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mixi、Facebookはサイトではなく、インフラである【湯川】

[読了時間:3分]
 もう既に多くの人が理解しているものだとばっかり思っていたら、どうやらそうではないという話を頻繁に聞くので再度強調したいと思う。mixiやFacebookをサイトと認識すれば、今日本のウェブに起ころうとしていることを正しく理解できない。mixiやFacebookは、自分にとって大事な人たちという意味での「リアル」な人間関係のデータ、つまり「リアルソーシャルグラフ」を提供するインフラと理解すべきだ。

 その証拠に、mixiはものすごい勢いで技術仕様(API)を次々と公開し始めている。今後半年以内にmixiは「丸裸」状態になる。一定の手順やルールを守れば、サードパーティーでもmixi内の人間関係のデータにアクセスし、mixi内の人間関係を通じて情報や広告や製品が流通するような仕組みを構築できるようになる。もしYahooや楽天がそう望めば、Yahooや楽天だってページ上にmixiのコンテンツを表示できるようになるわけだ。Yahooや楽天のページ上で自分のマイミクの活動をチェックするというようなことが可能になるかもしれない。もしYahooや楽天がそう望めば、だが。


 そんなことをすればmixiにだれもアクセスしなくなると、思われるかもしれない。確かにmixiのページビューが低下する可能性がある。mixiの広告のクリック率も低下するかもしれない。

 もしmixiが自分たちをサイトだと考えていれば、ページビューが低下するようなことはしないだろう。mixi自体がリアルソーシャルグラフを提供するインフラ事業者だと自分たちを定義しているからこそ、APIを次々と公開し始めているのだ。インフラ事業者としての収益の上げ方があると考えるからこそ、ページビューにはこだわらないわけだ。

 逆に言えば、自分のサイトのページビューが低下してもいい、広告のクリック率が落ちてもいい、と思えないところはインフラ業者にはなれない。

 今、日本の多くのウェブ大手が、Facebookやmixiのインフラの上の乗るべきかどうかで迷っている。リアルソーシャルグラフを利用すれば、仲のいい人間関係を通じて情報、広告、製品が効率よく流通するようになることはだれもが分かっている。問題なのは、リアルソーシャルグラフを自社で持つべきか、他社のインフラを利用すべきか、という選択だ。mixiやFacebookのインフラを利用すれば、mixiやFacebookにビジネスを牛耳られるのではないかという心配がある。一方でウェブ大手の中には、mixiやFacebookに頼らなくても自分たちでリアルソーシャルグラフを構築できると考えるところもあるだろう。だから迷うわけだ。

 しかしどう考えても答えは決まっている。ポータルやECサイトは、リアルソーシャルグラフのインフラにはなれない。APIを公開してページビューを下げるわけにはいかないからだ。

 ISPがシェア争いを繰り広げ出したころにはブラウザが登場したように、ブラウザがシェア争いを始めたときにはYahooというポータルが登場したように、ポータルが競争を始めるとGoogleという検索エンジンが覇権を握ったように、ビジネスモデルが確立したプレーヤーがシェア争いを始めるころには戦いの場は既に次のレイヤーに移行しているものだ。今、mixi、Facebookがソーシャルグラフのシェア争いを始めたということは、実は主戦場は次のレイヤーに移行したということを意味している。退屈なシェア争いは、mixi、Facebookに任せておいて、早く次のレイヤーに乗り移り自分の得意領域で牙城を築く。それがmixi、Facebook以外のあらゆるサイトが今、すべきことだろう。

蛇足:オレはこう思う

mixiがマーケター向けの大規模イベントの準備を進めている。mixiが昨年9月に開いた開発者向けイベントが、日本のウェブ業界の流れを変え、だれもが「ソーシャル」を意識するようになったように、日本のウェブにおけるmixiの影響力はばかにできない。mixiのマーケター向けイベントが開催されれば、ウェブマーケティングの新潮流にだれもが気がつくようになるだろう。動くのなら今だと思う。
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