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UCCのTwitter騒動に思うマーケティングの本質的変化

 UCC上島珈琲がTwitterをつかって、大失敗したようだ。UCCのサイトに2月5日掲載された謝罪文によると、同社は5日午前10時からTwitterを通じて宣伝メッセージを自動的に多くのユーザーに配布したことがユーザーの不評を買ったようだ。

 具体的には、「コーヒー」「懸賞」などのキーワードが入った「つぶやき」をしたユーザーをコンピューターが自動的に探し出し、そのユーザーに向かって「コーヒーにまつわるエッセイとアートを募集中!エッセイで賞金200万円!アートで賞金100万円!締切間近!!」というメッセージを一方的に送りつけた。その後Twitter上でUCCに対する不評が続出したため、正午には中止したという。

 UCCというキーワードでTwitterを検索すると、UCCにこのキャンペーンを勧めた広告代理店のネットリテラシーのなさを責める声が多いように思うのだが、僕はそうした大半の意見とはちょっと異なる感想を抱いた。


同様のキャンペーンは米国で評価された

 Twitter検索した結果、多かった「つぶやき」は「このキャンペーンをUCCに勧めた広告代理店はどこだ」という犯人探しだ。代理店ならこうした結果を招きかねないことは分かっていなければいけない、というような意見が多い。

 代理店がどこであるのかは知らないし擁護するつもりもないのだが、わたしが知る限りこうしたTwitterを使ったメッセージの自動送付キャンペーンを最初にやったのは米国の製薬会社だったと思う。「風邪」というキーワードを含む「つぶやき」をしたユーザーに対し風邪薬のクーポンを送るというキャンペーンだった。

 そのときの米国のユーザーの反応は、実は概ね好意的だった。目新しいキャンペーン手法を、面白がっているところがあったように思う。

 もちろんそれは最初のキャンペーンだったからで、「同様のキャンペーンが増えてくれば嫌だね」という話は確かに既に出ていた。今回のキャンペーンで残念なのは、関係者が日本のTwitterユーザーの受け止め方を予測できなかった、ということなのだと思う。

迅速な対応を評価する声も

 たまたま同じ日に割と熱心なTwitterユーザー数人との飲み会があったのだが、キャンペーン開始からわずか2時間でキャンペーンを中止し即座に謝罪文をサイトに掲載したという迅速な対応を、評価する声もあった。この対応の速さが、批判の矛先が発案者であると思われる広告代理店にだけ向けられ、UCC自体には向けられなかった理由ではないだろうか。失敗はだれにでもある。その失敗を即座に認め謝罪すれば、許してもらえるのだ。

マーケティングの本質の変化

 実はこれを指摘する人はそう多くないようだが、僕が最も強く感じたのは、マーケティングの本質が大きく変化しつつあるのではないかということだ。

 これまでのマーケティングの目的は、企業側のメッセージを消費者に伝える、ということだった。それはマスメディア全盛時代もそうだったし、インターネット時代になってオンライン広告、オンラインマーケティングの利用が広がってきた今日でもだいたい同じじゃないかと思う。マーケッターの多くは、自分たちのメッセージをどうすれば効率的に伝えられるか、ばかりを考えているように見受けられる。

 しかしソーシャルメディアの時代に移行しようとする中で、マーケティングの目的は、メッセージを伝えることから、消費者の声を聞くこと、消費者との関係を強化することに変わりつつあるのではないかと思う。

 Twitterを使ったマーケティングの成功例としてはDellが有名だが、DellのSenior Manager for Corporate Affairs, Richard Binhammer氏のMachableのインタビューに応えた記事を読むと、Dellは消費者にメッセージを伝えるためにTwitterを始めたのではなく、消費者が何を考えているのか聞きたくてTwitterを始めたと話している。

 そしてキャンペーンや宣伝文を流すコツについては、正直に「分からない」と答えている。そんなのケースバイケースだし業界や状況によって異なるので、正解などない。「これが正しいTwitterを使った情報伝播の形です」なんてものは存在しないということなのだろう。その代わりBinhammer氏は「分からなければTwitterを使って聞いてみればいい」と語っている。「こんな情報流したいんだけど、これって迷惑かなあ」と聞いてみればいい、というわけだ。

 消費者の話を聞くということが、これまでのメディア環境ではなかなかできなかった。ところがソーシャルメディアの普及でそれが可能になったわけだ。これがソーシャルメディアマーケティングの本質だし、これまでのマーケティングと大きく異なる点なんだと思う。話を聞くことで、消費者との関係を強化できるのだと思う。

 考えてみれば、友人関係だって同じだ。友達が多い人には、聞き上手が多い。自分のことばかり話す前に相手の話を聞くことが大事なのだ。

 今回UCCが迅速に対応したことで批判の矛先がUCCにそれほど向いていないのも、UCCがユーザーの声に耳を傾けたと多くのユーザーが感じたからではないだろうか。

 30代にリーチするメディアがなかなかないのでTwitterを使う、というマーケッターがいるようだが、こうした発想自体がマスメディアマーケティングの発想ではないだろうか。

 と僕は思うのだけど、どうだろうか。コメント欄やTwitterで意見をいただければありがたい。

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