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コミュニティはメディアになる LinkedInがソーシャルニュースサイトに【湯川】

[読了時間:2分]
 メディアは本来コミュニティであり、コミュニティはメディアになりつつある。そう思ってきた。オンラインコミュニティとメディアは融合する運命にあると思ってきたので、TechWaveのコミュニティ育成にも力を入れていきたいと思っているんだけど、どうやらメディアのコニュニティ化より、オンラインコミュニティのメディア化のほうが早いのかもしれない。

 ビジネスパーソンの有力コミュニティLinkedInがニュースサービス「LINKEDIN TODAY」を始めた、と発表した

 LinkedInに参加しているユーザーは、取引先や転職先を見つける、もしくは見つけてもらう目的で参加しているので、当然のことならが実名だし、職歴なども正確に書いてある。写真も履歴書に張り付けるような正面を向いた真面目な写真が多い。mixiで言うところの「マイミク」に当たる「コネクション」も、取引先や実際につきあいのある人ばかりだ。どういう人と付き合いがあるのかということを「コネクション」を見て判断され、その結果仕事のオファーがくる可能性もある。なので、どこのだれだか分からない人を「コネクション」に加えることがまずないのだろう。

 つまり非常に「リアル」な人間関係で構築されたコミュニティが、そこに形成されているということになる。

 LinkedInをTwitterと連携しているユーザーも多く、その場合はTwitterのTweetが自分の「コネクション」の「UPDATE(Twitterで言うところのタイムライン、Facebookで言うところのニュースフィード)」として表示される。この中に含まれるニュース記事のURLなどを集計してニュースサイトを構築したのがLINKEDIN TODAYだ。

 LINKEDIN TODAYでは、幾つかの切り口で自分にとって重要なニュースを読むことができる。自分の「コネクション」の中で話題になっているニュース、自分の業界の中で話題になっているニュース、周辺の業界の中で話題になっているニュース、という具合だ。僕の場合だと、LinkedInでつながっている人がそう多くないこともあり、自分の「コネクション」の中で話題になっているニュースは、必ずしも自分にぴったりと合ったニュースではないが、自分の業界である「インターネット業界」のニュースを見ても、周辺業界としてレコメンドしてくれる「オンラインメディア業界」「コンピューターソフトウェア業界」「IT業界」などの上位記事を見ても、非常に興味をそそられる記事が並んでいる。いわゆるネタ的な記事は一切含まれておらず、仕事に関わる情報が中心になっている。これまでのどのニュース・アグリゲーション・サービスよりも優れているかもしれない。


 中でもすごいのが、自分の業界や周辺業界のだれがどの記事をどのような理由でレコメンドしているのかが分かる点だ。Tweetなどのコメントが一覧表示されるようになっている。これを読めば、どの企業がどのような方向に関心があるのかが分かる。営業マンにとっては必見の機能になるかもしれない。

 またあとで読みたい記事を「save」しておけば、iPhoneアプリで時間があるときに読めるのもうれしい機能だ。

 米国ではこうしたサービスが、経済紙・誌、業界紙に取って代わり新しいメディアになっていくのだと思う。従来型の経済紙、業界紙は、「執筆者グループ」、「編集プロダクション」、「記事のストレージ」という役割を果たすだけの組織になっていくのだろう。そして広告は、読み手が集まるメディア、コミュニティに集中することは言うまでもない。

蛇足:オレはこう思う

 これまで何度もリアルな人間関係のパワーを主張してきたけど、まさにこのサイトはリアルな人間関係のパワーを活かしたサイトだと思う。人間関係を「バーチャル」と「リアル」に分けて考えて「リアル」に集中することで、こうした新しい価値を創造することができるわけだ。米国ではLINKEDIN TODAY以外にも、これから「リアル」なソーシャルの力を利用したサービスが次々と登場してくるだろう。

 問題は日本だ。日本で今、リアルな人間関係の空間作りに力を入れているのは、mixiとFacebookくらい。まだまだ「リアルな人間関係」、業界用語で言うと「リアル・ソーシャルグラフ」は、日本では普及していない。mixi上の都会に住む20代の女性のリアル・ソーシャルグラフ、Facebook上のアーリーアダプターのリアル・ソーシャルグラフを利用したサービス作り、というのからまず手がけるべきだろう。

 それにしても、こうした動きを見ても日本のメディア企業もそろそろ大きく動かないといけない時期に来ているんじゃないかなあと思う。

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