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ソーシャル時代のアーティストサイトの在り方【高野修平】

[読了時間:2分]

昨日の伊藤さんによる、クラウド音楽サービスの可能性と課題に引き続き、今日は高野修平さんによる『共有』の場としてのアーティストサイトの在り方について寄稿してもらいました。(本田)


高野修平
(@groundcolor)

 さて、今回はアーティストサイトやレーベルサイト、フェスサイトの在り方について書いていきたいと思います。量が多くなるので、今回はアーティストサイトの話になります。

 世の中の流れが『所有』から『共有』へ移行し、音楽に対するお金の使い方は『場』へ変わってきていると書いてきた。

 音楽ビジネスが復権していく上で、ソーシャルメディアと共有される音楽サービスの連携が重要で最終的な『リアルな場』こそが鍵になる。そのなかでアーティストサイトはどうあるべきなのか。

 日本のアーティストサイトをいくつか見てみた上で、ピックアップしてみて感じたことは、ほとんどのアーティストサイトが『ただの情報発信サイトである』ことだ。CDがたくさん売れていた時代のサイトみたいに感じる。

 結論から言えば、アーティストサイトはあらゆる情報のハブ、つまりターミナルになるべきだと思う。発信するだけでなく、つなげる。同時にこの場所でまとめる。外に広げながら、外のものを取り入れる。『共有』される広場を創りだす。

 ただ、注意しなければいけないのは、
『誰でも知っているアーティスト』
『誰でもは知らないが一定数の固定ファンがいるアーティスト』
『これから認知をさせていくアーティスト』
の3パターンだ。

 同時に『日本市場か、アジア市場か、世界市場か』によっても変わってくるだろう。この3×3のパターンで考えるとそれぞれサイトの在り方は変わってくる。


 『誰でも知っているアーティスト×日本市場のアーティスト』例えば、Mr.Childrenのサイトはどんなもんかいうと

 上記+ファンクラブコンテンツがあり、ほぼ情報発信のみのサイトである。稀に桜井さんからのメッセージなどのコンテンツが掲載されたりするが、基本的には情報発信のみである。

 『誰でも知っているアーティスト×日本市場+世界市場のアーティスト』宇多田ヒカルを見てみよう。

 日本語版、英語版ともにtwitterやyoutubeへの導線はあるが、基本的には情報発信である。外へ広げてはいるが、外のものを取り入れてはいない。

 『誰でもは知らないが一定数の固定ファンがいるアーティスト×日本市場アーティスト』サカナクションの場合

 基本情報+ustream番組の案内、ビデオ、ブログ、ブログパーツなどMr.Childrenや宇多田ヒカルに比べていろいろ組み合わせてやっている印象だ。外に広げながら、外のもの部分的に取り入れている。

 やはりインディーズなどのアーティストはメジャーに比べていろいろと行っている。海外でも人気の日本人3人組のガールズノイズバンド『にせんねんもんだい』はボタンではあるが、facebook,myspace,twitter,bandcampと連携している。また、市場をどこに設定するかによって参加するソーシャルメディアや音楽サービスは変わる。日本アーティストの一般的はmixiやアメブロ(ブログ)、twitterなどが主流かもしれない。

 同時に各ソーシャルメディアに導線とアカウントがあればいいってものでもない。そのへんはまた今度。

 つまり、日本市場メインのアーティストサイトの場合の多くが情報発信のみで終わっていて発信するだけでなく、つなげる。同時にこの場所でまとめる。外に広げながら、外のものを取り入れるという例がないのだ。

 これからの時代は『所有』ではなくなってくる。そのなかで無料で享受できる音楽サービスやソーシャルメディアが無数にある。それとどう付き合っていくか。

 アーティストサイトの中であらゆる無料の音楽サービス、ソーシャルメディアを選定し、連携し、導線を生み出し、『共有』されるように音楽を提供する。文字と音と映像あらゆる角度からアーティスト、楽曲を訴求する。

 今以上にもっともっと今存在する音楽サービスやソーシャルメディアを利用して無料の音楽を提供できる環境を整えるべきだ。つまり、アーティストサイトのソーシャル化だ。

 同時にきちんと『共有』されるように、導線だけでなく、そのサービスの紹介を加えるべきだ。誰でも知っているサービスならまだしも多くの音楽サービスの認知率は低い。『共有』される仕組みを作るには、『共有』できるサービスの認知を上げることが必要だ。そこでは何が出来るのか。どういうサービスなのか。

 例えば、海外のアーティストでアイスランドのバンドSigur RosのヴォーカルのJonsi(ヨンシー)のソロプロジェクトにおけるアーティストサイトはとても多くのソーシャルメディアと連携している。彼は『誰でもは知らないが一定数の固定ファンがいる×世界市場のアーティスト』に入るだろう。個人的には彼のサイトにもっとその場で見える形(PVやライブ映像)を取り入れるものがあればいいのになと思う。特に彼のような凄まじいライブをする場合なら尚更だ。

 ちなみにfacebook,twitter,youtube,vimeo,flikr,soundcloud,myspace,last.fmと連携している。もちろんアカウントはjonsiのものなので、アーティスト主導で行っているわけだが、文字、音、映像、写真をフル活用している点が注目に価する。

 またグローバルナビに『ソーシャル』を設置し、際立たせている。とにかく至る所に音楽や映像を設置している。無料ダウンロードもよく行われている。

 誰でもどこでも聴けるように。同時にアーティストサイトからどこへでも行けるように。中から外へ。外から中へ。

 もちろん世界市場だからこそ、できるというのもあるかもしれないが、日本市場に限ったことだってできるはずだ。

 こういったサイトのソーシャル化を目指し、ゆっくりファンを創りだしていく。『共有』されアーティストないし、楽曲に『共感』してくれるような場所にする。その中心点はやはりfacebookでもmyspaceでもなくアーティストサイトだと思っている。ここがやはり基幹だ。

 入口をたくさん設け、出口もたくさん設ける。けれど、この場所でも十分に享受できる。国際線の空港のように。ソーシャルターミナルという位置づけだ。

 次回はそのへんを書いてみようと思う。

 ご意見などございましたら、頂けると幸いです。

編注:このエントリは、著者による連続した投稿の一部です。

著者プロフィール:高野修平

1983年生まれ。ソーシャルメディアマーケティング支援会社トライバルメディアハウスに所属。
ソーシャルメディアと音楽ビジネスの未来を考えています。
変化していくコミュニケーションスタイルや方法を考えながら、自分ができることから始めたいと思っています。twitterアカウントは@groundcolor

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