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アイルランド発祥の世界最大級のテクノロジーカンファレンス、ウェブサミットが今年もリスボンで開催されました。出展会場も拡大し、日本からの参加も増えさらに勢いを増すウェブサミットの現地レポートをウェブサミット日本事務局の満木がお届けします。
開催概要
日程:11月4日~7日
開催地:リスボン(ポルトガル)
参加者数:70,469名
参加国:163 ヵ国
主要参加国:英国、ドイツ、ブラジル、米国
スピーカー数:1,206名
メディア:2,526名
協賛:200社
スタートアップ:2,000社
ウェブサミットおさらい
Web Summitは、2010年にPaddy Cosgrave (パディ・コズグレーヴ)を中心に3名のアイルランド人によってつくられたイベント。初年度はアイルランドのダブリンで開催され、400名が参加。2015年には4万人を突破し、会場のキャパシティを越えたという理由で、2016年には開催地をダブリンからポルトガルのリスボンへ移動。2019年は7万人を記録。
今ではCESやMobile World Congress(MWC)に次ぐ、世界第3位の規模を誇るカンファレンスへと成長。CESやMWCが数十年かけてこの規模になったことを考えると、Web Summitの成長は世界的に見ても稀な急成長ぶりが世界で注目されています。2014年からはグローバル展開もしており、北米版Collision(トロント)やアジア版RISE(香港)もWeb Summit姉妹イベントとして開催されています。
出展会場からみる今年のウェブサミット 2019
・規模拡大
・コンサルブース巨大化
・GAFAはAWS強し
・BtoCの出展増加
・女性参加率46%
今年は今まで4つのパビリオンで行われていた展示会は会場にパビリオンを増設し5つに増えました。ポルトガル政府のサポートのもと増設が決定したそうで、本当にポルトガル政府はウェブサミットの誘致に力をいれているのだと感じます。
今年の出展会場で目立っていたのはコンサルティング企業のブース。数年前まではGoogleやfacebook、AWSのプレセンスが目立っていましたが、ここにきてコンサルブースが目立っていた印象です。Accentureは、自社の投資している会社のスタートアップのデモをやったり、KMPGはブース内でピッチを開催していたりしました。中でもSAPが昨年よりブースを約2倍に拡大。同社が行っているNBAのデータ解析のプロジェクトをインタラクティブに展示、そのほか各カテゴリーのビジネスを展示し参加者の目を惹いていました。
Google,facebookなどGAFA組で存在感がここ数年一定なのは、AWS。Googleは数年前を比べると割とこじんまりしたブース。(それでも大きいですが)facebookは今年は出展なし。calibraの開発責任者が登壇していましたが、そのほか数名のみの参加でブースだけでなく参加も控えているようです。そんななか、AWSはウェブサミットのみならず、アジア版RISE、北米版のCollisionにも同規模で協賛しており、どのイベントでもプレセンスがありました。
また、今年の出展会場はBtoCブランドの出展が増えました。LUSH、トミーヒルフィガー、カルバンクライン、IKEA、ポルシェ、コカ・コーラなど。各社最新のテクノロジーを使ったサービスやプロダクトのデモをしたり、環境配慮しているブランドというアピールの場としてウェブサミットを使っている様子。コカ・コーラは、同社が開発した再利用できるプラスチックボトルのプロトタイプを展示し、環境配慮しているブランドというメッセージを打ち出していました。ブースもグリーンなイメージで最初はコカ・コーラのブースと気づかないほど。ポルシェは、世界最速の電気自動車をステージに展示。参加者の注目を浴びていました。
ウェブサミットは数年前からWoman in Techという取り組みを行っています。出展会場には専用のラウンジもあり、ここ数年はずっとBooking.comが協賛しています。ラウンジでは、終日ネットワーキングやセミナーが開催されています。会場を見渡しても以前に比べ女性が本当に増えたと感じます。ただ女性というだけでなく、皆さんキャリアをもった女性。日本だけでなく、ビジネスカンファレンスで女性イベントといわずにここまで女性比率の高いイベントは珍しいと思います。
日本企業も爪痕を残せた2019年
・富士通が日本企業初出展
・ZETAが日本企業初のスピーカーパーティーホスト
・スタートアップ日本からの参加最多
・J-Startupが2年目の参加。ピッチ参加者を輩出
私がウェブサミットを知ったのは2014年。その当時は日本人は4人しかいませんでした。そこから5年。やっと日本企業のロゴを会場で見ることができました。
富士通は、初日にブースで鏡開き。ポルトガルの日本大使や日本からも同社の役員の中山氏が駆けつけ英語でのスピーチを披露。立ち止まる参加者も多く、大盛況でした。
同じく日本企業としては初となるスピーカーパーティーの協賛をしたZETA。同社2日間に渡り2ワークショップも開催。立見が出るほど大盛況。またCEOの山崎氏は、ワールドの中條氏とともに公式ステージにも登壇。
2年目となるJ-startupは、今年も10社以上のスタートアップをウェブサミットで出展。昨年の課題だったピッチへの参加も今年は実現することができました。
カンファレンスからみるウェブサミット 2019
今年のテーマは何ですかとよく聞かれるのですが、ウェブサミットは事前にその年のテーマをあえて決めていません。スピーカーが話す内容、出展しているスタートアップのカテゴリーから参加者が読み取るスタイルです。
・環境配慮は必須
・セキュリティの本質
・マーケティングステージ常設
今年からマーケティングステージ(Panda Conf)が常設となりました。ウェブサミットでは基本ステージも日替わりです。毎年、増席されているにも関わらず立ち見が絶えなかったので、拡大した会場で常設されたのは参加者にとっても良かったと思います。
2,3年前からウェブサミットで環境配慮についての話題が増えました。2018年のアル・ゴア氏の基調講演を皮切りに一気に加速した印象です。同氏が当時話していたのは、「テクノロジー企業もサーバーを使っている。巨大テック企業になればなるほどそのエネルギー消費は増える。テクノロジー企業も環境問題への責任がある」ということです。今年は、出展会場の1つのパビリオンが環境やインパクトスタートアップ(ソーシャルグッドなどにフォーカスしている企業)をテーマとし、Future Societiesやplanet techなどの環境関連のステージで、政府関係者や企業のトップ、アクティビストなどが規制や各国の取り組みについて語っていました。全体の雰囲気として、環境配慮していない企業はイケてないという雰囲気があるので、それに各社、各国がグリーンメッセージを発してるというトレンドもあると思いました。
セキュリティに関してはオープニングで中継登壇したエドワード・スノーデンの話が皆さん印象に残ったようです。「データの悪用と言いますが実際悪用されているのは人である。データが操作されたりすることで人が操作される。」各所でもセキュリティというキーワードに触れるセッションも多くありました。個人データの取り扱いは、今後も世界的な課題として議論されていくものと思います。
最終日のVENTUREステージにてステージホストを務めましたが、このステージでは世界有力のファンドや投資家が登壇し、飛躍するスタートアップの共通点、投資シーンのここ数年での変化、グローバルに投資する際の指標などを語っていました。分野としては、AIやフィンテックの分野の話が注目されていました。
あとがき
今年はウェブサミットx日本元年になったのではないかと思っています。これまでなかなか参加者も増えず、協賛企業もおらず、日本はどこにいるのだと毎回他の国の人に言われ続け残念な思いをしてきました。今回沢山の方が日本からわざわざ来てくださり、きてよかったとおっしゃっていただけたのは今後の日本のためにもとても良いことだと思います。
今回ウェブサミットに参加している皆様とぜひ来年のウェブサミットを一緒に盛り上げていきたいと思います!