表現者にとっていい時代になるのか悪い時代になるのか-ボツにした未完成原稿vol.8

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主張を180度転換したのでボツにした原稿です。何かの役に立てばと思いアップします。未完成原稿ですので、未確認情報が含まれます。ご注意ください。

▼コンテンツの未来、メディア企業の未来

 では人間の力をコアコンピタンスにするプレーヤーは、どう戦っていけばいいのだろうか。そういうわたしも、テクノロジーではなく人間の力に頼るプレーヤーである。

 小説などの創作物の分野でのアマチュアの活動が盛んになり、相対的にプロの創作物の価格が低下する中で、創作物の未来はどうなるのだろうか。

 
「コンテンツ・フューチャー」という本がある。文章や映像などのコンテンツのクリエーターたちの対談集となっているが、総表現者時代のプロの報酬の低下、
ビジネスの形態の激変に対する苦悩がめんめんとつづられている。コンテンツに対する報酬が低下し続ければ、プロはどのようにして生計を立てればいいのだろ
う。ひと事ではない。これはわたしにとっても重要な問題である。

 プロが食えないようになれば、いい作品が生まれなくなり、作品の多様性が損なわれる。芸術性や多様性の低下は、人類にとって大きな損失である・・・。こういった思いを抱く人は少なくない。
 ブログが増えたところで、ゴミの情報が増えただけ。芸術性や多様性のプラスになっているわけではない。こういう主張も多い。
 本当なのだろうか。
 
気をつけなければならないのは、先に述べたように現在はメディア消費の変化の過渡期であるということだ。過渡期はせいぜい20年から30年くらいのもの。
いやもっと短いかもしれない。現時点でのメディア消費の現実が、本格的な情報化社会時代においても永遠に真実である可能性は低い。
 
わたしは農民の兵隊が士族を打ち破ったときのように、大量生産の商品がギルドの商品より広く受け入れられたときのように、多くのプロのクリエイターはやは
り今までの仕事のやり方で生計を立てるのは確かに困難になっていくのだと思う。ただイタリアの靴職人のように、ほんの一握りのプロに対する仕事は残るだろ
う。
 プロの今後の進むべき道の2つしかない。1つは、生計を立てられるほどのトップレベルを目指す道。2つ目は、特技と関連のある仕事に転換する道だ。
 残念ながら1つ目の道は、非常に細く険しい。ほとんどの人は、2つ目の道を進むことを余儀なくされるだろう。転職である。カメラマンがカメラ教室の講師になるなど、自分の特技を活かす形で新しい仕事の領域を目指すしかないだろう。
 これはメディア企業などコンテンツを作る企業にも言える。道は2つに1つ。コンテンツの質を徹底的に向上させるか。それともコンテンツ製作とは別の価値を創造するか、の2つに1つなのである。
 
「ウェブ2.0」というキーワードを流行させたティム・オライリー氏率いるオライリー社は、テクノロジー関連の本を出版する出版社である。コンテンツを作
る会社である。しかしコンテンツ製作の未来が明るくないことから、事業の領域をカンファレンスや見本市などのイベントに徐々にシフトさせているという。コ
ンテンツ自体を製作する業務領域から、コンテンツを核に人々が集う機会を提供するというマッチングサービスの領域に軸足を移行し始めたわけである。

▼食えなくても表現したい時代

 
プロがコンテンツを創作できなくなることで、芸術性や多様性が過渡期の一時期に損なわれる可能性は確かにある。大量生産の靴が出まわることで、出来栄えの
悪い靴や同じデザインの靴が一時的に氾濫したのかもしれない。しかし今は大量生産の技術が向上し、ヘタな職人が作る靴よりもいい靴が低価格で手に入るよう
になっている。同様に、コンテンツ製作のツールが向上しネットを通じての共同作業がより活発になることで、多様性は間違いなく向上するだろうし、質も次第
に向上していくのだろうと思う。
 それに芸術性や質といった物差し自体が、的外れになっていくことは先に述べた通り。コンテ
ンツの消費の目的として芸術性や質を楽しむということよりも、コンテンツという仲介物を通じてユーザー同士がつながることを目的とする場合が増えるのだ。
つながる、共有することが目的の人にとって、コンテンツの質や芸術性はそれほど重要ではない。
 社会全体としてみれば、コン
テンツに対する正当な報酬が与えられない時代になることを悲観する必要はない。報酬が与えられなくなるという悪い時代になるのではない。報酬がなくてもコ
ンテンツを製作したい人が、自由に製作することで、表現する喜び、評価される喜び、人とつながる喜びを得られる時代になるのだ。
 
しかしわたしのようにプロの表現者として生活してきた人間にとっては、非常に厳しい時代になる。だれもが表現の喜びを得ることのできる社会への変革は拒み
たくない。できるだけ支援したい。しかしそうすることで、自分自身の首を絞めることになる。わたしを含む多くのプロの表現者は今、このような葛藤に苦しん
でいるのではないだろうか。
 IBMが世界の広告会社の幹部に行ったアンケート調査によると、広告会社の幹部は今後5年以内
に、テレビ視聴時間の15%とパソコン利用時間の25%はアマチュアが作ったコンテンツの視聴に当てられると考えているという。ということは、プロのコン
テンツを扱う従来型メディア企業には厳しい時代になるが、アマのコンテンツを扱うYouTubeなどの新しい媒体には広告予算が増えることになりそうだ、
とIBMのレポートは指摘している。

序章 経済リワイヤリング-ボツにした未完成原稿vol.0
IBMが読む広告の未来-ボツにした未完成原稿からvol1
分断される消費者の関心-ボツにした未完成原稿vol.2
メディア消費の過渡期と3層並存論-ボツにした未完成原稿vol.3
テレビCM崩壊は日本でも起こるのだろうか-ボツにした未完成原稿vol.4
ニコニコ動画に見る日本のクリエイティビティの実力-ボツにした未完成原稿vol.5
アマチュア作品はプロに勝てるのか-ボツにした未完成原稿vol.6
オンデマンドで儲からないのは当たり前-ボツにした未完成原稿vol.7

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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