「すべての商品は消費者から」-伊藤穰一氏

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 伊藤穰一氏のインタビューの3回目。今回は、伊藤さんがどの分野に注目しているかを聞いた。伊藤さんが有望と見ているのは、ユーザージェネレーテッド、つまりユーザーの情報発信を効率的に入手、分析できる仕組みを持ったビジネス。消費者の要望を取り入れることで商品はヒットする。要はどのようにして消費者の要望といった情報を効率よく入手できるか。


「伊藤穰一氏インタビュー 第3回音声ファイル」

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分野としてはどういう分野がこれから注目になっていくのか。
○伊藤 ユーザー・ジェネレーテッド・コンテントとか、中で作って配信するのではなく、なるべくプラットフォーム・ビジネスで、ユーザーがメインで、イノベーションは会社もやるが、どちらかというとコミュニティをちゃんと支えるようなビジネスが各レイヤーであると思うのです。ゲームでも音楽でもソフトウェアでも、いろいろな所でやると思うので、それがこれから勝っていくのではないかなと。
○湯川 新聞的なレイヤーだと、ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツというのはわかりやすいのですが、例えば、ゲームなどではどんな。
○伊藤 ゲームなどでは、マルチユーザーゲームでいうと、昔は何もいじれなかったのです。「ワールド・オブ・ワークラフト」というのは、いまユーザーインターフェースなどはユーザーがモジュールを作れる。それはみんなユーザーテイストとかファンサイトで交換したりして、すごくカスタマイズしたインターフェースでゲームができるようなったのです。そこはリアルワールドで売買はできなくて、ゲームの中でだけ。
 「セカンドライフ」というのがこの間出て、ベンチマークがお金を出してファンドしたという会社で、これは3Dワールドですが、これはゲームにお金も入れられるし、ゲームからお金も出せるし、みんなオブジェリクトも作って、完全にユーザーが作った世界だけなのです。これはすごい伸びている。
 今度クロケットというのが出てきて、3Dワールドのオペレーティングシステムなのだけれども、これももっとオープンで、ソースコードまでオープンになってしまっている。前は全部自分がゲームを作っていたのが、例えば、ゲームの場合だと、最終的にはユーザーがゲームを作れる環境が勝つと思います。今はどちらかというと、カスタマイズまでは行っている。まだこれからくるのが本当に個人ベースで作れる。ホームページを作るのと同じように自分のゲームを作る。例えば、ゲームの場合だったら、仲間でみんなで組み立てる。
 商品でもリアルワードのフィジカルワールドの商品でもそうだし、電話システムだって交換機を買って、オムロンのおじさんに設定してもらうのではなくて、自分が好きなようにプラグインを作ったり、何かをいじったりして、完全に電話の環境をどうなったら転送して、ファックスではこうなのか。留守番電話のシステムなどは電話会社がやるのではなく、自分のパソコンでやって、それも自分でいじったりできるようにする。そういうものが全部オープンでさえあれば、そういうツールを作って、それがみんなアプリケーションソフトになったりフリーソフトになったりしてくると思うのね。いまはみんな僕らがどこかの大企業が考えて、商品になってパッケージされて、流通に乗って、我々は消費者になるというイメージがだんだんひっくり返ってくると思います。
○湯川 テキストわかりました、ゲームわかりました、電話のこともわかりましたが、商品をもう少し説明してください。
○伊藤 いま商品のマーケティングがだんだん細かくなってきているではありませんか。例えば、アニメの字幕のコミュニティが海外にあるのを知っていますか。アニメでナルトというのがありますが、違法コピーでネットに乗って、それが全部ブラジル語やポルトガル語やヘブライ語など、チャットルームで字幕を付けて映像に乗せてアップしているのです。これだとただの犯罪者だと思うのですが、実はファンたちで、彼らは何をしているかというと、いまamazon.comに行って、ナルトと検索すると、みんな投票しているのです。一生懸命日本の出版社に英語でナルトを出してくれというのを、彼らはロビー活動しているのです。それの一環で字幕スーパーを付けたものをみんなに配っているのです。その国でテレビが出ると、この人たちは昔の字幕を全部ネットから消すの。それで「みんな本物を買いなさい」と。だから、何が起きているかというと、ファンたちが、うちの国でこういうのを作ってくれ、とかプルしているのです。車でも何でもブログをやったり、ユーザーがファンクラブを作ったりすると、「こういう商品を作ってください」とユーザーから言ってくる。もっとすると、ユーザーがデザインしてくる。それに素直に応えて作っていけばよくて、一生懸命マーケティング活動をトップダウンにするよりも、コミュニケーションと広報と開発部をオープンにしてしまえば。
 いまゲームなんてそうだよね。ユーザーのほうがゲームのことを知っているから、パッチを当てていろいろしてくるのと同じように、車とかバイクでもファンたちがネットでコミュニケーションできてしまうと、彼らのアイディアのほうがユーザーの声に近い可能性があって、それはマーケティングを変えると思うの。
○湯川 もうそうなってくると、あらゆるものがユーザー・ジェネレーテッドというか、コンシューマー・ジェネレーテッドになってくる。すべてと言っていいですかね。
○伊藤 と思います。どちらかというと、ユーザー・ビヘイビアを一生懸命分析している人のほうが。日本の松永真理さんの成功例などを読んでも、みんながどうやって使っているかを見て、それに合わせて作ってきた。だから、日本だとポケベルからきて入ってくるようになる。アメリカは聞いていないから一生懸命エンタープライズにPDAを売っていますが、日本では全然売れないわけです。だから、ユーザーの声をどれだけ聞いているかです。昔からプロはやっているのです。
 入交さんに話をしていても、彼も言っていたのですが、本田のエンジニアが年をとればとるほどエンジンが作れなくなると言うのです。彼らは毎回もっといいエンジンを作れたと。なぜかというと、素直にユーザーの声を聞いて、それに応えて作っていたから、どんどん進化した。ユーザーを無視して自分は神様だと思うと、天才でいるときはいいのだが、年をとってくると作れなくなる。でも昔からプロはユーザーの声を聞いていたと思うのです。それが聞きやすくなったのではないかな。
これからはユーザー・ジェネレートで、すべてがユーザー・ジェネレートになっていく。
○伊藤 すべてではないかもしれないが。
○湯川 よく考えるとほとんどでしょう。
○伊藤 どの分野でもあり得ると思うのね。プロとアマチュアの戦いが各分野で起きて、分野によってはアマチュアのほうが強くなるものもあるし、プロがやり続ける分野も残ると思う。オーケストラなど、ある程度までの設備投資やレピュテーション投資がないとできない分野と
、そうでもない分野は違うと思うのです。
○湯川 それと1発で勝てたりする分野などはアマチュアが抜いたり。例えば、天文学の分野などは、最近は新しい星を見付けるのは素人のほうが多いということもありますから

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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