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有料化できるコンテンツ、できないコンテンツ

 ネット上のコンテンツは無料になる、といわれる。もちろん簡単に手に入るようなコンテンツ、希少性のないコンテンツを有料化することはできないだろう。だがほかで手に入らないような良質なコンテンツに対しては、ユーザーは料金を支払うようになる。こう主張してきたのだが、多くの人は「ほんまかいな」と首を傾げる。納得してもらったと感じたことがない。しかし、ようやくここにきて有料コンテンツが成立する時代が見え始めてきた。

▼グーグル締め出しの可能性は、十分にある。

 世界のメディア王、ルパート・マードック氏が、同氏率いるニューズ・コーポレーション傘下の新聞社、テレビ局のコンテンツの有料化を目指し、同社グループのニュースサイトからグーグルを締め出す可能性を示唆して話題になっている。

 グーグルは、自動的にネット上を巡回する「クローラー」と呼ばれるプログラムを使ってネット上の膨大な情報を区分けしているのだが、ウェブサイト運営者側でこのクローラーが入ってこれないように設定できるのだ。

 オーストラリアのスカイ・ニュースというテレビ局でのインタービューに同氏が答えた もので、同氏の「グーグルは他人のコンテンツでビジネスをしている」という批判に対し、インタビューアーが「いっそのこと(ニューズ社のサイトを)グーグルから見えないようにしてはどうですか」と水を向けると「そうだね。そうしよう」と語ったという。

 インターネットの世界では、自分のサイトをグーグルの検索結果の上位に表示させることがサイト運営者らの最大の命題。そんな中でのグーグル締め出し発言なので、ネット上では大きな反響を呼んだ。

 米有力ブログメディアのテッククランチ は、グーグルを締め出せばニューズ社傘下のウォール・ストリート・ジャーナルのアクセス数は3割減となるという試算を記事にした。同ブログメディアのシリコン・アレイ・インサイダー は、ウォール・ストリート・ジャーナルにとって売上高の10%から15%を失うことになると試算している。やれるものなら、やってみろ、という感じだ。

 日本の有力ブログ「メディア・パブ 」は「グーグルの検索エンジンのサーチ対象外となるのは,ネットビジネスにとって自殺行為に等しい。そんなことは実施できないはずと,見られていたのだが・・・」と驚いた様子。「この発言は,グーグルやヤフーなどのニュースアグリゲーターとの料金交渉を優位に進めるための,マードックの戦略かもしれない」と勘ぐる。ブログ「モバイル・マーケティング・ニュース 」も「個人的な想像ですが、本気じゃないと思います」「(人気サイト)MySpaceの運営などで知見の高いマードック氏が、検索エンジンの重要性をおろそかにしているとは思いにくいです。一種のパフォーマンスもあるんじゃないかな、と感じます」と書いている。あまりにも突拍子もない発言なので、その真意をつかみきれないようだ。

 しかし日米の多くのマスメディア関係者とつきあいのあるわたしとしては、この発言にはまったく驚かないし、突拍子のない発言とも思わない。マスメディア企業のウェブサイトの中には、グーグルの検索結果のことなどまったく気にしていないところが多い。多くのマスメディア関係者は、良質のコンテンツさえあればアクセスが集まるものと考えている。検索結果の上位に表示されやすいようにサイトをデザインするSEO(検索エンジン最適化)というウェブ業界の中ではだれもが知っている言葉でさえ、聞いたことがないというマスメディアサイト関係者が多い。

 同じようなウェブの仕事をしていても、一般のウェブサイト関係者と、マスメディアサイト関係者の常識はまったく異なるのである。

 つまり多くのマスメディア関係者は、グーグルを締め出すことがそれほど大きな問題とは考えていない。なのでニューズ・コープ傘下のマスメディアサイトがグーグル締め出しを本気で検討している可能性は十分にある。

▼有料コンテンツ市場が急拡大

 とはいうものの、グーグルを締め出しコンテンツ有料化戦略に舵を切ったマスメディア企業が成功するかといえば、一部を除いてことごとく失敗するだろう。断言してもいい。それは多くのウェブ関係者が感じるように「自殺行為」なのである。

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