新世紀メディア論(小林弘人著)

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新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に

 小林弘人氏は、メディアビジネスの将来ビジョンに関し、わたしが最も尊敬する人物である。メディアビジネスを語る人は多くいるが、新聞、雑誌といった文字情報のオンラインビジネスに関して、ここまで説得力を持って語れる人物をわたしは知らない。
 わたし自身、自分のメディアビジネスの考え方において、小林氏の響を色濃く受けているし、一人の書き手としても小林氏の助言通りにこれからのキャリアを進んでいこうと考えている。
 日本版「ワイヤード」、「サイゾー」の立ち上げに始まり、稲川淳二氏の会談オーディアブックをアップルのiTune Music Storeで販売し大成功を収めたり、今では当たり前のように普及している芸能人ブログを日本で最初に手がけたり、「ギズモード」日本語版を立ち上げたりと、これまでの実績をみても、そのビジネスセンスにはただただ脱帽するのみだ。
 その小林氏がメディアビジネスについて思いのたけをぶちまけたのが、この本だ。小林氏の活字メディアに対する愛情が痛いほど伝わってくる。

 ただ心配なのは、この本の趣旨がメディア業界の人間に伝わるのかどうかということだ。本の帯に「進化したい者だけ読め!」とあるが、心から「進化したい」と考えている業界人にわたしはこれまで会ったことがない。「インターネットなんて大嫌いだ!」と怒る業界人なら何人も知っているし、「できればインターネット以前の時代に戻りたい」というのがほとんどの業界人の本音なんだと思う。「進化したくはないが、メシを食うためには進化せざるを得ない」という思いで、あまり好きでもないインターネットを利用した新しいメディアを作ろうとしている人たちが、果たしてこの本から何かを学び取れるのだろうか。

追記;この本を読んで、その内容をスーと理解できるメディア人はまあいないだろう。いるとしたらオンラインメディア事業で小林氏と同レベルの成功を既におさめている人だけだろう。そういう人なら「そうそう、そうなんだよな」と理解できると思う。まだ成功はしていないのだが、ぜひ進化したいと思っているメディア関係者がいるのなら、この本を教科書にした継続的な勉強会を社内で開くことをお勧めする。少人数で徹底的に議論しながら事例を研究していくことで初めて、小林氏の主旨を理解し、新しい時代のメディア人になれるのだと思う。こんなことを書くと、「ぜひ業界の若手の有志を集めた勉強会を開いてほしい」という要望が僕のところなんかにも寄せられそうだが、業界は急速な縮小局面に突入した。横並び意識のまま共存共栄を目指せる状況ではない。勝ち残りたい社は、この本の内容を理解して進化し、古いビジネスモデルから脱却できない競合他社を蹴落としていくしか生き残りの道はない。この本は競合他社と肩を並べて勉強するような内容ではないし、そうする時間はメディア企業に残されていない。

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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