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sinsai.info を1ヶ月やってきて思うこと【関治之】

みなさまこんにちは。TechWave のジオメディア担当、関です。

今は、仕事の傍ら、 sinsai.info という復興支援プラットフォームの総責任者をしております。

震災があった日から既に1ヶ月が経ちました。震災発生当日に sinsai.info の管理を引き継いでから1ヶ月。ひたすらサイトの改善作業に時間を費やしてきましたが、ここで1ヶ月間の活動を振り返ってみたいと思います。

今回の震災は非常に広範囲に影響し、現地でのライフラインが分断され、携帯の電波も通じない、電気も使えないと言った状況で、そのような状況に際してのITの無力さを痛感させられる1ヶ月でもありました。sinsai.info の活動を通じても、被災地域に対してダイレクトに支援ができないというもどかしい思いを常に感じてきました。
実はこの活動を通じて一番助けられたのは私自身かもしれません。現地入りしても足手まといにしかならないであろう私が、何か少しでもやれることがあるというのは、日々迫ってくる漠然とした不安感、焦燥感を忘れることにつながりました。
いまだ、どれだけの人にsinsai.infoが役にたっているのかはよくわかりません。しかし、様々なNPOの方々や現地入りをした方々にお話を伺ってみると、情報ギャップが深刻な状況にあることは確かなようです。電気や通信インフラがが復旧しつつあるこれからの時期にこそ、sinsai.info のようなプラットフォームが役に立てることがあるのではないか。そんな思いでこれからも活動を続けていきたいと思います。


sinsai.info とは?
「sinsai.info 東日本大震災 | みんなでつくる復興支援プラットフォーム」は2011年3月11日に日本で発生した東北沖地震の復興を支援するために作られました。ニュージーランド地震の際にも多方面より活用されたクラウドソーシングツールUshahidiで構築されており、ボランティアの開発者、ボランティアのデータ管理者、OpenStreetMap Japan および OpenStreetMap Foundation Japan の有志らにより自発的に運営されています。 詳しくはこちらを参照ください
ウェブサイト、メール、ツイッターから送られてくる被災地のレポートを「モデレーター:投稿されたレポートの受付/内容確認チーム」が内容を目視にて確認して公開しています。

sinsai.info は主に、以下の特徴を備えています。

今回の震災では、Twitter が安否確認などに威力を発揮した一方、大量の RT に情報が埋もれてしまったり、デマが拡散し続けたりといった特徴がありました。sinsai.info では、位置情報をつけてレポート化をすることにより、価値ある情報をフロー情報からストック情報へと変え、地図上で検索することができるようにしています。また、モデレータが検証作業を行うことにより、明らかなデマ情報やスパムツイートが極力掲載されないようになっています。

また、地図部分には Wikiライクな地図 OpenStreetMap が利用されており、震災後の地図がタイムリーに更新され続けています。
参考記事:Yahoo! Japanが”地図界のWikipedia”オープンストリートマップに地図を提供【本田】 : TechWave

sinsai.info を支えるメンバー達
非営利団体である「一般社団法人オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン」が運営主体ではありますが、sinsai.info は多くのボランティアスタッフに支えられて運営しています。登録ボランティアスタッフは200名以上で、活発に活動しているメンバーだけでもモデレータが約30名、開発メンバー約20名、翻訳スタッフ5名、その他にも法務班、広報班など様々な人々が活躍をしています。

また、Amazon 様や ヤフージャパン様、グリー様、ハートビーツ様、NTT様、E5Gamers様、アーキタイプ様、コパイロット様、マップコンシェルジュ様、ORCA-Network様を始め、多くの法人企業にインフラやスタッフをご提供いただいています。
詳しくは、運営団体についてからご確認いただけます。

オープンプラットフォーム
我々には、4つのオープンマインドがあります。
・Open Source
オープンソースソフトウェアである Ushahidi を利用したことで、震災後4時間足らずでサイトを立ち上げることができました。sinsai.info 自体もオープンなリポジトリとして公開しているため、どなたでもコードにアクセスすることが可能です。我々のボランティア活動の考え方自体、オープンソース文化に強く影響を受けています。トップダウン的な意思決定ではなく、貢献度をベースとしたボトムアップの意思決定プロセスが採用されています。(この、素晴らしい開発プロセスについては、別途記事を書きたいと思います。)
リポジトリ:http://github.com/sinsai/Ushahidi_Web
・Open Data
サイトで収集しているデータはオープンに公開されており、APIなどで自由に参照できます。また、APIでレポートを投稿することも可能です。内閣官房室連携プロジェクトである助け合いジャパンが提供するボランティア募集データの取り込みや、地図部分へのデータ提供も行なっております。また、ヤフーなどのサイトにもデータを提供しています。
(4/12 13:00 追記)sinsai.info は、IT企業と開発者による復興支援プロジェクト「Hack For Japan」にも賛同し、APIを提供しています。また、私自身も、Hack For Japan のスタッフでもあります。
・Open Collaboration
我々のスタンスは、「震災復興の為の情報プラットフォーム」であり、我々のデータを活用して様々なアプリケーションが生まれることを希望しています。既に日本Androidの会福祉部の方々により、Androidアプリケーションを開発いただきました。(Android Market へのリンク)
また、ATR-Promotions 様のiPhoneアプリ「ふぉとぶらり」でも、sinsai.info へレポートを投稿できる機能を搭載していただきました。アプリケーション的な連携意外にも、現地からレポートを送ってくださる記者や学生、NPOなどとの連携を進めていきたいと考えています。
・Open to Global
我々のサイトには155カ国からのアクセスがあります。海外のニュースサイトやテレビなどでも紹介されており、重要なレポートについては、英語に翻訳して提供しています。
ハイチ、ニュージーランドの地震、リビアの内戦のレポートでの利用などを通じて、Ushahidi は世界的に有名なプラットフォームとなってきております。今回、sinsai.info はそのような中でも最大規模の利用事例となりつつあります。今回改善したソースコードを本体にできるだけ戻すことを始め、今回の震災に対して、Ushahidi プラットフォームを使うことで何ができて、何ができなかったのか、もっとうまくやれる方法はあったのか、などといった活用ノウハウをフィードバックすることは、今後世界のどこかで災害が発生した時のリファレンスとして非常に重要な情報となるでしょう。

「クラウド型技術」が大震災に呼応する【前編】 ――災害情報を瞬時に共有する「sinsai.info」の力|逆境から生まれるイノベーション|ダイヤモンド・オンライン にて、sinsai.info の紹介をしていただいています。こちらも合わせてお読みいただけましたら幸いです。

ボランティア及び連携組織募集
もし、我々の活動に賛同いただける方や組織がおりましたら、ぜひとも御連絡いただけますでしょうか。特に、現地レポータ、モデレータ、開発者、UIデザイナー、PR担当などのリソースが足りません。
NPOの方々などにも、我々のプラットフォームを活用していただきたいと考えています。ご協力できそうなことがありましたら、お気軽に御連絡ください。
ツイッターで呼びかけていただいても良いですし、sinsai.info のボランティア募集ページからもご応募いただけます。

これからが、sinsai.info の本当の利活用の始まりです。復興には長い年月がかかるでしょう。あきらめずに長く続けることが重要だと考えています。応援いただけたら幸いです。

日夜モデレーションをしていただいているデータ班の皆様、日々運用・開発を行っている開発チームの皆様、UIデザインを考えてくれている皆様、翻訳や法務、広報活動を行っている皆様、おかげで1ヶ月続けることができました。この場を借りてお礼申し上げます。

著者プロフィール:関 治之(せき はるゆき)

sinsai.info総責任者/ジオメディアサミット主催/Georepublic Japan CEO/シリウスラボ所長
1975年生まれ。モバイルインターネット黎明期から数多くのモバイルインターネットメディアの構築に携わる。モバイルの位置情報連動広告配信サービスである「アドローカル」を提供する株式会社シリウステクノロジーズへ2006年に入社。同社の研究所、シリウスラボで所長を務める。2008年より有志による位置情報関連メディアの勉強会、「ジオメディアサミット」の運営を開始。位置情報を使ったメディア、「ジオメディア」の普及と拡大を目指し活動中。TwitterID:hal_sk

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