ニコニコ動画に見る日本のクリエイティビティの実力-ボツにした未完成原稿vol.5

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主張を180度転換したのでボツにした原稿です。何かの役に立てばと思いアップします。未完成原稿ですので、未確認情報が含まれます。ご注意ください。

 
さて話をもとに戻そう。IBMのレポートが指摘する広告業界を激変させる2つ目の現在進行形の変化の領域は、クリエイティビティである。アマチュアやセミ
プロの表現欲求が高まっていることと、ブログやデジタルカメラなど、その表現欲求を満たすためのツールが充実してきたことで、アマチュアやセミプロのクリ
エイティビティが爆発しているというのだ。IBMのレポートによると、こうした人々のクリエイティビティの爆発は、2つのやり方でメディアと広告に多大な
影響を与え始めている。1つは、自らが何か表現物を作り出すことで、もう一つは他人が作った表現物を評価、流通することで、だ。

 わたしも確かにそう感じている。

第2章 「共有」「テクノロジーを使った団体戦」という新ルール

▼ニコニコ動画に見る日本のクリエイティビティの実力

 
拙著「爆発するソーシャルメディア」(ソフトバンク新書)の中でも詳しく述べたが、ここにきて人々のクリエイティビティが爆発しているのだ。もちろんクリ
エイティビティの定義にもよるのだが、クリエイティビティという言葉が大げさであるというのなら、表現欲求ではどうだろう。先進国を中心に少なくとも表現
欲求が開花しているのは事実だろう。そしてもちろん日本人も例外ではない。
 日本でブログサービスが登場した際に、「日本人
は受身だから、自ら表現することはない。ブログは普及しない」と一部でいわれたものだ。ところが、ブログ検索大手の米テクノラティの調べによると、もっと
もブログを書いている国民は日本人であることが分かった。2006年の第4四半期には、日本語で書かれたブログの全体に占める割合が37%になり、英語で
書かれたブログの 36%を抜いたという。
http://www.sifry.com/alerts/archives/000493.html
 
それでも「日本のブログは単なる日記が多い。欧米のように重要な情報はほとんど載っていない」という意見を耳にすることが多かった。しかしアルファブロ
ガーアワードの仕掛け人の一人、アジャイル・メディア・ネットワークの徳力基彦さんは、2007年のアルファブロガー・アワードを振り返って「日本にも、
ためになる情報を発信するブロガーが増えてきた」と感想を述べている。
 投稿ビデオサイトYouTubeが日本人ユーザーの
間で大ブレークしたときも、「欧米のユーザーは自分で撮影したビデオをアップしている。ところが日本のユーザーがアップするビデオはテレビ番組の違法コ
ピーが中心。欧米人と比べて日本人にはクリエイティビティが少ない」という意見があった。
 ところが投稿ビデオにテロップを
自由に書き込める「ニコニコ動画」が登場すると、若者を中心に多くのユーザーがこの表現媒体に飛びついた。「ニコニコ動画」はあっと言う間に若者の間で力
を持つメディアになった。そしてそこに音声合成ソフト「初音ミク」が発売された。このソフトを使って作った歌が簡単な動画とともに次々と「ニコニコ動画」
にアップされるようになった。人気の初音ミク動画の中には、再生回数が★ 万回★を超えるものもある。
 ニコニコ動画は海外にもファンが増えてきている。「ニコニコ動画」内で人気になった歌を、台湾の大学生が合唱しており、その模様を映した動画が「ニコニコ動画」にアップされている。
 日本で作られた「ニコニコ動画」という表現ツールを使ったクリエイティビティの爆発が、海を超えて台湾に伝播したのである。
 日本人もやはりクリエイティブなのだ。表現するのが好きな国民なのだ。
 
ではなぜ、今ここにきてクリエイティビティが爆発しているのだろう。情報社会学の権威、多摩大学の公文俊平教授は、「衣食住が足りたからだ」と説明する。
少なくとも先進国では飢餓を心配しなくていい状態になっている。これは人類の長い歴史の中で、実は非常に最近の出来事なのである。途上国では、食料問題は
まだまだ深刻である。
 食料の心配がなくなった人には、表現欲求が芽生える。人と同じ服を着たくない、というのも自己表現の1つの形である。今、社会の多様化が進んでいるのは、実は衣食住という人間の基本欲求が満たされた人が増えているからである。
 そこに登場したのが、インターネットであり、ブログであり、動画である。何人かは最初こうした新しい表現ツールにとまどうものの、いずれ恐る恐ると試してみる。そして表現する喜び、評価される喜び、共有する喜びに目覚め、さらに高度な表現に挑戦していくのである。

▼とまらない作品の無料化、低価格化

 
表現物を作り出すという点では、先に述べた通り、日本でもテキスト情報は主にブログで、映像情報はYouTubeや「ニコニコ動画」などを使って、オリジ
ナルな表現物が日々大量に生成されている。これはプロが作った表現物の価格を著しく低下させるか、無料化させる結果になる。
 
こういう話をすると、知り合いのカメラマンが「プロの作品とアマの作品では質がまったく違う」と激怒したことがある。しばらくそのカメラマンを会ってな
かったのだが、最近ばったり会ったら、仕事が減ってきたと嘆いていた。「アマの写真でも結構いいのがあって、しかも無料で使ってもいいと宣言してたりする
んです。もう勝てないです」と言うのだ。彼はアマチュア向けのカメラ教室で教えることを考え始めたという。表現物の低価格化の結果、表現物そのものでは生
計を立てられず、その周辺に生計の道を模索し始めたわけだ。
 写真ほど急激な変化ではないが、文章を生業とする者にも原稿料
の低額化という形での影響が出ているようだ。あるライターのブログのコメント欄の罵詈雑言のコメントが寄せられ「炎上」したというので、アクセスしてみ
た。どうやらネットメディアの原稿料の低さをブログ上で批判した際の書き方が、ブログ読者の反感を買い炎上してしまったようだ。反感を買うような書き方は
別にして、ブログで愚痴を書きたいほど原稿料の相場が低下しているのだろう。
 別のフリージャーナリストの友人も、「紙の媒体には将来がないので、収入を得る別の方法を考えなければならない」と語っていた。彼のような売れっ子にも原稿料の低額化の波が押し寄せているのかと少し驚いた。
 作家の井上ひさしさんとお会いしたときに「本が売れなくなった。10年前と比べると部数のケタが1つ下がった」と嘆いておられた。
 
その一方で、ケータイの日記サイト上でユーザーが書いた小説がものすごい人気となっている。そのうちの幾つかの小説は、実際に書籍として出版されるように
なっている。いわゆるケータイ小説である。そしてなんと、今日の書籍のベストセラーの半分をケータイ小説が占めるようになっている。「ケータイ小説がウケ
る理由」(吉田悟美一著)によると、2007年の年間ベストセラーの文芸部門のベスト3をケータイ小説が独占し。ベスト10では5作がランクインしている
という。そしてケータイ小説の代表作といわれる「恋空切ナイ恋物語」(美嘉著)は書籍化からわずか1ヶ月で売り上げが100万部を超え、映画化された「恋
空」も大ヒットを続けている。
 プロの作家の本が売れなくなる一方で、ケータイ小説のようなアマチュアの作品が飛ぶように売れているのだ。
 
売れっ子ライターでも嘆く時代である。一般のライターへの影響は押して知るべし、だ。ブログを見て回っても、プロのライターが書く原稿とそう変わらない原
稿、いや専門的な内容になるとライターの書くものよりも優れた専門家ブロガーの原稿が、ネット上で無料で読めるようになってきている。これからアマチュア
の原稿は、ますます増えていくことだろう。原稿料の低価格化は、当然といえば当然の流れなのかもしれない。
 こうしたアマの表現物の津波は、写真、文章だけでなく、いずれ音楽、映像の分野にも襲いかかってくるだろう。

序章 経済リワイヤリング-ボツにした未完成原稿vol.0
IBMが読む広告の未来-ボツにした未完成原稿からvol1
分断される消費者の関心-ボツにした未完成原稿vol.2
メディア消費の過渡期と3層並存論-ボツにした未完成原稿vol.3
テレビCM崩壊は日本でも起こるのだろうか-ボツにした未完成原稿vol.4

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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