだから、共通のIDがあれば何かと便利ではないですか。
○伊藤 やくざにもテロリストにも便利ですけどね。
○湯川 問題はそこですよね。テロリストにも便利だということで、そういう問題点もはらんでいるのだけれども便利さもはらんでいると。やはりコンピューターネットワークの中ではIDは絶対必要なわけではないですか。
○伊藤 そんなことないですよ。
○湯川 そんなことないですか。
○伊藤 うん。匿名のインターネットも絶対保護するべきだと思うし。
○湯川 それはそうなのですけれどもね。
○伊藤 IDもいろいろなIDの種類があると思うのです。例えば、僕は図書館と本を借りる権利があるとするではないですか。そうすると、図書館の担当者には、僕が図書館に入る権利だけわかればいいではないですか。なぜ僕の写真と名前と住所を書いたものを見せなければいけないの。ちゃんと僕だというのが証明されればいいでしょう。僕が例えば、エイズ検査をするときに、なぜ住所も教えなければいけないの。検査した人と検査結果をもらう人が同じ人であればいいわけでしょう。でも何でも全部1つのIDにつなげようとするのは、セキュリティ対策として良くないのです。本当は個人のレベルでもそうだし、国家資産を個人情報と考えても分けなければいけないの。
○湯川 今でもいろいろなサイトでID、パスワードが異なってきても、訳がわからないから、いいや同じでとか、メモに書いて貼ってあったり余計にそうなっていってしまうのではないですか。○伊藤 そこはプライバシーを保護する便利さを作ればいいのです。これは技術をわかっていない人が利便性を考えると、1つの鍵で全部の自分の人生のドアが開くのと同じで、それは怖いでしょう。それを落としてしまったら全部開けられてしまうのです。

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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