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80歳の巨匠ロリン・マゼール氏10時間半ベートーベン全交響曲を3D+高品質音響ネット中継【あきみち】

 
12月31日 13:00-23:35に行われる「ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会2010」が、HD 3D Ustream配信、WMT HD 3D配信、24bit 96kHz音響、H.264 IPv6マルチキャストなど、様々な手法を駆使した同時並列高品質配信されます。



 
このクラシックコンサートは、そもそも演奏そのものも凄いです。
2010年に80歳を迎えた、巨匠のロリン・マゼール氏が13:00-23:35まで指揮をします。
プログラムを見ると、5部に別れていて1時間ぐらいの演奏後に、三枝成彰氏や出演者によるトークが入り、その後休憩も入るので10時間以上ぶっ続けで演奏が行われるわけではありませんが、それでも80歳のロリン・マゼール氏がベートーベン交響曲第1番から9番までを10時間半かけて指揮をするのは凄いです。

12月31日に行われるネット中継

 
ただ、今回、私が注目したのはコンサートそのものというよりも、最新技術を駆使してインターネット上でのストリーミングが行われる点です。
これは、企画が先にあってロリン・マゼール氏にお願いをしたわけではなく、世界中のできるだけ多くの人々に演奏を届けたいというロリン・マゼール氏の意向によるものです。
先進的な80歳巨匠です。

 
三枝成彰氏のオフィシャルサイトで公開されている「ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会2010 世界的巨匠ロリン・マゼールが満を持して登場! 80歳で挑む初の“振るマラソン”」を見ると、プラチナ席は10万円(D席は7千円)と書いてあります。
これが無料でネット配信されるという点も面白いのですが、24bit 96kHzの高音質でネット配信されたり、最近話題の3Dでネット配信されるというハイテクな側面も非常に興味深いと言えます。

 
以下が、「ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会2010」で行われるネット中継です。

* HD Ustream配信:
720p H.264映像+2ch音響
http://www.ustream.tv/channel/beethoven-2d
* HD 3D Ustream配信:
PCや、PCからのHDMI出力を3D TVで表示するためのUstream配信。720p H.264 3D映像+2ch音響
http://www.ustream.tv/channel/beethoven-3dtv
* スマートフォン用3D Ustream配信:
3D表示が可能なスマートフォン用の3D Ustream配信、低解像度3D映像+2ch音響
http://www.ustream.tv/channel/beethoven-3d
* 静止画+高音質Ustream配信:
静止画と24bit 48kHzのUstream配信
http://www.ustream.tv/channel/beethoven-audio
* WMT 1920×1080 3D映像+5.1ch配信:
Windows Media PlayerでHD 3D配信を見るためのストリーミング。WMTは5.1チャンネル音響が可能。
mms://a4a-3d.wide.ad.jp/wmv-3d
* WMT 24bit 96kHz Audio配信:
24bit 96kHz 2chの高音質配信。音響のみ。CD品質が16bit 44.1kHzなので、それと比べると量子化粒度が細かい。
mms://a4a-2496.wide.ad.jp/wma-2496
* WMT 24bit 48kHz Audio配信:
24bit 96kHz版と聞き比べるために用意。
mms://a4a-2448.wide.ad.jp/wma-2448
* WMT 24bit 96kHz Audio IPv4マルチキャスト配信:
24bit 96kHz 2chをIPv4マルチキャストで配信。音響のみ
http://a4a.wide.ad.jp/wmt/2496multi-v4.htm
* WMT 24bit 96kHz Audio IPv6マルチキャスト配信:
24bit 96kHz 2chをIPv6マルチキャストで配信。音響のみ
http://a4a.wide.ad.jp/wmt/2496multi-v6.htm
* IPv6マルチキャスト:
VLCを利用してH.264+5.1ch音響で世界中に向けてマルチキャストされます。
udp://@[FF7E:140:2001:D30:101:1:8150:3D30]:5555

 
一つのイベントで、これだけ色々な方法でネット中継をしてしまうというのは珍しいと思います。
まさに「世界中の人々に」という感じがします。

3D映像ネット中継

 
「ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会2010」では、UstreamとWMTによるフルHD 3D映像ネット中継がそれぞれ行われます。
ストリーミング配信のためのソースとなる3D映像と5.1ch収録は、3D放送技術を初期から研究している(株)NHKメディアテクノロジーが担当しています。

 
今回利用される3D映像技術的は、水平方向に映像を半分に圧縮して左目用と右目用の縦長になった二つの映像を一つの映像ストリームとして配信するという、サイドバイサイド(Side by Side)方式で送信されるというものなので、UstreamやWMTなどのストリーミングサーバ側としては通常の映像配信と変わりません。

 
視聴者側では、UstreamやWMTで受信した映像をフル画面表示にしたパソコン+NVidia 3D Visionを使って3D映像を見ることもできますし、HDMI出力があるパソコンと3Dテレビを繋ぐことでネット中継されている3D映像を3Dとして見ることも出来ます。



 
この写真では、PCからのHDMI出力をサイドバイサイドとして認識してテレビに表示しています。
ノートPC画面では左右に二つの映像が表示されているのに、テレビ画面側では3D表示になっています。
また、テレビ画面の右上をよく見ると「USTREAM」という透かしが入っているのがわかります。
この写真はテレビ側のサイドバイサイド機能をONにした状態ですが、この機能をOFFにすると、パソコン画面と全く同じように左右二画面がテレビに表示されます。

Ustreamによるスマートフォンへの3D映像ネット中継

 
12月15日に、Ustream Asiaから「Ustream Asia、Android搭載スマートフォン向けに 3D動画視聴対応アプリケーションを提供開始」というプレスリリースが行われました。
3D対応スマートフォン向けのUstreamが行えるようになったというものです。

 
スマートフォン対応の機能ということなので、3Dとして見るには対応機種が必要になりますが、
GALAPAGOS Softbank 003SHを持っている人は「ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会2010」を3Dで見られます。

WMTによる24bit 96kHz音響配信

 
「ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会2010」では、24bit 96kHzの高品質音響による配信も行われます。

 
ただし、普通のPCだけでは、16bitの音響になってしまうので、WMTの高音質ストリーミングを体感するには、受信者側にそれなりの設備が必要です。

 
具体的には、PCにDAコンバータを接続して、DAコンバータを経由した音響出力を行う環境を受信者側で用意する必要があります。
PC用のUSB-DACを使うという方法が一般的だと思われます。

 
WMTでは、24bit 48kHz版と24bit 96kHz版の2種類のストリーミングが行われます。
受信側で、その二つの違いを楽しんでもらうために二つにしてあるそうです。
ただ、24bit 48kHz版は、16bit 44.1kHzのCD品質よりも品質が高いので、24bit 48kHz版で既に通常よりも高品質と言えるのかも知れません。

 
(ただし、96kHzよりも高音質な192kHz音響によるクラシックデータは既に販売されています。今回のストリーミングは一般的なストリーミングよりも高品質という話であり、音質そのものが世界初とか超最高品質という位置づけではないのでご注意下さい)

マルチキャスト

 
「ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会2010」は、マルチキャストでも配信されます。
マルチキャストは、一般商用ISPでは利用できませんが、学術ネットワークを中心としたマルチキャスト網が運用されており、そこに向けてIPv4とIPv6の両方でマルチキャスト配信されます。

 
マルチキャストという技術は、送信者側で一つのパケットとして投げたものを途中のルータが必要に応じて複製することで送信者への負荷が極端に減るというものであるため、ネット中継を行っている送信者側がマルチキャスト受信者数を正確に把握するのは困難ですが、マルチキャスト配信を受け取りそうな相手としては以下のような組織があるそうです。
これらは、世界的なマルチキャスト運用グループの主なメンバーであり、そこに対して告知が行われるということのようです。

SOI Asiaでの衛星インターネットIPv6マルチキャスト中継

 
衛星通信+IPv6マルチキャストを利用したSOI Asia Projectでも、今回のネット中継が行われるようです。
SOI Asia Projectは、以下のような形で衛星を活用したIPv6マルチキャスト映像配信を行っています。



 
今回は、衛星経由のIPv6マルチキャストでアジア14か国(インドネシア、ラオス、ミャンマー、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン、モンゴル、ネパール、カンボジア、バングラデシュ、シンガポール、東ティモール、日本)への配信を行うとともに、マレーシア科学大学にサテライト会場を設置して、「アジアの子ども向けプログラム」が行われるようです。

HD-SDI over IP

 
東京文化会館で行われているコンサートの模様がHD-SDI over IPを利用して慶應義塾大学日吉キャンパス協生館まで3D映像+5.1ch音響で配信されます。
一般公募によって集まった参加者が、会場にある映像/音響装置を通じてサテライト会場でバーチャルに10時間強のコンサートを聴きます。

 
HD-SDI over IPを実現する機器としては富士通IP-9500が利用されています。



最後に

 
UstreamやWMT経由で家庭にある3Dテレビに表示したり、24bit 96kHzという高音質で再生できたり、ネット経由での「放送」が進化してきているのがわかります。
ちょっと工夫をすると、普通の家庭内で色々視聴できてしまうという現状ですが、このような形態による情報発信はどこまで普及するのか、非常に気になる今日この頃です。

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【ゲストブロガー】あきみち
Geekなぺーじ」という技術情報サイト、兼技術情報ブログを運営している。
観賞魚飼育を趣味としており、熱帯魚関連のサイトも複数運営している。全日本剣道連盟情報小委員会委員。慶應義塾大学政策メディア研究科にて博士を取得。ソニー株式会社において、ホームネットワークにおける通信技術開発に従事した後、2007年にソニーを退職し、現在はブロガーとして活動。twitterは@geekpage
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