サイトアイコン TechWave(テックウェーブ)

クラウドコンピューティングは連携の時代へ

英CODA社は14カ国で会計ソフトを販売するソフトメーカーだ。2年前にパッケージソフトの販売からSaaS(Software as a Service)事業に180度転換することを決めた。会計ソフトをパッケージに入った製品として販売するのではなく、月々の料金を払ってインターネッ
ト上で利用するサービスとして提供することにしたわけだ。
その際に、自社でデータセンターを持ち、必要なソフトも自社で開発すべきか、それともsalesforce.comのプラットホームを利用すべきかを検討したという。
「結局、salesforce.comを利用することにしました。だって既にあるプラットホームを利用することで開発期間が2年間短縮されますからね」と
CODA社のJeremy Roche最高経営責任者(CEO)は言う。会計ソフトの中核部分以外のプログラム、つまり開発ツールから、データベース、モバイル向けシステム、セキュリティツールなどはすべて、salesforce.comのものを利用。そのおかげで実際にスピーディーなサービスインを実現できた
という。

クラウドコンピューティングがIT業界の旬なキーワードになっているが、salesforece.comが提供する企業内シ
ステムのプラットホームは、まさにそのクラウドコンピューティングの1種である。梅田望夫氏が「ネットの向こう側」と表現した概念を、シリコンバレーの
テッキーな人たちは「雲
(クラウド)の中」と表現しているわけだ。ソフトウエアやデータを手元のコンピューターに置くのではなく、雲の中のようなネットの向こう側に置くという考
え方だ。

クラウドコンピューティングを提供するのはsalesforce.comだけではない。amazon.comもgoogleもクラウドコンピューティングのサービスを提供している。

3社のサービスはどう違うのか。どこがこの新しいコンピューティングの潮流の中で、覇権を握るのだろうか。この問いに対し、Roche氏は次のように答えてくれた。

「Amazon
は純粋なクラウドコンピューティングなんです。ただ単にCPUの処理能力だけをレンタルしているような感じ。
salesforce.comのクラウドコンピューティングは、同社が持つセキュリティ機能であったり、トランスアクション機能であったりをそのまま利用
できるところが大きな魅力。よりエンタープライズシステム向け、ということです。googleは両社の中間、というイメージでしょうか」とRoche氏は
言う。
CODA社は会計ソフトの会社であることから、エンタープライズ向け各種機能を持つsalesforce.comのクラウドコンピューティ
ングが最も利用価値が高いわけだが、CODA社は実はgoogleのクラウドコンピューティングも利用している。「表計算はgoogle
spreadsheetsを使って、それとsalesforec.comのプラットホーム上にある会計プログラムに連携させているわけです。こうしたクラウド間の連携プレーは今後より盛んになると思いますね」と同氏は指摘する。

例えばamazonのクラウドを写真のストレージとして利用し、オフィスソフト周辺のシステムはgoogleのクラウドを利用。よりエンタープライズ向けのシステムはsalesforceを利用し、それぞれを自由に連携させるようになるのではないか、ということだ。

連携が盛んになるのであれば、機能をより特化したクラウドコンピューティング事業者が登場してくる可能性もある。
salesforce.comの利用料は機能を強化しても一定額という方式をとっている。同社の上級副社長のジョージ・フー氏は、「他社のCRMと比べると
TCO(Total Cost of
Ownership)は格段に低い」と言うが、ユーザーの中には「定額制と従量制があれば営業以外の部門に対し従量制で利用できるようにしたい」「もっと
安ければ、機能を特化させて再販できるのに」という要望がある。こうした要望に対しフー氏は今後の検討を約束する一方で「機能がどれだけ高度、多彩になっ
ても料金の心配がない、という現行モデルはユーザーに喜んでもらっている」と語っている。

かなり自由なカスタマイズが可能で機能も充実していることを考えれば、確かにsalesforce.comのコストパフォー
マンスは高いのかもしれない。しかしその一方で、限定された機能でいいからより安価で利用できれば、いろいろなリセラーが登場する可能性がある。セキュリ
ティやリライヤビリティのみをsalesforceのプラットホームに依存し、そのプラットホーム上で各種SaaSを展開するというリセラービジネスが今
後台頭してくるのではないだろうか。歯医者向けシステム、旅行代理店システム、診療所向けシステムなどを、安価でSaaSで提供する・・・。今後はクラウ
ドコンピューティングを利用した、こうしたITビジネスが次々と登場してくるような気がする。

追記 金額の部分で誤解を招く表現になっていたので訂正しました。すみません。

モバイルバージョンを終了