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大量削除アプリの今…「PUFF!」のあの子は人気急上昇(更新) 【増田(maskin)真樹】

 2010年2月、セクシーな表現を含むアプリがAppStoreから一斉に削除されるという事件が起こった。性的に刺激的なアプリはもちろん、“これが削除対象?”と思われるアイドルの写真集までもが対象となり一時は騒然となった。これまでAppleは、クレームの多いアプリを削除するなどしてきたが、ランキングのトップに君臨して大人気アプリも一掃され、その行動に疑問の声すらあった。一部報道では削除されたアプリは数千ともいわれている。

 削除されたアプリは現在どうなっているかというと、どこも一様に「詳細調査中」のまま、数ヶ月経過がしている状態だ。アプリの開発は一朝一夕では成し得ない、大変な苦労をしてリリースしているはずだ。当然削除された時のショックは大きく「え!?マジ!?」「ふざけんなよ!」と怒号が飛んだといる会社はとても多い。

 一方でAppleは花々しくiPadやiPhone4をリリース。これでは開発者が浮かばれないではないか。そこで、削除された中でもトップセールスを確立した2大アプリにその心境と現状について話をうかがった。

妄撮

 一つ目のアプリは、講談社の企画「妄撮」。開発したVASILYの金山氏は、削除騒動について冷静にこう語る。

元々このようなリスクがあることを認識した上でビジネスを行っていたので、ガイドラインやデバイス、SDKの仕様の変更にこちら側も柔軟に対応しながらiPhoneアプリの事業を積極的に展開していこうと思っております。弊社はベンチャーなので、重要なのはこういう変化に対してクレームをつけることではなく、変化に対して順応していき、結果を出していくことだと思います。

 しかしながら同社は、2008年創業直後の2009年、ブランドや出版社とコラボレーションしたアプリで日本のAppStoreのエンタメ、ユーティリティー、レファレンスの3ジャンルで1位を獲得するほどの実力のある企業。「妄撮」のiPhone/iPod touch版は、およそ1ヶ月の販売期間にもかかわらず、日本のみならず香港、台湾のAppStoreエンタメランキングで1位を獲得するなど反響があったのだから、突然の削除はショックだっただろう。

 そもそも、iPhoneを筆頭とするスマートフォンは携帯ほどの規模にはまだまだ到達していないものの、急成長をしている分野。削除されたアプリ開発企業は「スマートフォンの勢いには目を見張るものがあり、展開としては欠かせない」と口を揃えるだけに、強制削除のインパクトは甚大だったと察っする。

PUFF!

 スカートめくりアプリ「PUFF!」削除されたアプリの中でも独立系企画として最も注目をあびた作品といっても過言ではないだろう。

 「PUFF!」は2009年の9月に公開し、2010年2月に削除されるまでの期間で、全世界で約120,000ダウンロード。2009年で総合ランキング1位を連続22日間維持するなど、かなり話題になった。日本での反響は大きかったのはもちろん、韓国のYahoo!にも掲載され社会問題化。アメリカのオンラインTVでも採り上げられた。

 開発した1stAvenueの安岡氏は「Appleのレギュレーション(規則)に変更があったのは残念だが受け入れている」と話す。

「AppStoreでのレギュレーションが変更になったので削除します」という通知が一方的にメールで来たのみで、削除されてしまいました。削除される前に、「PUFF!」の第2弾である「PUFF! Premium」の無料アップデート申請を行ったのですが、その審査にとても時間がかかり、Appleに問い合わせたところ、いろいろとダメな点を指摘され、その最中に「Premium」が削除されていました。

その後ですが、特に連絡はありません。恐らく、このままになるのではないでしょうか。

Appleの土俵上でやっている以上、納得していますが、プラットフォームを持つことの強さ・賢さを認識しました。我々は「PUFF!」だけに賭けていたわけでもありませんので「仕方ない」というレベルです。特に抗議をしたりすることは考えておりません。

 削除後、出演した女の子のうちの1人である黒澤ゆりかさんが話題になり、今年は映画出演や雑誌の表紙を飾るなど、ブレイク寸前まで来ていることに「うれしいこと」と安岡氏は、生み出し側の喜びを純粋に表現しているように感じた。

PUFF!の一番人気モデル「黒澤ゆりか」さんに突撃インタビュー!

 今回、さまざまなアプリ開発企業に話をきいたが、削除については「携帯キャリアと同じ、納得するしかない」という姿勢が標準的だった。しかし、「毎日アプリのファンから連絡がはいる」と、ユーザーからも心配を受けるなど、その余波はまだおさまっていないようだった。

 強制削除について、筆者が問題と感じたのは以下の点だ。国内外でさけばているように審査基準の明確化がなければ、開発者はいつになっても浮かばれないような気がしてならない。

・App申請後の却下の理由が毎度納得できない。「レギュレーション(iPhone SDK Agreement)の○○に書かれている通り」という説明があっても、開発者に渡されているSDK資料には、詳細は掲載されておらず、対策を打とうにも何もできない。どんな機能があるかの一覧すらないので、どこまで対応すればいいかも不明。
・その理由について質問をしても回答してくれた試しがない。
・削除対象と断定できるアプリが公開されていることもある。なぜかと質問しても無視される。
・日米で別に申請すると、日本でOK、米ではNGみたいなことが普通に発生する
・「更新した」という通知が朝にあったのに、お昼には削除されていたこともある。
・明らかにまちがった削除理由でクレームを出しても無視。
・申請に時間がかかるので問い合わせをしたところ、まもなくアプリが削除されたりする。一度、通過し、その後も何等変更していなくても、思い出したように「実はあの部分ただめでした」と削除される。一度削除の指摘をされると、当該箇所を修整してもまた削除になる確立が高い。指摘箇所は一度に教えてくれないのだ。
・削除になると電話で丁寧に説明された人もいれば、メールがきただけで質問しても無回答の人もいる。

 
■ 妄撮 MOSATSU.com(講談社)
妄撮 MOSATSU.com
・開発 VASILY

■ PUFF!
公式サイト(現在はAndroid版とWindows版を提供中)
1st Avenue

■ アンケート&取材にご協力いただいた各社に感謝します
 

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(増田(maskin)真樹)

著者プロフィール:増田(maskin)真樹

 1990年より執筆およびネットメディアクリエイターとして活動を開始。
 週刊アスキーを初め、日経BP、インプレス、毎日コミュニケーション、ソフトバンク、日経新聞など多数のIT関連雑誌で活躍。
 独立系R&D企業のマーケティング部責任者の後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの立ち上げに参画。
 ネットエイジでコンテンツディレクターとして複数のスタートアップに関与。ニフティやソニーなどブログ&SNS国内展開に広く関与。
 現在、複数のメディア系ベンチャー企業にアドバイザー・開発ディレクターとして関与。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。書き手として、また実業家として長年IT業界に関わる希有な存在。

 6月17日 翔泳社より「Twitter情報収集術」を発売。

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