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なるか新聞革命? iPad初の定期購読紙「The Daily」レビュー(1/2) 【増田(@maskin)真樹】


[読了時間:1分]


 「メディア王」ルパード・マードック率いる米News Corporationは2月2日、米Appleと共同でiPad専用日刊紙「The Daily」を発表した。価格は、1週間あたり99セント、年間で39.99ドルとディスカウントされる。1ドル=82円で計算すると、週82円、年3280円となる。2週間のお試し期間も提供されている。

 2年間はiPad専用で運営されるこの“新聞”は、iOSアプリ初の“定期購読型”アプリとなることから、Appleからはネットサービス担当副社長のEddy Cue氏も登壇。アプリ内課金システム改変のため、このリリースにあわせiTunes Storeの利用規約も変更されている。今後、他のアプリにも適用されるとのことだが、わざわざこのリリースに合わせて先行公開することからも、マードック氏自ら登壇してきたNews Corp.のみならず、Appleの興奮が伝わってくる。





  メディア王ルパード・マードック氏は「数百万人に購読されれば成功」と説明するが、News Corp.傘下のWall Street Journalの購読部数は約200万部。オンライン版は40万程度の購読者というのだから、その数字を聞いた時は耳を疑った。しかしThe Dailyは100人体制のチームを編成するという噂がある程リソースを注力しているらしく、「むしろThe Dailyの方が現実的」と彼は本気のようなのだ。

 確かに、高額な輪転機を購入したり、配送網を構築することに比べればオンラインコンテンツは遥かに安価で済む。実際、当日発表された数字を使って仮に100万部売れた時のコストを試算してみると、売上5000万ドル、初年度コストは3000万ドルとなり、もし早期に読者を集められればスピーディに黒字になる可能性もある。

 「紙でやった場合20億ドルのコストがかかる。余った分は読者に還元したい。我々の挑戦は、伝統的な報道の最良の部分と、現代における最高技術とを組みあわせること」とマードック氏。

 では、iPad専用日刊紙「The Daily」とはどんなものか?実際に画面を使って紹介してみよう。

 いきなりではあるが、ロードが長い。Wi-Fi&FTTH(光)でも数十秒は待たされる。ロードしたからといってもオフラインで全てを購読できるわけではない、記事閲覧中に何らかのロードが発生する。というわけで、メイン画面の紹介だ。

 中央に記事トピック(特集的な記事編成)が配置される。指で動かすと回転木馬のようにクルクルとコンテンツを閲覧することができる。コンテンツは、ニュース、ゴシップ、オピニオン、アート&ライフ、アプリ&ゲーム、スポーツとバラエティに富んでいる。背景のグラデーションは昼夜を表現しており、夜になると星が出たりする。天候は事前に入力した郵便番号から抽出されてくる。

 広告が多いのが目につく。既にパラマウントやPepsi Max、Range Rover、ベライゾンなどが広告主となっており、多様な表現手法の広告が用意されている。iPadを放置しておくと自動で広告ページが表示されているような気がする。どんな仕掛けがあるか、まだ解らないという印象だ。

 最下部の▲をクリックするとメニューが表示される。左から「関連動画再生」「テキスト読み上げ」「前からページめくり」「シャッフル」だ。右側にあるのは「クリップ」でボタンを押すと記事が保存される。右端は設定ボタンで、購読者情報や契約について入力する。

“縦”と“横”でレイアウト可変、コンテンツに変化も

 記事そのものはいわゆるウェブ新聞の進化版と考えてみればいいだろう。至るところに何らかの仕掛けがあり“読む”というよりは、“没入”して体験するという印象。ただ、記事そのものが普通なので、米国の読者からも「記事がつまらない」という意見もあるようだ。ただ、ローンチ時で閲覧できるのは、たかだが20程度の記事のみ。ここで質うんぬんを言ってる場合ではないと思う。

 それよりも注目したのが、iPadを縦とか横に回転させた時のコンテンツの変化だ。たとえば大リーグの記事。縦に持っていると、こんな感じ。


 これを横に持ちかえると、こんな風にレイアウトが自動で変更される。

 レイアウトだけでなく、写真やビデオ素材がある記事なら、横にすると“ギャラリーモード”に切り替わる。


動きある新聞

 全体を通して動きの多さを感じるThe Daily。とにかく何が起こるかわからないという期待感がある。演出だけでなく、時間や傾きに連携したもの、ソーシャルメディア連携、ゲーム(!?)もなんでもありなのだ。もちろん、タッチインターフェイスを活かしたものも多数ある。これがThe Dailyファーストインプレッションの最大の魅力に感じた。

 意外だったのがビデオ素材の豊富さ。メニューの「関連動画再生」ボタンを押すと、記事に関連した動画以外にも、その日のヘッドラインをサマリーで紹介するビデオもある。これをざっとチェックするだけでもコンテンツとしての価値がありそうだ。

 もちろん、読者属性に連動したコンテンツもある。今のところ天候とホロスコープくらいだが、iPadの画面一杯の情報量が連携してくる様はいい感じだ。今後、連携が増えることで、新聞メディアとしての魅力は増すのではないだろうか。

 ちなみに、夜のロード時間はちゃんと夜になる。

 待っててもこの変化はちょっと嬉しく思えた。

 ざっと雰囲気を紹介したがいかがだっただろうか。後編はこちら

■ 関連URL
・The Daily
http://www.thedaily.com/
・ルパード・マードックが仕掛けるiPad新聞「The Daily」を本日2月4日にデモします! 【増田(@maskin)真樹】
http://techwave.jp/archives/51586454.html

蛇足:僕はこう思ったッス


ローンチ24時間経過後のiTunesのユーザーレビューによる評価がおもしろいことになっている。最高が一番、次点は最低なのだ。最低評価のコメントは、全部読んだわけではないが「ロードが遅い」と「記事が普通」といったあたりが多い。僕自身どう思ったか?後編で話したいと思う。
著者プロフィール:TechWave副編集長 増田(maskin)真樹

 十代からメディアクリエイターとして活動。週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして90年代を疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスの起業に参画。帰国後、ネットエイジで複数のスタートアップに関与。関心空間、富裕層SNSのnileport、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導する。 / 現在TechWaveの活動を中心に完全復帰中、多数のプロジェクトに関与する。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。

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