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“コンテンツ”というものを、紙やテレビではなくディスプレイで楽しむようになったのはいつ頃からだろうか。確かに90年代の感動の主役はテレビであり映画であり、紙などであった。PCやネット普及&成熟期の200X年代を経た2010年、多くのコンテンツがPCやiPhone、iPadといった情報デバイスで楽しめるようになっている。もちろんデバイス上における完成度の面で気にかかる部分もあるが、株式会社ロボットが制作したこのiPad用絵本アプリ「ポーのクリスマス」を観る、、、、いや触れる、、いや「体験する」(という言葉が適切だろう)ことで、これまで経験してきた何よりも刺激的なクリエイティビティの可能性を実感できるのだ。
ロボットは言わずもなが、アカデミー賞短編アニメーション部門を受賞した「つみきのいえ」(加藤久仁生 監督)を排出した映像制作会社。多数のテレビコマーシャルや映画「ジュブナイル」「ALWAYS 三丁目の夕日」や「LIMIT OF LOVE 海猿」、ゲームではXbox360用「ブルードラゴン」、PS2「鬼武者3」などのCG動画、ウェブコンテンツなどを幅広く手がけているオールラウンダーだ。
今回11月19日に、iPad用コンテンツとして発売された「ストレイシープ ポーのクリスマス」は1990年代にフジテレビの深夜番組のプロモーション用キャラクターとして誕生した“ポー”が主役となった作品で、1996年に発売された同名の絵本がベースになっている。作者は野村辰寿(のむら たつとし)さん。「誕生してから10年が経過していますから、キャラクターとしては寿命かな、と思っていました」と話す。
野村辰寿(のむら たつとし)さん
アニメーション作家。株式会社ロボット所属
CMディレクターとして活動後、フジテレビ『ストレイシープ』をきっかけに、NHKプチプチアニメ『ジャム・ザ・ハウスネイル』、『ネコのさくせん』、テレビアニメシリーズ『ななみちゃん』、ネットアニメ『Moon Boon 三日月島のモーとブー』などさまざまな手法のアニメーション作品を手がける。現在、同社 animation studio CAGE に所属。オリジナル作品や、CM、テレビ番組、展示映像、Web、絵本、イラストレーションなど幅広く活動中
アプリは、日本語、英語、韓国語、中国語の4ヶ国語に対応。開発は、 iTunes Rewind 2010 ベストセラー教育アプリ、 Yahoo! JAPAN Internet Creative Award 2010「Gold」など国内で非常に高い評価を受けた「かなもじ」をご夫婦で制作している原崎正広さんが手がけた。
ロボットはそもそも映像制作を主力とした会社 。プログラミングがからむ制作は外部のリソースを活用することが多かった。しかし、今回のアプリは、もともとウェブデザインやFLASHコンテンツ制作を担当していた原崎氏が独学でC言語を拾得し賞を得るまでになったという話を皮切りに必要な人材が自然と集まり、全行程をすべて社内で制作するという流れになったという。
クリエイティブディレクター安藤岳史氏:
「iPhoneアプリを制作したことはあり、手の上という極めて距離の近いところでエンターテインメントコンテンツを展開することに興味はありました。
十分な表現をするにはiPhoneでは小さい、しかしiPadならいけるだろうという確信があったのですが、それを実現する座組を描けなかったのです。すると、ポーの作者である野村が意欲的に参加してくれたことを筆頭に、デザイナー原崎がアプリをやっていることがわかったりと、奇跡的な座組みができあがり、プロジェクトもとんとん拍子で進んでいきました。おそらく同じことをまた社内でチーム編成してやろうと思っても、不可能でしょう」。
野村辰寿氏:
「もともと作品は絵本で、素材はそこで描かれた絵筆等を使って作成されたものを使用しています。そこに必要な加工を加えたり、加筆したり、CGなどで効果を付け加えたりしてiPad絵本として構築していっているわけですが、単に「素材を動かしました」といった表現に留まらないところが本プロジェクトです」。
CG制作 西井育生氏:
「CG加工はふんだんに盛り込まれており、3D表現も導入しています。しかし、派手な演出のために導入するのではなく、あくまでアナログの手描きの良さが活きるようにするために導入しているもので、私達は2次元と3次元の中間を取って「2.5次元」と表現しています。一般の人がその映像をみてもCGとは思えないでしょう」。
野村辰寿氏:
「例えば、ポーが振り向くシーンでは立体的にアニメーションをしますし、セルアニメーションのように背景の素材が何重も合成され立体感を生み出す表現もあります。FLASHアニメライクな画一的表現がひしめく中、手描きの絵の特徴を活かし、触りたくなるような表現を施したアニメは珍しいと思います。
作品中はいたるところが触って反応する仕組みになっている上に、原崎のアイディアでiPadの傾き検知機能を使って、作品に独特なインタラクションをもたらすなど、iPadならではのエンターテインメントとして完成されていきました。昔のキャラクターで一見手描きの絵のように見えて、実はハイテクが込められたりしている(笑)」
安藤岳史氏:
「最近の制作環境は、デジタルで全て処理してしまうことが殆どです。しかし、完全なアナログの素材を、こういった形で再生することができたのは興味深いことです。iPad上のエンターテインメントとしては、ポーという個性的なキャラクターがいたことが大切だと思っています。ちょっとつっつきたくなる(笑)このキャラクターが、タッチ可能なiPadやこの座組とうまくからみあい、この作品の完成度を高めていったと思っています」。
西井育生氏:
「そうですね、アナログとはいえ、やっていることは非常に手が込んでいます。例えば、全編で降り続ける雪などは、すべてのシーンで角度や表現にこだわっています。素材でアニメにするか、プログラムで処理するか、iPadの限界やアプリのファイルサイズ制限などと戦いながら最適なものを発掘していったという感じです」。
野村辰寿氏:
「時間があったらまだまだ手を加える部分もあり、こういったプラットフォームを前提にやれることはまだあると思います。作品として季節性のある絵本ですが、毎年見てもらえるだけのクオリティにはなっている。こういうコンテンツが生活に定着するといいですね」。
ロボット社内で企画が動き始めたのは2010年5月末の企画会議。“コンテンツメーカーとしてiPadの流れにどうからんでいくか”という問題提起に始まり、奇跡的な流れによってこの作品は生まれた。
さわっているだけで楽しい。子供から大人までが夢中になる。「ポーのクリスマス」は単なる映像作品ではない。iPadというインターフェイスを用い作品に込められたフィロソフィーの中に没入できる魅力がある上に、究極なまでに美しい映像とサウンドが、ユーザーのインタラクションに呼応しさらなる奇跡的なクオリティを醸造することさえあるのだ。なので是非、自分なりの「ポーのクリスマス」を発見して欲しい。ポーの作品は次のエピソードの構想もあるとのこと。
というわけで、、、、
ロボットのみなさんありがとう!
(写真:左から西井育生さん、安藤岳史さん、野村辰寿さん、事業戦略室 室長 境治さん)
12月20日まで限定企画:大切な人に1本アプリをプレゼントできるキャンペーン実施中。(「ポーのクリスマス」を購入すると」と書いたけど、誰でもOKでした!)iPadを持っている人は、是非今年のクリスマスを「ポーのクリスマス」で楽しんで欲しい。みんなにポーの感動を!。
■ 関連URL
・[iTunes App Store]
iPad 「ストレイシープ ポーのクリスマス」
・[公式ページ]STRAY SHEEP 「ポーのクリスマス」 for the iPad
http://www.robot.co.jp/poe/
・株式会社ロボット
http://www.robot.co.jp/
ポーに触れて思い出したのが、20年前にMacintosh用ソフトとしてリリースされた「Cosmic Osmo」。インタラクションの宝庫的な絵本ソフトで、何時間さわっていても飽きなかった。しかし、「ポーのクリスマス」はそれ以上の感動があった。
余談だが、実はロボットさんの取材にとても興奮していた。もちろんポーはリアルで知っていたし、ロボットのCGに魅了され、ななみちゃんは次女がそっくり、そしてストップモーションアニメ「ジャム・ザ・ハウスネイル」の大ファンだったのだ。(十代の頃からアニメ制作していました)
野村氏のスタジオのショーケースにハウスネイルの実物が納められているのを見た時は鼻血が出そうでした。
十代からメディアクリエイターとして企画設計からマーケティング、コーディングまでマルチな才能を発揮。週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で活躍。雑誌ライターとして90年代を疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスの起業に参画。帰国後、ネットエイジで複数のスタートアップに関与。関心空間、富裕層SNSのnileport、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導する。
数年間の休眠後、現在TechWaveの活動を中心に、執筆や講演、コンサルティング、サービス企画&開発にコミット。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。DJやイベントオーガナイザー。
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