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米軍専用SNSのmilBook=階級組織にフラットな情報流通の導入は可能か?

 米軍がSNSを始めていた!その名もFacebookならぬmilBook。昨年10月スタートで会員は既に1万8000人いて、それなりに盛況のようだ。(ネタ元はGigaOm

 自治体SNSが可能なのか考えたことがあるだけに、軍隊のような厳しい階級組織にインターネットのフラットな情報流通がなじむのかどうか非常に興味がある。

 milBookは軍隊の内部SNSだけあって、セキュリティがちがちで米軍の内部の人間でないと見れないようだ。一応URLはあるが、アクセスしようとしても変な警告が出る。怖いのであえてアクセスしなかった。どっちにしろ見れないだろうし。

 もちろん僕もブログ、Twitterなどのソーシャルメディアを活用しているので、ソーシャルメディアが人脈拡大、情報収集などといった点においてびっくりするような効果を発揮することがあることは何度も経験している。だから米軍が同様のメリットを求めてSNSに乗り出したということも十分に理解できる。

 ただ軍隊はピラミッド型の組織である。ソーシャルメディアは、上下関係のないフラットな横のつながりである。ピラミッド型の組織にフラットな情報流通の形を採用してだいじょうぶなのだろうか。



 幾つか疑問点がある。

(1)ピラミッド型組織が破綻しないか

 組織はもともと情報の流れを形にしたものである。一人の人間が双方向の情報の流れを把握できる規模が数十人程度。それが限界なんで、トップの下にトップ自身が意思疎通できる限度である10人から数十人の幹部がいて、それぞれの幹部の下にまた10人から数十人がいて、そのまた下に10人から数十人が存在する。なのでピラミッド型になる。

 ところがソーシャルメディアというツールを使えば、意思疎通できる人の数が恐らく10倍から100倍に増えても十分にやっていけるのだと思う。便利なので、どんどんソーシャルメディアを使って意思の疎通が進むと、ピラミッド型の組織って形骸化しないだろうか。
 上司の頭越しに情報をやり取りすると、上司が怒らないのだろうか。

(2)部署間の機密情報

 同じ米軍内とはいえ、他の部署には明かせないいろいろな秘密があるだろう。SNSでも情報の公開レベルを「友人だけ」「友人の友人まで」「SNS内一般公開」などと設定できるようになっているのだが、軍のSNSだけにそこはもっと厳しく、細かく設定できるようになっているのだろうか。

(3)箱は作っても中身は?

 自治体のSNSや社内ネットワークの関係者からよく聞くのは、内部コミュニティを作ってもほとんどだれも参加してくれない、という話。これを「日本人は情報発信しないから」「自治体職員は情報発信しないから」と日本文化や組織文化の特殊性のせいにするのは簡単だけど、本当にそうなんだろうか。

 多分、参加者一人一人がSNSのメリットを理解していることが大事なのかもしれない。米軍のmilBookの場合、参加者が既にFacebookやTwitterを使っていて、こうしたソーシャルメディアを使うことで人脈が拡大し、情報流通がスムーズになることを実際に経験したことがあるので、こうした内部のソーシャルメディアにも違和感なく入っていけるのかもしれない。

 そう考えると、今日本で普及しているソーシャルメディアといえば若者向けがほとんど。ビジネスマンのソーシャルメディアといえば、Twitterが情報感度の高い人たちに少し普及している程度だろうか。
 まだソーシャルメディアへのメリットへの理解がビジネスマンの間に十分普及しているとは言えないので、社内SNSってうまくいかない企業が多いかもしれない。

 米軍は、このほかにも軍隊内でのwikiやブログのツールも作っていて、こうしたソーシャルメディアのツールを全部をmilSuiteとして提供しているのだそうだ。すげっ、軍隊2.0だ。

【追記】

Piichanさんからコメント欄に以下のような情報をいただきました。ありがとうございます。興味深い!
時間があれば、フラットな情報流通が従来型ピラミッド組織に与える影響を調べてみたいなあ。

「確か、2003年放送のNHKスペシャルでとりあげられていましたが、アメリカ軍はソマリア派兵で神出鬼没な民兵との戦いにピラミッド型の指揮命令系統がおいつかず、多大な被害をだしました。それを教訓に、現場の兵士に判断をゆだねるネットワーク型の組織を研究するようになったといわれています。」

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