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訴訟ネタが続く”Yelp”、失った信用を取り戻せるか 【三橋ゆか里】

地元のお店やレストランなどの口コミを集め、メインストリーム化したソーシャルメディア”Yelp“。設立から6年経っており、 2010年3月時点の月間ユーザ数は約2,900万。結局白紙に戻ってしまったものの、グーグルから買収交渉を持ちかけられたこともあり、その額は少なくとも$500M(5億ドル)と言われていました。そんな急成長を遂げてきたYelpですが、最近ニュースになる理由といえば訴訟ネタ。これまでも不正な営業活動が行われているというウワサはありましたが、2月24日にカリフォルニア州で集団訴訟を起こされました。訴訟の理由は、サイトのコンテンツであるレビューを不正に操作しているというもの。

原告の主張によると、事実と異なるマイナスなレビューを削除してほしいと依頼をしたところ、レビューをサイトから削除する見返りとして毎月300ドルを要求されたとのこと。Yelpはこれらの事実を認めていませんが、彼らの不祥事について書かれたKathleen Richards氏の記事によると、社員自らがレビューを書いているという話も。2004年のサービスローンチ当初は、多くのレビューを社員が書いていて、今でもなお、 Yelpは地域担当者を設けることにより、新規市場をする際にレビューを増やす手法をとっているそうです。CEOのStoppelman氏自身も、これまでに800件以上のレビューを書いているんだとか。

Stoppelman氏はYelpの公式ブログで、今回の訴えの内容を誤りとし、法廷で争う姿勢を見せています。それはさておき、今回訴訟という形で表面化したYelpへの不信感を簡単に拭うことはできません。口コミは、実際の利用者であるユーザの言葉であるからこそ意味があるのであって、それがほんの少しでも意図的に操作されていたとしたら、レビューサイトとしてのYelpの価値はまったくないと言っても過言ではありません。顧客サービスにおいても最重要とも言える、ユーザとの信頼関係。それを取り戻すべく、Yelpは先日、そのサイトに様々な変更を加えました。詳細が明かされていない独自のアルゴリズムによってフィルターしているレビューを、すべて見られるようにしたそう。お店やレストランが自ら投稿したと思われる極端にプラスなレビュー、また逆にお店の競合などが投稿したと思われるマイナスなレビューも見ることができるようにしたようです。フィルターのアルゴリズムそのものは公開されないままですが、今回の一連のことを踏まえて、ユーザへのメッセージを動画で用意しています。

星の数ほどあるレビューサイトから、”Yelp”を差別化していたもの、それこそ今回問題になっているフィルター機能。怪しいレビューを排除し、特定のお店やレストランの情報を求めるユーザにとって有益なレビューを提供してくれるとして伸びてきました。レビューサイトに限った話ではないですが、ユーザとの信頼関係なしに成功はありません。以前、新刊をKindleで提供しないことに腹を立てたKindleユーザが、アマゾンに星1つのレビューをいくつも投稿したという話がニュースになっていました。少し時間が立って確認しても、それらの星1つのレビューはちゃんとサイトに残っていました。ユーザが10人いれば、10の異なるレビューがあって当然。包み隠さず見せる透明性こそが、ユーザの信頼を勝ち取ることにつながるんだと思います。ソーシャルメディアはプラスに使えればとてつもなくパワフルですが、それは同時に脅威にもなりえます。”Yelp”はユーザとの信頼関係を取り戻すことができるのか。まだまだその道のりは始まったばかりです。

【スタッフブロガー】三橋ゆか里

肩書きウェブディレクター。ディレクションの他、翻訳やライティングなど、フリーでお仕事してます。ツイッターIDは”yukari77“。

個人で運営している【TechDoll.jp】というサイトで、海外のテクノロジー、ソーシャルメディア、出版、マーケティングなどの情報を発信しています。目指せタイムリーな情報発信!

これまで雑誌のECで→UIデザインのコンサル→ウェブ制作会社などを渡り歩いてきました。そこで得たスキル、人、全部かけがえのない財産。幸せの方程式は、テクノロジー(UI, IA..)×マーケ×クロスカルチャー×書く・編集。いま一番夢に近いとこにいる。

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