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スマホアプリは大手有利の時代【湯川】

[読了時間:3分]
私自身、今でもテック系のビジネスプランコンテストのようなイベントの審査員を頼まれることがたまにある。2年ほど前の起業バブルの名残りなのだろう。イベント自体は楽しく盛り上がる。だかそこで企画されたサービスやアプリで、生き残るものがほとんどなくなった。

2年前にアプリ開発のベンチャー企業が次々と誕生し、しかもそのうちの幾つかは大きなサービスに成長できたのは、ハードウェア機器の移行期だったからだ。ネット接続機器の王座が、パソコンからスマートフォンへと移行する混乱期なので、まさに西部開拓時代のような早い者勝ちの機運が生まれたのだった。 猫も杓子もアプリを開発した。資金も集まった。しかしそのお祭り騒ぎは、既に一段落している。

AppleのAppStoreの日本語版に登録されているアプリだけでも77万本ある。これだけの数のアプリがあると、2つの現象が起こる。1つは価格競争で、もう1つは同じようなアプリの重複だ。

多くのアプリは100円以下。無料のものも多い。個人がたまたま大ヒットアプリを開発すれば個人にとってはそれなりの収益のビジネスになるが、企業としてはこの価格帯ではビジネスにならない。

ビジネスプランコンテストで発表されるアプリの多くは、同様のものが既に存在する場合が多い。77万本もアプリが存在するのだから、似たようなものがないわけがない。もしないのならその発想自体が天才的なものか、それか技術的に開発が困難のどちらかだ。

残念ながらビジネスプランコンテストで見かけるのは、リサーチ不足で、同様のアプリが存在することを知らないだけ、という場合が多い。

なのではっきり断言しよう。アプリビジネスはまず成功しない。

もちろん例外はある。ネット系大手にだけ、チャンスがある。

サイバーエージェントはスマートフォンの普及に合わせて、「アメーバブログ」も3D仮想空間「アメーバピグ」も1つのプラットフォーム上に乗せ、ユーザーがそのプラットフォーム上の各種サービスを自由に行き来できるように設計している。そのプラットフォームに向けて各種アプリを次々と投入してきている。 同社は、有期雇用を含めると従業員5000人の約半分がスマートフォン事業に従事しており、エンジニアの割合は6割から7割といわれる。

サイバーエージェントといえばもともと広告事業から始まっているのでそのイメージが強いが、今は巨大なモノづくり集団になっている。

最近では、スマートフォンで簡単にオークションに出品できる「パシャオク」や女性向け掲示板の「ガールズトーク」などが人気だ。 オークションといえば日本ではYahoo!オークションが圧倒的な強さを誇っているが、スマートフォンにはカメラがついているし「パシャオク」アプリは使い勝手よく設計されているので、これまでオークションをしたことがない層にまで利用が広がっているようだ。 一方の「ガールズトーク」は、いわば女性向け2ちゃんねる。スマートフォンは肌身離さず携帯するプライベートなデバイスだけに、話の内容も不倫や性の問題までかなりプライベートな内容になっている。 どちらもスマートフォンというデバイスの特徴を活かせるアプリになっているので、同様のサービスがパソコン向けにあったとしても後発でもしっかりとシェアを拡大できているのだろう。 しかもこれらのアプリは無料。すべてのサービスやアプリをアメーバという1つのプラットフォームに統一しているので、これらのアプリのユーザーがアメーバプラットフォームのほかのアプリやサービスへ簡単にジャンプできるように導線をしっかり設計している。

無料のアプリでユーザーを獲得し、そのうちの何人かがゲームなどで料金を落としていってくれる。そんなビジネスモデルになっている。

サイバーエージェントは、今後、アプリを中心にいろいろなコンテンツ、コミュニティを提供する一方で、広告、ゲーム以外の課金の仕組みにも挑戦していくのだという。 集客と収益化。この車の両輪をそれなりの規模でしっかりと実装できるだけの開発力があるからこそ、サイバーエージェントのアプリ事業は成立するのである。

ビジネスプランコンテストで優勝するような、誰もが認めるいいアイデアは、サイバーエージェントのような大手ネット企業は既に検討していると考えていいだろう。サイバーエージェントは従業員5000人の半分以上が開発者というとてつもないモノづくり集団である。彼らが検討していないわけはない。 なので一般的に言って、ネット大手以外、もはやアプリ事業に可能性はない。

ただネット大手の幹部には理解できないような突拍子もないアイデアだがリリースすればなぜか大ヒットした、というようなケースがないわけではない。Twitterはまさにそんなアプリだったわけだ。 またヒットアプリを生み出せる特殊才能を持っている人は、大手企業に属してなくても素晴らしいアプリを開発できる。 一方で開発者がユーザーレビューを参考にしながら細部にまでこだわり、徹底的に改良を続けることで、ゆっくりと支持を集めるアプリもある。

著者プロフィール:湯川鶴章
作家、元TechWave編集長。5年ぶりに自分の専門領域で本を出しました。タイトルは「未来予測 ITの次に見える未来、価値観の激変と直感への回帰」。無料のkindleアプリをダウンロードするだけで、すべてのスマートフォン、タブレットで今すぐ読めます。有料オンラインサロンもスタートしました。湯川鶴章のオンラインサロン。取材メモの共有、限定イベントへの招待、講演ビデオの視聴など、盛りだくさんのコンテンツです。
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