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セカンドライフ創世記

 春ごろに複数の出版社から「セカンドライフの本を書きませんか」というオファーをいただいた。「セカンドライフの何に関する本?どういう切り口で?」と逆に聞き返したら、明確な回答がなかった。セカンドライフをただ紹介する本を春から準備し執筆したところで売れるわけはないと思ったので、結局お断りすることにした。思った通り、セカンドライフのノウハウ本やムックは書店にあふれている。
 この段階でセカンドライフの本を出すなら、もっと深い部分を探るものでなければならない。そう思っていたら、そういう本が出た。

セカンドライフ [Second Life] 創世記 3Dインターネット・ビジネスの衝撃という本だ。
セカンドライフを運営するリンデンラボという会社のこれまでの経緯や理念、セカンドライフの根本的技術の解説など、ほかのノウハウ本にないセカンドライフの「深み」を知ることのできる本になっている。
まあ僕はビジネスの観点からITを観ることが多いので、山崎秀夫さんが書かれた章が一番面白かった。セカンドライフ内でノルウェー人の女性と「デート」(?)した話も面白かったが、やはりセカンドライフのビジネスの今後の可能性の解説は野村総研の研究員ならではの「深み」があった。
ただ1点、山崎さんと認識が異なるところがある。山崎さんは「広告代理店が多数の企業のマーケティング部門に対してセカンドライフを広告に活用するよう勧誘したと言われています」「大手広告代理店の動きが現在のセカンドライフのバブルを生み出していると考えています」と書かれている。僕は昨年秋からセカンドライフ進出支援企業を片っ端から取材したし、広告代理店のセカンドライフ仕掛け人とも接触してきたけれど、取材した感触では、広告代理店が仕掛けたというより、一般企業側の関心の高まりに広告会社が応じた、というほうが正確だと思っている。企業側の関心を高めたのは広告会社というより欧米、そして日本のメディアによる報道ではないだろうか。
山崎さんは、日本では広告代理店がバブルを起こしたのでパブリシティ狙いばかりだが、欧米ではパブ狙いに加えて「地に足の着いたアプローチをとって」いると言うが、進出支援事業者の一人は「今はまだ日本人ユーザーが少ないので費用対効果を考えればパブ狙いが賢明。ユーザーが増えた次の段階では、違うアプローチも出てくる」と語っている。日米の違いは普及段階の違いということではないだろうか。
まあ別に大手広告会社の肩を持つこともないので、どちらでもいい話だけど・・・。

それにしても、山崎さんのセカンドライフ、3Dインターネットの可能性を重視する言論は読んでいて気持ちがいい。ブログ周辺には「セカンドライフは絶対こない」という言説が圧倒的に多い。どうやらケータイネットのユーザー層とPCネットのユーザー層の重なりが小さいように、ブログユーザー層とセカンドライフユーザー層の重なりもまた小さいようだ。
僕自身は、「IT革命」「インターネット」「ブログ」などのキーワードがバブルっぽくなったとき同様に、「セカンドライフ」に対しても長期的な可能性を重視するスタンスを取りたいと思っている。もちろん短期的な問題や加熱気味のムードを認識した上で、の話だ。

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