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池見幸浩
ソーシャルリクルーティングとは
ソーシャルリクルーティングという言葉をご存知でしょうか?
ソーシャルリクルーティングとは、企業活動上、最も重要である「人材採用手法」において、SNSを活用した採用手法を意味します。つまり、企業が人財を採用するための方法の一つです。
2011年5月は、米Likedinの上場により、有象無象の新サービスがグローバル規模で生まれ、ソーシャルリクルーティングという概念が若干ながら日本国内でも話題になった1ヶ月でしたが、一体世界ではどの程度利用されているのでしょうか?
企業の73.3%が、採用活動に広義のSNSを活用。
この数字は、JOBVITE社が2010年春にアメリカの採用業務の関係者600人以上に対して調査した、企業におけるソーシャルリクルーティングの活用度に関するデータです。アメリカではすでに採用活動において、ソーシャルリクルーティングが一般的な手段の一つとなっていることがこのデータから読み取れ、「ソーシャルリクルーティングを知らない」と回答した人は、全体のたった3.5%という結果から如何にその認知度が高いかを読み取ることができます。
では、なぜ、ソーシャルリクルーティングという採用手法がここ最近注目されるようになったのでしょうか。
求人情報は100年でどう変わったのか?
突然ですが、皆さんは以下の求人広告をご存知でしょうか?
MEN WANTED for Hazardous Journey.
Small wages, bitter cold, long months of complete darkness, constant danger, safe return doubtful.
Honor and recognition in case of success.Ernest Shackleton
「求む男子。至難の旅。
僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証無し。
成功の暁には名誉と賞賛を得る。アーネスト・シャクルトン」
これは約100年前に公開された、おそらく世界で最も有名な求人広告と言われているものです。それから100年近くの間、基本的には「企業が求人募集を媒体に出し、求職者が応募する」という採用手法は大きく変化はしてきませんでした。
しかし、インターネットの普及により求職者が収集できる情報量は何億倍にも増え、人の趣味趣向は年々細分化され、仕事・ライフスタイルに対する考え方も多種多様になりました。
さらにはYahoo!を始めとした「Portalの時代」、Googleに代表される「Searchの時代」、そしてFacebookの「Socialの時代」と、インターネットの歴史そのものも5年周期で3つの大きな変化を迎え、その変化に連動する形で個人の就職/転職活動と企業の採用活動の手法も大きく変化してきました。
日本の変化が遅れた3つの理由
そのような中、日本おいてはSNSを活用した採用手法がなかなか普及しなかった事実があります。その理由は、大きく3つあると考えます。
1 実名登録SNSへの抵抗
2 転職活動に対する文化の違い
3 人材ビジネス企業の充実したサービス
しかし、2010年から上記の理由を取り巻く環境は大きく変わり始めたと言われており、その変化の要因は、デジタルネイティブ世代の社会進出や、思想の欧米化、そしてFacebookを始めとしたSNSの認知度アップなどによるもので、少し遅ればせながらも、日本国内にもソーシャルリクルーティングという採用手法の下地ができてきたのです。
ソーシャルリクルーティングという言葉
海外では、SNSを活用した採用手法はすでに定着しています。Linkedinは2004年に設立されていますし、ドイツのプロフェッショナルネットワークサービスであるXingはフランクフルト市場で初めてのインターネット銘柄としてすでに2006年に上場しています。
しかしその一方で、SNSを活用した採用活動そのものを表す呼称は、いまだ確立されていません。例えば、「ソーシャルリクルーティング」という言葉でさえ、下記のGoogle Trendsからも分かるとおり、まだまだ若い言葉です。
その他にも、同様の概念を意味する以下のような様々な呼称がその地域、企業によって活用されています。
Social Networking Recruitment
Social Networking Recruiting
Social Media Recruitment
Social Media Recruiting
Social Hiring
今後呼び名は違えど、世界中で様々な手法や可能性が模索され、発展していくかと思いますが、これから企業がソーシャルリクルーティングという採用手法を活用することで、どのような未来が待ち受けているのでしょうか。
・今まで出会えなかった、国境、国籍を超えた候補者と出会える。
・数十倍の効率で、可能性ある学生と出会える。
・驚くほどの低コストで、可能性ある候補者と出会える。
・従業員の友達から、候補者を簡単に探すことができる。
・今すぐに採用しない候補者とも、良い関係を継続できる。
・ご縁ある退職者の出戻りが、飛躍的に増える。
・信頼できるか、風土に合うか、簡単に予想できる。
・退職率を、大幅に改善できる。
・海外での採用活動を、今すぐ始めることができる
これらすべてを、ソーシャルリクルーティングが「きっと」可能にしてくれます。
弊社では、実験として1年前から採用媒体を一切活用せず、Facebookのみ活用した新卒採用を実施しましたが、その結果、非常にターゲティングされた学生102名から応募いただき、外国語の素養のある学生が40%、結果的に上位校からの応募が40%という実績に加え、今までアプローチできなかったASEANや、トルクメニスタン、ブルガリア等の海外名門校からの応募もいただくまでになり手応えを感じました。(たくさんの失敗もしましたが、、)
また、Facebook内で採用活動をしている企業のファン数ランキングの新卒採用の企業ランキングにおいて、弊社のページが国内5位にランクインし、現在もありがたいことに新規でファンとなってくださる方から毎日のようにご連絡をいただいています。
さらに、他の企業様のページを見てもファン数が日に日に増え、何より、参画する企業様も業種・企業規模関わらず多くなってきていることからも今後の人材採用手法の一つとして定着していくのであろう様子がうかがえます。
その成果をもとに、弊社でFacebookページに採用情報を簡単に掲載することのできる「ソーシャルジョブポスティング」というアプリを2011年1月から提供を開始いたしました。このアプリを利用することで、企業様のFacebookページに見やすい採用情報を簡単に掲載できるだけでなく、応募フォームから応募を受け付けることができます。応募者のFacebookアカウントにリンクが張られて応募者との関係を維持できますし、採用情報が応募者のウォールなどを通じて広く伝播していくことにもなります。現在、既に339社に導入していただいており、その53%が海外ユーザーということで、国内外の皆様のソーシャルリクルーティングにご活用いただいております。
もちろん、世界的に見てもまだまだ発展途上の段階ですが、ソーシャルグラフのみならず、趣味趣向、興味、関心としてのインタレストグラフ、個人や企業のアカウント情報、書き込み、チェックイン情報含めたライフログなどすべての情報を活用することで、人と企業の出会いの可能性を最大化させるソーシャルリクルーティングが、日本を元気にします。
株式会社garbs 代表取締役。
株式会社grooves 代表取締役。
2004年3月に3,000社以上が利用する国内最大の人材紹介会社向けのマーケットサイト「人財紹介net」の企画・運営を行なう株式会社groovesを設立。
2011年1月には国内初のソーシャルリクルーティングサービスの企画・運営を行なう株式会社garbsを設立。
現在、グループで世界19ヵ国、約3,500社のユーザーへインターネットサービスを提供している。
http://www.social-recruiting.jp/
http://twitter.com/Social_JOB
もちろん就職活動は大きく変化すると思う。履歴書一枚には到底書ききれないほどの候補者の属性や適性がソーシャルメディアから読みとることが可能だし、「類は類を呼ぶ」と言われるように一人の優秀な候補者を確保できればその友人関係を通じてさらに多くの優秀な候補者を見つけることができるようになるだろう。リクルーティングを通じて社会と企業の絆を強めることも可能になるだろう。
しかし可能性はそれだけではない。ソーシャルリクルーティングを通じてより正確な自己申告のユーザーデータがソーシャルメディア上に上がってくることになる。
実名やリアルな人間関係のネット空間(リアルソーシャルグラフ)のほうが、どこのだれだか分からない人と繋がっているバーチャルなネット空間(バーチャルソーシャルグラフ)よりも、コミュニケーションが活発に行われるということを実感する人が増えてきているが、ソーシャルリクルーティングは今あるリアルソーシャルグラフの中で最も属性データが正確なリアルソーシャルグラフを作り上げることになる。その正確な属性データを利用したサービスが今後多数出てくることになるのだと思う。
例えば今既に登場しているものに、LinkedInのソーシャルニュースサービスがある。ユーザーのおすすめのニュース記事を業界ごとにまとめているサービスだ。LinkedInのユーザーは自分の所属する業界を正確に申告しているので、ユーザーが「お気に入り」した業界ごとのニュースは、本当にその業界関係者にとって「必読」の記事の集まりになっている。僕自身も利用しているが、ここまでノイズの少ないニュースサービスはこれまでに見たことがない。本当に使い勝手のいいサービスになっている。これもLinkedInが正確なリアルソーシャルグラフを持っているからだ。(参考記事:コミュニティはメディアになる LinkedInがソーシャルニュースサイトに【湯川】
同様に、日本でもソーシャルリクルーティングを通じてより正確なリアルソーシャルグラフが確立するようになるのだと思う。そうなれば、さらにいろいろな便利なサービスが生まれてくるのではないだろうか。そんなふうに期待している。