サイトアイコン TechWave(テックウェーブ)

予想を上回るスマホの普及とビジネスチャンス【湯川】

[読了時間:2分]

 わずか2年前のことだがIT企業の経営者300人ほどが集まったあるセミナーで「日本でもスマートフォンが主流になると思うか」という質問が会場に向けて投げられたことがある。そのときに「主流になると思う」と答えた人はほとんどいなかった。99%の人は「モバゲータウンができないスマートフォンに女子高生が移行するとは思えない」などという理由で、日本でのスマートフォンの普及に懐疑的だった。テクノロジーの動向に敏感なIT企業の経営者といえども、今日のスマートフォンの躍進ぶりを予測できなかったわけだ。

 多くの人の予想を上回るスピードで普及しているということは、多くの人がまだ準備不足ということ。つまり現状をいち早く認識し、対応することができるプレーヤーにチャンスがあるということだ。

 スマートフォンの普及に関してはいろいろと予測があるが、2015年には世界の成人の47%がスマートフォンを所有することになるというものがある。世界で47%に達するのが2015年ということは、日本などの先進国ではその時期はもっと早く訪れるだろう。

 下のグラフを見てもスマートフォンの普及だけが異常に突出していることが分かる。

 さてこの急速な普及は何を意味するのだろう。どのような変革を業界や社会に及ぼすのだろうか。今すぐにでも思いつくような簡単な可能性を下に並べてみた。


仕切り直し

 ガラケーと呼ばれる一般的な携帯電話で業績を上げていたコンテンツやサービスの提供事業者が、そのまま上位の事業者としてスマートフォン上に横滑りするとは考えにくい。

 既存の事業者が有利な点も一部ではあるだろうが、まったく新しいレースが始まると考えたほうがいいだろう。業界勢力図が塗り替わる可能性がある。

イノベーションの加速

 競争はイノベーションを加速する。ガラケーと異なりスマートフォンは世界に開かれた競争のプラットフォームである。国内の事業者だけで競争しているのとは比較にならないスピードで、モバイルサービスが今後急速に進化していくだろう。言うまでもなく日本はモバイルアプリケーションで世界の最先端を走っている。それは事実だ。しかしうかうかしていると日本のリードは、ここ1、2年以内に簡単に抜かれてしまうだろう。

海外事業者の参入と国内事業者の海外進出

 モバイルは世界に開かれたプラットフォームなので、海外の事業者が参入してくる。国内の競争が激化するだろう。その一方で、国内事業者にとっては海外進出のチャンスでもある。下のグラフは主にモバイルを使ってインターネットを利用する人の国際比較だ。エジプトのモバイルユーザーの70%、インドのユーザーの59%はパソコンではなくモバイル機器でネットを利用しているのが分かる。世界には非常に大きなビジネスチャンスが待っていることが分かる。

オンライン経済がオフライン経済を飲み込む

 これまでオンライン経済とオフライン経済はまったく別物だと思われていた。ECサイトの総売上は、リアルな店舗の総売上と比較すればまだまだ微々たるもので、楽天などのECサイト事業者はイオンなどのリアルな店舗の事業者とは全く別の業態だと思われていた。しかし半分の大人が2、3年以内にスマートフォンを所有するのであれば、オンラインとオフラインの境目はほとんどなくなるはず。オンラインで買おうと検索している商品が近くのお店に在庫としてあることが分かれば、すぐにほしい場合は近くのお店で購入する。もしくは反対に近くのリアル店舗で商品を購入しようとしたけれども気に入った色やサイズがなかったのでその場でオンラインで注文する。こうしたオンラインとオフラインを自由に行き来する消費者が増えるだろう。

 オンラインとオフラインが融合するわけだ。

 しかし融合するだけではない。モバイル機器は肌身離さず持ち歩くもの。GPSを始め各種センサーを搭載しているのでより多くのデータを集めることが可能。そうして得た莫大なデータを解析し、一人一人の消費者に合った商品やサービスをタイムリーにレコメンドしてくれるようになる。つまりイメージ的には、オンラインの消費活動の一部としてオフライン消費が組み込まれる形になるのだろうと思う。オンライン経済がオフライン経済を飲み込むという形容のほうがしっくりくるようになるのではなかろうか。

 こうした変化が2,3年から、4,5年先にくる。デジタル情報革命の波は次々と押し寄せる。ソーシャルの次の波は、スマートフォンの急速普及が引き起こす消費活動の変化になるのだと思う。

【お知らせ】
 この変化の波に備えるべく、第6期TechWave塾は「スマートフォンの普及が変えるオフライン経済」をテーマに開催したいと思います。シリコンバレーで開催された位置情報系カンファレンス「where2.0」で入手した世界の最先端の動きに関する情報をベースに、わたしが今後の可能性について講義するとともに、モバイル系ビジネスでビジョナリー的な動きをしている人たちを講師に招き少人数で徹底的に議論する勉強会です。6月16日(木)午後7時から都内の会議室を借りて、毎週木曜日に開催します。7月21日までの6週間です。現在、講師の候補者との交渉を始めましたので、近く詳細を正式発表できると思います。TechWave塾はおかげさまで毎回好評をいただいており、定員を超えるお申し込みをいただくことが多くなりました。お席を確保するためにはお早めに申し込まれることをお勧めします。お問い合わせ、お申し込みは、湯川、tsuruaki@gmail.comまで。

TechWave塾・6期生募集要項

モバイルバージョンを終了