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米国で元気のいいネット企業に「今後の戦略は?」と質問すると、「戦略などない。顧客の声を聞くだけだ」と返ってくることが増えてきた。
3月に取材したウェブ解析大手Omnitureの米国ソルトレークでのOmniture Summitでも、最終セッションは、3000人が入る大きな会場でユーザーの声を聞くというものだった。今後開発を希望する新機能のアイデアがあるユーザーには挙手の上、発表してもらう。その案に賛同する人が何人いるか、これも挙手で調べる、というものだ。ユーザー3000人を巻き込んだ大「企画会議」である。
また単独インタビューでOmnitureの CEOのJosh James氏に今後の戦略をたずねたところ「戦略はない。ただ顧客の要望に応えていくだけだ」と返されてしまった。
6月初旬に札幌で開催されたInfinity Ventures Summitで、Amazon.comのTechnology EvangelistのJinesh Varia氏に同社の今後のクラウド・コンピューティングの戦略をたずねた。同氏は「戦略はない。ただ顧客の要望に応えていくことだけだ」と繰り返した。
「顧客第一主義」・・・。
どの企業でも一応はそう言うのだが、本当に顧客第一主義を実践している企業にこれまであまり出会ったことがなかった。ある企業の顧客窓口担当者と本音トークをしたことがある。彼は「電話してくるようなヤツは人は、クレーマーとかエキセントリックなヤツらが中心。特に気にすることないんですよ」と、語ってくれた。顧客第一主義を掲げながらも、実際には顧客の本当の声を聞くということはそう簡単なことではなかったわけだ。
ところがインターネットというコミュニケーションツールの普及で、顧客の声が拾いやすくなってきた。まだまだ工夫は必要だが企業と顧客のコミュニケーションの敷居はかなり低くなったと言っていいだろう。そこで顧客の本当の声を拾うことに成功し始めたネット企業から順番に、「顧客の声を聞くこと」を戦略の中核に置くところが増え始めているわけだ。
「改善力」が20世紀の企業の競争力の源泉だったが、「コミュニケーション力」が21世紀の企業の競争力の源泉になる、といわれる。本当にその方向に進みつつあるのだと思う。
一方でアップルは、スティーブ・ジョブスという天才が戦略を一人で決めている会社だ。「顧客の声」で戦略を決めているわけではない。しかし成功を収めている。
スティーブ・ジョブスは、時代がどのような製品を求めているのかが、インスピレーションとして浮かんでくるのだろう。「天の声」が聞こえるわけだ。
「顧客の声」戦略と「天の声」戦略のどちらが優れているのだろうか。
ほとんどの企業には、スティーブ・ジョブズのような「天の声」を聞くことのできる天才経営者がいるわけではない。そこで秀才経営陣が合議制で戦略を決めてきた。「自分たちの声」をまとめてきたわけだ。
しかしコミュニケーションツールの発達で、「顧客の声」を集めることが可能になった。「天の声」が聞こえない企業にとって、「顧客の声」戦略のほうが「自分たちの声」戦略よりも効果があることが証明され始めた。それが情報化社会へ向けた移行期の中で、今われわれが立っている場所なのだと思う。
Googleページランクや行動ターゲーティング、ウェブ解析、ブログ解析など、「顧客の声」を解析するテクノロジーは今後も次々開発されるだろうが、「顧客の声」の解析結果をどこまで「天の声」に近づけることができるのか。これがこれからのテクノロジー企業の命題だといえるだろう。