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行動ターゲティングが拓くターゲットメディアの時代

WBC決勝戦の行われた日、しかも同じ時間帯に開かれた日経ネットマーケティング主催の有料セミナーに参加した。日本中が野球に熱狂している最中なのに、品川にあるカンファレンス会場の大会議室は300人近い参加者でほぼ満席。テーマは「行動ターゲティング」だったのだが、いかにこのテーマに注目が集まっているのかが分かる。

確かに行動ターゲティングは、今最もホットな領域だ。グーグルがUSで行動ターゲティング広告に乗り出したというニュースが流れたばかりだし、3月にユタ州ソルトレークシティで開催されたオムニチュアサミットでは調査会社フォレスターリサーチのアナリストのエミリー・ライリー氏が「行動ターゲティングの新しいツールが次々と出てきているが、一般事業会社の中にはまだこうしたツールを試していないところが多い。先に試して競合他社に差をつけるべきだ」と語っている。

そうかUSでも行動ターゲティングで盛り上がっているのか。

恐らく日米では盛り上がりの起爆剤は違うのだろうけど。日本ではヤフーのインタレストマッチが起爆剤になってこの盛り上がりが生まれたのだろう。USでは、複数の技術系ベンチャー企業が特色のあるツールを次々と出しているようだ。

さて行動ターゲティングが旬なテーマになり、試しに使ってみる一般事業会社が増え、それを見込んで新しいツール、仕組みを開発するベンダーの活動が活発になれば、いずれ技術が成熟してくる。いずれ効果が出るようになる。そうなればどうなるか。

特定の読者層を明確にイメージしたターゲットメディアの時代がくることになる。

行動ターゲット技術を使えば、そうしたターゲットメディアに特定の読者層が実際に集まっている事がデータとして取れるし、そこで広告を打てば効果が高いこともデータではっきりと実証される。そうなればページビュー当たりの広告単価も上昇する。広告収入が増えればメディアとして事業的に成立するようになる。前出のフォレスターのアナリストは、「今後半年から一年で、特定読者層をターゲットしたページやサイトの価値が上昇するだろうから、早い時点でこうしたサイトを押さえておくことが重要」と語っている。メディア事業者のほうも、こうした時代の流れを踏まえてターゲットメディア作りを急ぐべきだろう。

実はこうした時代になることは早い時点で実は分かっていて、インフォバーンの小林弘人さんなどは、2006年9月にわたしのインタビューに答えて「マジックミドルを狙ったターゲットメディア作りが重要」と語っている。
行動ターゲティング技術が効果を出すようになり、ターゲットメディアの成功事例が出始めると、不況にあえぐ出版業界を始めとするメディア業界はいっせいにオンラインのターゲットメディア事業に乗りだすことだろう。しかし、この場合は先手必勝ルールが当てはまるような気がする。最初からしっかりとしたビジョンを持って明確にターゲットした読者層をつかんできたメディアサイトを、猿真似の後発サイトが追い抜くことはかなりしいと思う。

検索連動型広告がグーグルを成長させ、SEOを取り込んだサイト、事業者を成功させたが、次に行動ターゲティング広告が無数のターゲットメディアを育てるのだ。新しい広告テクノロジーが新しいメディアを生んで育てていくわけだ。

それでは行動ターゲティングの次に、どのような広告技術がどのようなメディアを生み、育てるのか。
世界のテクノロジー企業の動向を見ていると、ソーシャル広告がホットな研究開発領域であることが分かる。人と人との人間関係をベースにした情報流通、物販の新しいカタチの開発に多くのリソースが注がれているようだ。いずれ何らかのソーシャル広告の技術が確立することだろう。そうなればメディアのカタチは、コミュニティをベースにしたものに変化していくことだろう。これを見込んで、ターゲティングされたコミュニティ作りが、メディア企業が今日取り組むべきことである。

残念ながら、わたしの所属するメディア業界はインターネットがつながりのメディアであるという特性を理解せずに、従来からのメディアのカタチをそのままネット上で再現することしか頭にないようだが・・・。

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