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書評:イケダハヤト著「フェイスブック」【湯川】

[読了時間:2分]


 ソーシャル時代の若きオピニオンリーダー、イケダハヤトさん(24)が書いた「フェイスブック 私たちの生き方とビジネスはこう変わる を読了。

 この本には2種類の読者層が想定される。1つは、「フェイスブック」というタイトルを見て手に取る読者層。もう1つは、「イケダハヤト」という著者名で手に取る読者層だ。イケダさんはTechWaveにも何度か寄稿してくれたので、TechWave読者は著者名で手に取るかもしれない。しかし世間一般的には、失礼ながらイケダさんの知名度はまだそれほど高くなく、タイトルでこの本を手に取る人の方が圧倒的に多いだろう。なので出版社は、前者の読者層を想定してこの本を作ってある。つまり今年に入ってから本屋の中にあふれるように並べられているFacebookのマニュアル本の1つとして作られてあるわけだ。その判断自体は間違っていないと思う。


 ただ本の中でイケダさんは次のように書いている。

 本書を執筆する上で、わたしはこの本を「フェイスブックのマニュアル本」にはしたくないと考えました。単なるマニュアル本では、フェイスブックのもたらす「変化」について記すことができないからです。

 このイケダさんの「変化」に関する考察こそが、類似のFacebook本にはない、この本の最大の価値である。タイトルが理由でこの「マニュアル本」を手に取った読者も、この本の根底に流れるイケダさんの「変化」に対する考察を読み取ることができるのではないだろうか。

 一方で、著者名でこの本を手に取った読者の多くは既にFacebook上で活発に活動している人がほとんどだろう。そうした読者にとっては、Facebookへの登録の仕方などの解説は不要だし、Facebookの何がおもしろいのか、どういう変化をライフスタイルにもたらそうとしているのか、などいうイケダさんの考察も目新しいものではない。

 またイケダさん自身、目下のテーマは「ソーシャルウェブが拓く未来を探求すること」と書いてある通り、まだまだ探求の途中であり、体系だった理論が確立しているわけでもなさそうだ。

 それでも24歳のイケダさんの漠然と抱く未来の方向に対する感覚は、同じネットにどっぶりつかっている人たちの間でもオールドタイマーの感覚とはかなり違うもので、読んでいて非常に新鮮である。

 イケダさんの、未来の方向に対する感覚を示すような文章を幾つか紹介しよう。

 ウェブの力で「わざわざ伝えられなかったこと」が伝えられるようになり、「共感に基づくコラボレーション」が発生しやすくなっています。

 これまでの消費生活が異常だっただけにも感じます。大して使いもしないものを各人が1つずつ持っているような状態は、大変非効率です。

 かっての拠りどころを喪失したわたしたちにとって、フェイスブックのような共有ツールは、新たな拠りどころを生み出す重要な道具になります。

 人とのつながりが豊かであれば、「共有」の恩恵を受けることができ、金銭的なコストを抑えることができます。

 共有の恩恵を受けるために必要なのは、お金ではありません。簡単な理屈ですが、「共有」の輪に入るためには、自らも何らかの価値を提供することが求められます。

 右肩上がりの時代を歩むことのできないわたしのような若い世代にとっては、繋がりを豊かにし、さまざまなものを「共有」することは1つの自衛策と言えるでしょう。

 共有時代とは奪い合いのゼロサムではなく、参加者が増えれば増えるほど豊かになっていく「プラスサム」です。これまでの異常の消費や独占はもう終わりです。異常なゲームからはもう降りて、新しい時代を切り開いていきましょう。

 イケダ氏のこれからの知的活動を通じて、こうした感覚がどのような理論に発展していくのだろうか。これからが楽しみである。

蛇足:オレはこう思う

 とはいえこの本はマニュアル本として作られている。Facebookを既に日々活用しているTechWaveの読者には少々物足りないかも。

 この本を早く読みたいと言ったら、出版社が速達で献本くれました。多謝。まだ全部刷り上がっていないみたいなので、本屋にはおいていませんが、アマゾンでは予約できるようです。

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