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Facebookの暴走を止めることができるのはTwitter+Googleのみ

 昨日の「人こそがメディアになる時代」の続き。TechCrunch日本語版のインターネット広告の未来: メディアはもはやメッセージではない, 人がメッセージなのだは非常に多くの示唆に富む記事なんで、じっくりと考えて進みたい。

メ ディアはメッセージであり…..メッセージはメンバー(人)である。だからソーシャルメディアに関する議論は、アイデンティティの議論なしには成り立た ない。FacebookやTwitterのようなソーシャルネットワークの成長は、オンラインのアイデンティティシステムの成長ととらえなければならな い。この理論を軸として、さまざまな技術とビジネスのトレンドが収斂しつつある。

 このオンラインの アイデンティティシステムってなんだろう。多分日本ではTwitterを使っている人のほうが多いだろうから、Twitterを使って説明すると、それは「今なにしてる」に対する「つぶやき」であり、FollowerとFollowingのリストのことである。この「現状の申告」と「人間関係」のデータを 使って、適切な情報が適切なルートを使って流通するようになる。例えば、GPS情報が「渋谷」、つぶやきが「ラーメン食べたいなう」、それに友人のリスト という情報に対し、渋谷でその友人たちに人気のラーメン店の広告を出せば効果がある、ということだ。
 もしくはインフルエンサーに情報を投下すれば、その人の人間関係を通じて情報が拡散していくバケツリレーのような情報流通網のことでもあるかもしれない。
 こうした「現状に関する情報」と「バケツリレー情報流通網」を指して「オンラインのアイデンティティシステム」と呼んでいるのだと思う。

 

このアイデンティティシステムこそが、マーケッターにとってのソーシャルメディアの価値なのである。これこそがビジネスにとって今後のウェブの最大の価値なのである。

 このことを理解した上で、今起こっていることの意味を読み解き、次を予測しようとしているのが、このTechCrunchの記事である。
 さてでは「Facebookの唯一の対抗馬はTwitterである」という項目について考えてみよう。

 これは僕の書いたTwitterとFacebookの時代がきたという記事の言っていることとよく似てるんだけど、違いは著者のSeth Goldsteinさんの中では次の時代の覇者は既にFacebookでほぼ確定している、ということなんだと思う。
 この項目の原文はThe only check and balance for Facebook is Twitterとなっている。Check and balanceって政治に関する文章の中でよく出てきたフレーズだ。「司法や報道が権力を監視しバランスを保たせる役割を担う」なんて言うときの「監視とバランスを保たせる」という使い方だ。つまりちょっと意訳気味にこの項目を訳せば「Facebookの暴走を止めることができるのはTwitterだけ」というような感じになるんだと思う。

Facebookの唯一の対抗馬はTwitterである。ユーザ数ではTwitterはFacebookよりかなり小さく、そのソーシャルグラフは非対称であり、したがってゆるい。しかしTwitterは、ユーザ数の少なさをブロードキャスト型のメディアモデルの提供に よって埋め合わせている。セレブたちは、Twitterを使って大きなオーディエンスに容易に直接到達できる。TwitterはFacebookに比べると相当にメディア的だが、しかし同時にまた、Googleによってアイデンティティの世界へ引っ張り込まれている。いかなる条件下でもFacebook Connectを組み入れることはありえないGoogleは、TwitterのAPIを武器に戦おうとしている(一方YahooやMySpaceは独自性を捨ててFacebook Connectを嬉々として取り入れている)。ここでおもしろいのは、Microsoftがどう出るかだ。MicrosoftがGoogleと何かで提携することは考えられないが、Facebook Connectの組み入れは、何年も前にMicrosoft自身がIBMに対してやったのと同じこと*を、Windowsに対してやることになるだろう。〔*: 世界標準機IBM PCに対してMS-DOSを提供したことにより、結果的にMicrosoftの世界制覇となった。〕

「TwitterはFacebookに比べると相当にメディア的だが、しかし同時にまた、Googleによってアイデンティティの世界へ引っ張り込まれている」ってちょっと分かりづらいかも。メディア的とあるのは、有名人のアカウントにはTwitterのFollowerが何万人もついていて、有名人からの情報が一方通行で多くの人に届けられるという情報の流れが、テレビや新聞などの情報の流れと同じ。そういう意味でメディア的だと言っている。こうした情報の流れは、バケツリレー的に情報が流れるオンラインのアイデンティティシステムとは異なる、ということだ。
 でもGoogleがGoogle傘下のサイトでTwitterのID、パスワードを使ってログインできるようにしたことで、このバケツリレーの情報の流れの仕組みの重要性が増す、というわけだ。【関連記事:ID戦争勃発?米YahooはFacebookと、 GoogleはTwitterと連携
 僕の記事の中では、Googleが今後FacebookのID、パスワードと連携しないのであれば、Google+Twitter連合軍 vs Facebook+Yahoo連合軍という構図が成立するだろう、と書いたけど、Goldsteinさんは、既にその構図で決定、とみている。
 Goldsteinさんにとってそのことよりも、Microsoftの出方に興味を持っているようだ。でもMicrosoftがもしFacebookのID、パスワードと連携すると、Microsoft傘下のウェブサイトはすべてFacebookのコミュニティのストレージスペースに成り下がってしまう。だってユーザーに近いウェブサービス、ユーザーが自分たちの居心地のいい場所と認識するウェブサービスのほうが力を持ち、それと連携するウェブサービスはあくまでも「おまけ」になってしまうから。軒を貸して母屋を取られるような感じだ。
 でもこれは実は、20年以上も前に隆盛を誇っていたIBMが、パソコンOS部分だけをMicrosoftに任せたら、結局はMicrosoftのほうが力を持つ結果になったってことと同じだ、と言う。因果はめぐる、って感じかな。
 こういう発言からみても、Goldsteinさんの中では次の時代の覇者はFacebookでほぼ確定であり、Twitterを助っ人にしたGoogleがこれにどう対抗していくのかが今後の注目点、と状況を読んでいることが分かる。

 次の項目は次のエントリーで解説したい。

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