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ビジネスや個人に不況を乗り切る力を与える3つのテクノロジー(ゲスト投稿)

寄稿
TechWaveではさまざまな分野・国と地域からの寄稿を受け付ける取り組みを始めています。新型コロナウイルスの脅威を切り抜けつつある中国圏のゲストライター Mr.BlockChain 氏による寄稿です。パンデミックから中国政府主導のデジタル通貨の導入まで。ロックダウン後の社会にテクノロジーがどう関わるかリアリティある内容です

ビジネスや個人に不況を乗り切る力を与える3つのテクノロジー

7年前、Sharon Begleyは「風邪によるパンデミックがいかに世界規模の不況の引き金になり得るか」という予測記事を書きました。これはSARSおよび豚インフルエンザの集団発生の後のことで、世界中の政府に貴重な教訓となったはずでした。ところが残念なことに、それらの体験もさほどの教訓とはならなかったようで、何年も前になされた予想が現実のものとなってしまいました。

しかし、彼女のその記事は、パンデミックによりチャンスがもたらされる可能性について書いていることに注目せずにいられません。「ウォールストリートでは災害に遭遇して収益を得られなかったことはなく、パンデミックも例外ではありません」と。

今日、世の中はパンデミックに誘発された不況に立ち向かっていますが、どうやらこれは何年か続きそうな気配がします。気休めに聞こえるかもしれませんが、デジタルプラットフォームなら、ビジネスおよび個人がこの状況をくぐり抜け、収益を得るための方法を提供してくれます。

PwC USの金融業界サービスリーダー、Neil Dhar氏は次のように述べています。「企業によるテクノロジーの利用はCOVID-19のためにほぼ確実に変わっていることでしょう。クラウドテクノロジーの基本的なメリットをもう一度繰り返してみるだけの価値があります・・・最も成功を収めた企業はそれをさらに推し進め、戦略的実現策としてクラウドを用いることで運営を合理化し、ビジネスの成長を牽引するとともに、デジタル革命に拍車を掛けて回復力を支援するのです」。

資本市場を利用する

経済不況にあっても、上昇および下降トレンドのいずれからも稼げるような商品またはデリバティブが含まれていれば、取引から収益を上げることは可能です。例えば、一般に低リスクまたは事実上リスクフリーとみなされている投資戦略である裁定取引の場合では、同一種類の資産を取り扱う別々の市場間の価格の差異または非対称性を利用します。これは通貨やエクイティ、コモディティ、またデジタル資産にも適用できます。

取引におけるデータの解析および先進テクノロジーの利用に特化するテクノロジー企業「Jubilee Ace」の最高経営責任者、Tony Jackson氏は次のように述べています。「裁定取引はその最終結果、すなわち収益を得られることが分かっている時にのみ取引に入札する取引方法の一形態です」。

不況下において裁定取引を魅力的にしているのは、変動性が大きい中でも実行可能である点です。同氏はこう付け加えています。「今般の経済状況にあっても、裁定取引はなお強力な取引戦略であることが証明されています」。

しかし、裁定取引を通じて収益を上げるのはそう簡単なことではありません。前述のように、収益は様々な市場またはプラットフォームにおける価格の差異を利用して生み出されます。取引に適した最も収益性の高い資産を見つけるために複数の市場を手動で追跡することは容易ではないのです。さらに、適切な資産を素早く見つけ、直ちに取引することが不可欠です。そうしないと、価格の差異が消滅し、最悪の場合は逆転してしまうからです。

そこで、自動化システムや人工知能を利用する理由がここに生じてくるわけです。

自動取引を支えるロジック

JP Morganの見積もりによると、2019年6月時点において、アメリカの株式市場の約80%は自動化取引が占めるとのことです。そのうち60%がエクイティ資産の受動的投資、また、うち20%が従来型のリサーチまたは推測モデルではなくトレンドシーク型モデルを活用したクオンツファンドで、これが極めて一般的な姿です。

通貨や債権、またコモディティのオンライン販売を専門に扱うアナリストであるScott Wacker氏は「アルゴリズムベースの取引は冷静である」と言っています。彼は、私情に左右されない点が通貨市場において短時間で反応できる機能性に繋がっており、それにより市場がより速く安定性の高い状態に戻れると考えています。

この場合、取引プロセスにおける人の感情による影響が最小化もしくは除去されることになります。規則や意思決定スキームは予め設定されているため、トレーダーはそのプランに従いさえすればいいのです。そうすれば過剰な取引を行う回数が減り、チャンスの直感に基づいて、あるいは市場破壊を招き得るほどの発展を恐れて売買するという場面が少なくなります。

自動化取引を金融市場の不安定さと結び付ける者もいますが、規制および国際標準のお陰で、そのリスクは緩和することができます。金融市場の安定性に対する自動化取引の影響を詳しく述べたホワイトペーパーで、Violeta Todorovic氏らは次のように書いています。「リスクは規制および国際標準の適切な対策を(自動化取引に)新たに導入することで防ぐことができる」。

デジタル商取引と通貨

株式やデジタル資産の取引に詳しくない人にとっては、電子商取引やデジタル通貨の普及だけでも強力な力を発揮します。例えば、発展途上国のFacebookのフィードをざっと見ただけでも、大量のオンライン商取引活動が対面式の商取引に取って代わっていることが明らかです。ロックダウンやコミュニティの隔離政策により、多くの人が対面販売の代替手段として電子商取引での販売を模索しています。

一方で、デジタル通貨の利用範囲は広がりつつあります。中国では、政府支援によるデジタル通貨がすでに投入されています。中国の中央銀行は現在試験運用を行っており、代替通貨のメインストリームでの採用に向けて大きな進展を見せています。アメリカの企業もこの先駆的な努力の試運転に踏み出すものと見られています。

このような展開が消費者市場にとっての恩恵となります。デジタル通貨の採択を加速する引き金となり、それがさらに電子商取引にとっても有利に働くでしょう。さらに、オンライン取引にもメリットをもたらし、その中にはデジタル資産を含む裁定取引も含まれるでしょう。

Jubilee AceのTony Jackson氏は、より多くの人々がこれらの資産に関心を示すにつれて、デジタル通貨の裁定取引に大きな弾みが付くと話しています。「裁定取引は非効率性の中で繁栄を見せますが、これは取引される資産への需要が高まる時に発生するのです」。

オンライン商取引やソーシャルメディアをも含め、それらのための堅牢なプラットフォームにより人々はオンラインでビジネスを行うことができています。より利用勝手のよいオンライン決済システムやデジタル資産の人気の高まりにより、電子商取引はビジネスおよび個人にとって経済の低迷をくぐり抜けられる、より良いチャンスを手に入れるための実行可能性の高いツールとなるでしょう。

結論

イノベーションにより、かつてはまだ存在していなかった、あるいはまだ開発中であったテクノロジーを用いて、低迷する経済に対処する手段が与えられます。現時点では、インターネットのより一層の普及とハイテク知識により人々は新たな手段で収益を得たり取引を行ったりすることができるようになりました。経済不況は確かに大きな困難を生み出しているものの、テクノロジープラットフォームにより、機知に富んだ精力的な人びとには経済の低迷を切り抜けるための様々な機会が与えられるのです。

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