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「もしニュースが重要ならニュースのほうから僕を探してきてくれる」=2030年メディアのかたち(坪田知己著)

 このエントリーの見出しにとった「もしニュースが重要ならニュースのほうから僕を探してきてくれる」というのはNew York Timesの記事Finding Political News Online, the Young Pass It Onの中の引用文だ。ある調査会社が行ったグループインタビューの中での大学生の発言として引用されている。原文ではIf the news is that important, it will find me.となっている。この原文で、英語版グーグルで検索してみれば分かることだが、このセンテンスを含む非常に多くのページが存在する。このセンテンスが多くの人に衝撃を与えたことが分かる。

 座っていてもテレビなどでニュースが一方的に送られてくる時代から、インターネットを通じて無数のニュース源を探し出せる時代に移行したことは、多くの人が実感するようになった。しかしネットが「巨大な図書館」から「巨大な公民館」へとその役割を変える中で、人とのつながりを通じてニュースが「向こうからやってきてくれる」時代へ、今は移行期の真っただ中なのである。

 「2030年 メディアのかたち」の著者、坪田知己さんは、このNew York Timesの記事が2008年3月に発表されるずっと以前から、ニュースの摂取方法がそのように変化していくと予測してきた。坪田さんの表現では、メディアは「1対多」というマスメディアの形から「多対多」になり、最終的には「多対1」というマイメディアになる、となっているが、坪田さんの主張の本質は「もしニュースが重要ならニュースのほうから僕を探してきてくれる」ようになるという表現と同じであろう。

 坪田さんの「2030年メディアのかたち」は、日本経済新聞のIT専門記者としての坪田さんの集大成ともいえる著書である。坪田さんがこれまでどういう取材をし、どういう本を読んで、どういうことを考えてきたから、この主張にたどりついたのかが分かる本となっている。

 坪田さんは今月で日本経済新聞社を定年退職されると聞いている。坪田さんが新しいキャリアに進もとうとする時期と奇しくも同じ時期に日本経済新聞社も「電子新聞」という新しい領域に挑戦しようとしている。蛇足になるが、この電子新聞プロジェクトの基礎部分の考え方に、坪田さんの考え方が取り入れられていることはあまり知られていない。プロジェクトの設計思想作りの段階で、日経の経営者が当時日経メディアラボの責任者だった坪田さんに詳しく話を聞いているのである。

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