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電子書籍は紙の書籍より値段が高くてもいい【湯川】

 今のところ英語の本だけなんだけど、僕が電子書籍をフツーに読むようになってから、強く思うようになったことが1つある。確信するようになったことがある。それは、電子書籍のほうが紙の本よりも値段が高くていい、高くても電子書籍は売れるんだ、ということだ。

 これは自分自身がそうだった。米AmazonでA Crowd of One, The Futere of Individual Identityという本を買おうとしたときのことだ。2007年の本なので、値段が少し安くなっているようで、もともとハードカバーが25ドルで売られていたのが今は10ドルに値下げされていた(注:米国には「本の価格を一定にしないと文化の多様性が損なわれる」というような考えをベースにした法律がないので、古い本は値段が下がる)。ところが電子書籍のほうは15ドルだった。紙の本が電子書籍の3分の2の価格だったわけだ。

 なのに僕は迷わず電子書籍を買った。


 配達されるのを待たなくても1分以内に読み始めることができるというメリットがあるからだった。また省スペースというメリットも大きい。我が家でもご多分に漏れず読み終わった本の処分には本当に困っている。ブックオフやAmazonのマーケットプレイスで売るのも面倒である。またエコの観点からも電子書籍のほうがいいに決まっている。

 しかし絶対電子書籍のほうがいいと思うようになったのは、ブックマーク共有機能を使うようになってからだった。Amazonで売られている電子書籍は、多くの人がブックマークした箇所に破線でアンダーラインが自動的に引かれているのである。学生時代に勉強が得意な友人の教科書を見せてもらって彼がアンダーラインを引いたところだけを勉強したら、一夜漬けでも結構な点数を取れたことがある。はてなブックマークのようなソーシャルブックマーク機能もそうだが、他人のブックマークは、その情報の価値判断をする上で役に立つのである。

 多くの人がブックマークしている箇所は、やはり重要な箇所である場合が多い。また反対にだれもブックマークしていない箇所をブックマークした場合は、自分独特の着眼点なので、それを大事にするためにあれこれ深く考えてみることにしている。

 ブックマークした部分をTwitterでつぶやくことのできる機能も一部電子書籍に搭載され始めたし(拙著TechWave英語学習法にも搭載されています)、本の中の情報をもとに議論や情報交換するという使われ方も一般的になっていくのだと思う。

 この機能は今後、英語の電子書籍を読みながら意味の分からないところをTwitterで質問するとだれかが答えてくれる、というような使い方に発展するかもしれない。複数の読者で協力し合って、一冊の本を訳していくというプロジェクトに発展する可能性もある。

 この機能を使って、同じことに関心を持つ人たちのコミュニティーに発展する可能性だってある。本を読むという行為は、個人の静かな営みではなく、同じ問題に興味を持つ世界中の人たちの知的コラボレーションになるわけだ。

 それが20世紀の紙の書籍と、21世紀の電子書籍の決定的な違いである。省スペースよりも即ダウンロードよりも、大きな違いなのである。

 その決定的な価値の違いがだれの目にも明白になったときに、電子書籍は紙の書籍よりも高く売れるようになるんじゃないだろうか。

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