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次々発表されるソーシャルフォン、果たして普及するか【湯川】

[読了時間:4分]
 米Facebookが、携帯電話メーカーと組んでFacebookの機能を前面に押し出したスマートフォンを発表した。ミクシィもソフトバンクのAndroidケータイを通じて「ソーシャルフォン」サービスをまもなくスタートさせる予定。Facebookやmixiといったソーシャルメディアとスマートフォンとの相性は確かにいいが、果たしてソーシャルメディア機能を核にしたソーシャルフォンはどの程度、普及するのだろうか。ソーシャルフォンはどこまで進化するのだろうか。

INQはまるで「Facebookフォン」

 Facebookは、台湾の携帯電話メーカーHTCから2機種、英国のINQから2機種、Facebook機能を前面に押し出したスマートフォンが発売になると発表した

 HTCから発売になるのは、「ChaCha」と「Salsa」の2機種。トップの画面にFacebookのボタンが設置されてあり、Facebookの各種機能に簡単にアクセスできるようになっている。「今なにしてる?」という「近況」を発信したり、写真のアップロード、ニュース記事のリンクの共有、店舗へのチェックインなどが簡単にできるようになっている。

 一方で、INQから発売になる「Cloud Touch」と「Cloud Q」2機種は、トップ画面がFacebookの機能のボタンで埋め尽くされている。Facebookアプリを常に立ち上げているような状態だ。

コツンと接触でマイミクに


 まもなくサービスが始まるソフトバンクの「ソーシャルフォン」では、mixiの各種機能がフィーチャーされる。昨年11月に出されたソフトバンクの発表文によると、このサービスはアプリとして提供され、Androidのバージョン2.2以上の機種でAndroidマーケットから無料でダウンロードできる。また一部機種ではプリインストールされるという。

 発表によると、スマートフォンの機能とmixiの機能が自動的に同期するので、アプリ上からマイミク(mixi上の友人)に電話をかけたりメッセージを送信できたりする。またスマートフォンで撮影した写真をボタン1つでmixiフォトにアップロードできる。mixiフォトは1日に150万枚の写真がアップロードされる国内最大の写真アップロードサービスになっているが、「ソーシャルフォン」が普及すれば、アップロードされる写真がさらに増える可能性がありそうだ。

 また順次提供予定のサービスに「マイミク申請機能」がある。これは、「ソーシャルフォン」アプリを搭載しているAndroidケータイ同士を軽く接触させるだけでマイミク登録が可能になるというサービス。iPhoneアプリに、iPhone同士をコツンと接触させるだけで互いをTwitter上でフォローし合えるという「Bump」というアプリがあるが、「ソーシャルフォン」の「マイミク申請機能」も同じような機能なのだろう。

 またmixiチェックインの情報がアプリ上の地図に連携表示され、マイミクの場所が簡単に確認できるサービスも、順次搭載される予定という。

ソーシャルフォンは市場を席巻するか

 さてこうしたソーシャルフォンはどの程度普及するだろうか。

 現状ではそれほど普及しないと思う。HTCのスマートフォンは、Facebookアプリの入り口がトップ画面についたようなもの。INQのスマートフォンは、Facebookアプリを常に立ち上げている状態をトップ画面に持ってきただけに過ぎない。mixiの「スマートフォン」は、文字通りアプリである。

 つまりソーシャルフォンと言っても、ソーシャルメディアの専用アプリを使いやすく進化させ、アクセスしやすくしただけのことだ。

 ソーシャルフォンと名乗るのであれば、アプリではなくOSにまで立ち入ってソーシャル機能を持たせるべきだろう。そして当然、Facebookもミクシィもそれを目指している。

 Facebookは、Microsoftと非常に近い関係になり、Microsoftの携帯電話向けOSであるWindows Phone 7の改良にFacebookエンジニアが深く関与しているといわれている。またオープンソースであるAndroid OSをFacebook仕様に改良作業を続けているといううわさもある。米TechCrunchは、AndroidをFacebook仕様に改良したFacebookを今年の開発者向け会議「F8」の目玉として発表するのではないか、と報じている。

 ミクシィはどうなんだろう。Androidの改良を進めているのだろうか。関係者と何度も接触しているが、今のところそうした話は聞こえてこない。ただわたしが知らないだけで、進んでいるのかもしれない。

 OSまで改良すればどのようなことができるのだろう。1つ例に挙げられるのが、インスタント・パーソナライゼーションだ。ID、パスワードを入力することなく、各種アプリがソーシャル化するというものだ。

 例えば今のグルメ情報のアプリだと、すべてのユーザーの評価を総合した星の数でレストランが評価されている。ところがOSまで改良すると、アプリにFacebookの情報が提供され、特定のレストランに対する自分の友人の評価を表示することができるわけだ。友人がチェックイン情報を公開していれば、今どこで食事しているのかも分かり合流することも可能。Facebookの友人同士の情報を加えることでアプリの機能が大きく変化することになるわけだ。

 ここまでできるようになって初めてソーシャルフォンは普及するだろう。そのときにFacebookやMixiといったソーシャルメディアと、AppleやGoogleとの力関係はどうなっているのだろうか。それはソーシャルメディアがどの程度普及し、そのことでどの程度の利便性をユーザーに提供できるかにかかっている。もしこれまでにないような利便性や価値を提供できるのであれば、AppleとGoogleがモバイルOSのシェア争いを続ける間に、ソーシャルメディアのほうが影響力を持つようになっている可能性は十分にあるだろう。

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