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ケータイ向け広告マーケットプレースのアドモブ社、日本進出

 日本でも業務を開始したモバイル広告マーケットプレース、米アドモブ社の日本担当ニレン・ヒロさんが来日したのでお話をうかがった。ヒロさんは、神戸生まれ、神戸育ち。ということで今回は日本語で取材した。
 メディアサイトと広告主を自動マッチングさせる広告マーケットプレースは、まだ日本ではそれほど馴染みがないが、米国では新規参入や買収による合従連衡がひっきりなしに繰り広げられているホットな分野。その広告マーケットプレースのサービス提供企業の中でも、モバイルという分野で頭角を現したのが、アドモブ社だ。
 同社は今年から、日本でも業務を本格化させるという。モバイル広告マーケットプレースで日本のケータイビジネスはどう変わるのか。アドモブ社の業務内容だけでなく、米国のネット業界の最前線についても聞いてみた。

 

【注意】今回からポッドキャストエントリーのフォーマットを変えました。最初のビデオは5分ほどのダイジェスト版です。そのあとの小さなウインドーのビデオは、ほとんど編集していません。1本10分以内で、今回は5本あります。それぞれのテキストのあとにビデオを埋めこみました。要点だけを知りたい方はダイジェスト版をご覧ください。詳しく知りたい方は、興味のあるテキストの下にあるビデオをご覧ください。
 テキストは、インタビューイの発言を書き直したものです。発言そのものではありませんので、ご注意ください。


 また音声版ポッドキャストと、ビデオ版ポッドキャスト(最初のダイジェスト版と同じ物)は、一番下のリンクでダウンロードできます。またiTunesなどにアイコンをドラッグしていただくと、ポッドキャストを購読(無料なので、この言い方はおかしいと思いますが)できます。

ーアドモブとはどんな会社?

 モバイルネットにフォーカスする広告ネットワーク、ペイパークリックで広告マーケットプレースを運営
メディアサイトがインストールコードをサイトに貼り付ける、2700から2800サイトが使っている。
  広告主が、どの国、キャリア、端末の機種に流すか、というパラメターを決めるで、幾ら払うかを決める。
 アドモブが、このパラメターに合うサイト、ユーザーに広告を見せて、クリックされれば広告料が発生する。いただいた広告料のうち、ほとんどがメディアサイトに入り、残りがアドモブの手数料になる。
  メディア側の設定はいろいろ可能。競合者の広告はダメ、など、細かく設定できる。広告の原稿のチャックも可能。
リアルタイムで価格も変える。レポーティングもリアルタイム。
24時間自動的に調整している。
ネット上の広告マーケットプレースのモバイル版。
 グーグル、オーバーチャと違うのは、裏で扱うオプティマイゼーションアルゴリズム。端末まで見れる。独自の技術で力を入れている。
ハードウエア、メディア、ユーザーなどのいろいろなパラメターでターゲットを絞り込んでいる。
 ウェブサイトのマークアップ言語は、比較的標準化されている。
160カ国で500キャリア、2800サイトの過去のデータがあるので、どのカテゴリ、どういう広告の原稿だとクリック率が高いかを把握できている。
  月に20億インプレションもあるので、データを集めて分析できる。よりいい広告を配信するために分析に力を入れている。
8割の売上はセルフサービス、大手ブランドには営業チームが対応。
 日本も立ち上げる。マーケットプレースは日本語化が済み、サービスはソフトローンチしている。
3年、5年先のモバイル広告市場は、日本が世界でも1位、2位にはなるだろうから、がんばっていきたい。

  

-日本のモバイル市場と外国の市場の似ている点、異なる点は

 似ているところは、モバイルユーザーは若者が多く、伸びているカテゴリーがSNS、娯楽、ダウンロードなどの分野ということ。
 違いは、セルフサービスを使う人がいない。代理店が必要になってくるので、セールスチャンネル戦略を作っているところ。
 メディアサイトは2種類。ロングテールと大手サイト。今はスタート時などで、欧米でやったようにまずロングテールサイトにセルフサービスでインストールコードを張ってもらうというやり方でいきたい。
  そういう意味で、日本のロングテールは非常に大きい。外国では何百サイトのところが、日本でも何千、何万もロングテールサイトがある。非常に期待している。
 一方で大手サイトは、CPMモデルで経験があるサイトが多い。どの程度の費用対効果を出さなければ相手にしてもらえないということが分かっているので、反対にやりやすい。

-GPSや電子マネーを使ったターゲティングは考えているか?

 日本で学んで、外国で使うというケースは出てくると思う。
外国は広告か課金モデルしかない。Eコマースに関する広告モデルは、日本で開発して外国で使うつもり。
 リッチメディアが進んでいるし、動画広告も動き出したようで、関心はあるが、数字を見る限り、あまり大きいビジネスチャンスではないので、当面はバナーとテキストで十分競争できると思っている。
  2年間でユーザー、ページビューが伸びている。それは定額性になったからだが、ところが(クリック数の)供給が増えたおかげで、一時的に1クリック当たりの広告の価格が落ちてきた。今は相対で交渉するより、広告マーケットプレースで自動マッチングしたほうが、価格は伸びていくと思う。
 日本だけでGPSベースの広告サービスを出せば、外国のユーザーから「うちの国ではこのサービスを出さないのか」というクレームがくる。なので、できるだけ世界中で同じサービスを出したい。GPSによるロケーション、電子マネーが広まっているのは、日本以外ない。
外国では位置情報に関するプライバシーポリシーに関するコンセンサスが確立していない。米国のキャリア5社のロケーションポリシーは全部違う。
なので、GPSや電子マネーに関連した広告サービスの開発は、後回しになる。

  

ー独立系にこだわる理由は?

 米国で買収がたくさんあった。買収はほとんどパソコンの広告関連。モバイル分野では、競合他社がほとんど既に買収されている。AOLがサードスクリーン、MSNがスクリーントニックを買収した。この領域はまだまだ伸びているので、慌てて売るより、体制を整えて資産ベースを拡大するとい戦略を取っている。

-ネット広告の今後は?

 米国でデジタル広告市場は、320億ドル。検索が150億ドル、バナーが100億ドル、新しいカテゴリーが、ソーシャルネットワークの広告。プラットホームレイヤー。
 2、3年で、600億ドル。まだまだ伸びる。買収はたくさん起こるだろう。昔のやり方、営業が交渉するやり方は、だめになる。
 BlueLithiumとか行動ターゲティングが非常に強い会社が大きくなり、テクノロジーで費用対効果を出せるという証明ができないと買ってくれなくなってきた。急速に昔のやり方が通用しなくなってきている。
 検索連動型広告もまだまだ大きくなる。分野別の専門検索の分野も大きくなってきている。みんな注目はしているが、まだ完全に確立していないのが、モバイル、オンラインビデオの領域。大手が買収するには、もう少し市場が大きくならないといけないし、アドモブのようなプレーヤーはまだ身売りする気がない。

ー広告周辺で大きくなっていくテクノロジー分野は?
 

 力入れている技術は、ターゲティング最適化。PCの領域のクッキーほどの精度はないんだけど、行動やコンテクト、ハードウエアが分かるので、それを使ってマッチングしている。
 メディアサイトは昔はヤフーが強かった。今は小さなメディアがたくさんでてきている。彼らは分析ツールを重宝する。だから2つ目は分析ツール。
 3つ目は、レポーティング。ワンストップで、すべての広告を統合されたダッシュボードで買わないとわけが分からないようになってきている。アドモブではAPIを公開して、こうしたダッシュボード経由で、ユーザーがより簡単にアドモブを使えるようにしていきたい。
 ダブルクリックのお客さんは、大手ブランドや大手広告会社を通じてバナー広告を買うケースが多い。 SEMだけでやってる代理店がある。ダブルクリック1つで、全世界これで満足ということにはならない。
 力のある代理店は、ダッシュボードの自社開発に力を入れて、われわれのようなネットワークはそうしたダッシュボードが使いやすいように、APIを公開していく傾向にある。

 -どのセグメントの広告主をターゲットにしているのか?

 2年前にスタートしたときは、広告主のほとんどは、ゲームなどのモバイルアプリのメーカーだった。

 昨年ぐらいから、4つに分かれた。1つは、やはりモバイルアプリ企業。2つ目は、モバイルメディア企業。CBSやABC、ESPNとかの大手メディアブランドはみんなモバイルで広告枠を買っている。というのは、テレビではリーチできないユーザーがいるから。3つ目は、通話料無料の番号を持っている通販会社。4つ目は、コカコーラなどの大手ブランド。
 大手ブランドは、バナー広告とテキスト広告の両方を買う。バナーは表示に対する課金、テキストはクリックに対する課金なので、両方で効果を見たいから。この両方の広告をうまくできるのは、アドモブだけなので、アドモブに大手広告主が流れてきている。こうした結果を証明できることで、次の年には予算が増える。その方向にある。

ーここにきて広告マーケットプレースが脚光を浴びるようになってきたのか?

 マーケットプレースはネット以前からあった。98年99年から、オーバーチュア、グーグルが始めた。メディアが騒いでいるから盛り上がっている。グーグルはこんなに数字出しているのか、とみんな驚いて、いろいろな領域で同じようなことをしようという企業が増えた。8年前から徐々に伸びている業界だと思う。

-フェイスブックがパワーを持ち始めてきたが、どのような影響があるか?

 1つの影響は、エンジニアを雇用するのが難しくなってきたということ。
エンジニアは話題の企業に行きたがって、アドモブのように本当に伸びている会社にはきてくれない。 
 もう1つは、フェースブックのウィジェットを作る企業が増えているということ。アドモブもウィジェット(ブログパーツ)にタグを入れて、広告を出せるようなウィジエットを開発している。ウィジェットを通じてソーシャルグラフ(だれとだれが友達かなどの情報)を入手できる。
(先手必勝といわれるが)遅くきたほうが、有利なこともある。フェイスブックは、いろんな面で、アーキテクチャーをオープンにしている。もっとモバイルインターネットに参入できるようにしている。
 ウィジェットを作って申請し、認可されれば、フェイスブックのユーザー情報を取得できる。全部見せることはないが、ウィジェットによって、関連のある情報を見せる形。アドモブの場合は広告ネットワークとして、関連する情報を取得し、一番関連性の高い広告を投げ返している。

  

 ケータイキャリアとも深く話している。キャリアはSNS以上にユーザーの情報を多く持っている。だからキャリアは「SNSは恐くない」と言っているが、実際にそういうデータを請求書システムから切り離して利用できるキャリアは非常に少ない。われわれは一番進んでいるキャリアと協業することに力を入れている。
-個人情報を集めることはプライバシーの侵害につながらないのか?
 個人情報は、個人を特定できる情報と、個人を特定できない情報がある。広告業界が必要なのは、個人を特定できない情報のほう。居住地域、年齢層、性別ぐらいで、十分なターゲティングが可能。IDやパスワードといった、それ以上の情報は必要ない。フェイスブックやアドモブもそうだが、大きくなっていく会社はプライバシーポリシーに漏れがないように厳しく運営している。
 第三者に利用してもらう場合も、個人を特定できない形にして、情報を提供している。
 確かにプライバシー問題での失敗はときとして発生する。それで大きな問題になることもあるが、5年前と比べてターゲティングは非常に進歩したし、業界としても力を入れているので、期待している。
 そんな中で、テレビが提供できるターゲティングが物足りないという機運が高まってきている。それでテレビ、新聞から広告費がインターネット、モバイルに急速に移行している際中だ。

-ターゲッティングに必要な個人情報を持つSNSやケータイキャリアに個人情報の利用料を支払わなければならないのか?
 

 いいえ。個人情報を利用させてもらうことで広告収入が増えるので、レベニューシェア契約のSNSやケータイキャリアにとってもプラスになる。なので特別な契約は結んでいない。
 責任もって情報漏れがないようにしなければ、アドモブの評判に傷がつく。キャリアによってはヘッダーから、国、キャリア、機種、電話番号、IPアドRスまで分かる。サイト履歴で、男性かどうか、18歳以上かどうかも分かる。でも電話番号は、第三者には提供しないし、こちらからセールスの電話を入れることもない。
 また個人を特定できる情報をグループ化するメディアサイトはうまくいっている。
 

 

アドモブの強みは3つ。1つは、スケールの大きさ。一番多くユーザーへリーチできるので、さらに多くの広告主が集まってくる。2つ目はユーザー情報。ユーザー情報を持っているから競合他社よりもより高度なターゲティングが可能。より関連性の高い広告をより早く出せる。
3つ目は人材。カルチャーとチーム。
ーユーザー情報を集めるのには、メディアになるか、キャリアになるかしかないかと思ったが、アドモブのような情報のパイプ役も入手できるんですね。
 そう。どちらかといえば、アドモブのほうが多く持っている。というのは、テンプレートにアド・インストール・コードを入れると、ユーザーがページにアクセスするたびに、サーバーを呼び出すが、その際にヘッダー情報が全部流れてくる。そのときのキャリアの状況も同時に分かる。キャリア、ゲートウエー、端末などの情報も分かる。この情報の組み合わせは、メディアサイトやキャリアよりアドモブのほうが多く持っている。

以下は、いただいた資料から

160カ国以上で2750以上のモバイルサイトに月間20インプレッション以上の広告を配信
扱っているのは、広告をクリックした場合にのみ広告料を支払うCPC型テキスト広告と、表示される件数に対して支払うCPM型バナー広告の2種類。
サイト管理者と広告主が自分で必要な項目を入力するセルフサービスが基本で、セルフサービスの広告は月に18億インプレッション。大手企業向けには、営業マンが個別対応し、キャンペーンマネジメントやターゲティング、レポーティングサービスつきのフルサービスもある
広告の種類もいろいろあり、広告をクリックすれば、キャンペーンページにジャンプするという広告だけでなく、クリックすれば電話がかけられる広告もある。ほかにもクリックすれば、ビデオが始まる広告や、音声メッセージを聞くことのできる広告、個人情報を提供できる広告もある。クリックすれば、着メロ、ゲーム、待ち受け画面をダウンロードできる広告もある。
ユーザーの属性は、アンケート調査で得られた「デモグラフック(人口統計的)情報」、どのようなサイトを閲覧したかという履歴データ、ケータイの機種などを考慮して、判断する。
 「デモグラフック(人口統計的)情報」は、モバイルサイト上で「年齢」「性別」「世帯所得」「最終学歴レベル」などの質問に選択肢を選ぶ形で応えてもらうことで取得。
これに、サイト閲覧履歴、ケータイ機種情報を加え、幾つかのユーザーカテゴリーに分類するという。例えば「ビジネストラベラー」というカテゴリーでは、男性で18歳から49歳で、年収は10万ドル以上のユーザー。「テクノロジー愛好者」というカテゴリーでは、男性で18歳から34歳の男性で、年収は7万5000ドル以上、といった具合。

音声版ポッドキャスト

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