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Miloのサイトにアクセスすると、住所を聞かれるので試しにSan Franciscoと入力してみた。
サンフランシスコ市内のリアル店舗で販売されているいろいろな商品が表示された。Google TVが表示されたのでクリックしてみると、同市内の店舗における販売価格と在庫の有り無しが表示された。SonyのGoogle TVの46インチが、1つの店では1399ドルで販売されているのに、他の店では1199ドルで販売されていることが分かる。
安いほうをクリックすると、大手家電量販店チェーンのBest Buyの価格だった。同市周辺のBest Buyの9店舗には在庫があり、1店舗は在庫切れになっていた。Miloは、地元のリアル店舗で購入したい人のための情報サイトなので、このサイト上で購入する仕組みにはなっていない。
Milo上で在庫情報を確認できるリアル店舗は、Best Buy以外だと、大手デパートのMacy’s、Sears、JCPenney、NORDSTROM、家具のIKEA、おもちゃのトイザらス、ホームセンターのThe Home Depot、本屋のBorders、雑貨のCrate&Barrel、靴のFamous Footwearなど、大手の小売チェーンのほとんどが名前を連ねている。Miloによると、全米約5万店のリアル店舗の在庫情報を検索できるようになっているという。
どのように大手小売チェーンの在庫情報を取得したのだろう。
1つには、米国の小売大手自らが自社サイトで各店舗の在庫情報を既に表示していた、ということがあるのだろう。地元の店に足を運んで目当ての商品が在庫切れだった場合、消費者に悪いイメージを与えることになりかねない。それなら在庫があるのかどうか、ないのだとしたら在庫のある近隣の店舗を知らせるほうがいい。それこそが顧客サービスだと、米国の大手小売チェーンは考えるのだろう。
そして既にネット上に公開している情報なので、Miloが集めてきて表示しても問題がない。そういうことなのだろうと思う。
しかしMiloに表示されると価格比較が簡単になり、価格競争が激化する。小売店はそれでもいいのだろうか。
同様の疑問は、数年前に日本でもよく耳にした。Googleに検索されると、最安値でないことが一目瞭然となるので検索されたくない、大事なコンテンツなので例えその一部であろうともGoogle上に表示されたくない、というようなことをいう人がいた。しかし今日、そんなことを言う人は、ほとんどいない。Googleの検索結果に表示されないことは、ネット上に存在しないのと同じことを意味することをだれもが理解したからだ。反対にGoogleに検索されやすいようにするにはどうすればいいのか、とみなが頭を悩ませるようになっている。
同じようなことが米国ではMiloに対して起こっているのだろう。消費者の多くがローカルのリアル店舗の在庫・価格情報の検索をMilo上で行うようになれば、Milo上に情報がなければ商品が売れなくなる可能性がある。ebayがMiloを買収し、ebayが買収した複数のベンチャー企業が提供する各種アプリにMiloの情報が次々と載っていけば、その傾向はますます強くなる。Googleで検索できないのであればネット上に存在しないのも同じ、というような感じで、Miloで検索できない商品は存在しないも同じ、という感覚になりつつあるのだろう。
Miloはこのほど、中小の店舗向けにPOSシステムとのデータ連携を可能にするプログラムfetchを開発した。fetchをPOSシステムにインストールすれば、fetchが15分ごとにその店舗の最新の在庫データを自動的に入手、Miloのサイト上に反映させることが可能という。現在はQuickBooksと呼ばれる大手POSシステムとだけデータ連携が可能だが、今後他社製のPOSシステムとの連携も可能にしていく計画という。
Miloに在庫データを自ら載せたいという店舗向けのプラグラムである。こういうプログラムを開発したことから見ても、米国の小売業者の多くは「Milo上にデータを出すほうが得」という考え方に既になっているのだと思う。
さてMiloを買収したebayのサイトではMiloをどのように取り込んでいるのだろうか。以下がebayのページだ。
複数のタブが表示されている。「新品」①「中古」というタブに混ざって一番最後に「ローカル」②というタブがある。ここにMiloの情報が表示されるわけだ。この図は「新品」のタブが開いているが、新品で最安値が210ドルとなっている③。これは新品でもオークションの価格だ④。オークションが終わるまで待てなければ、いますぐにECサイトで購入することも可能だし、ECサイトから商品が郵送されてくるのでさえ待てないのであれば「ローカル」のタブを開いて地元のリアル店舗で在庫を確認してその日のうちに購入することも可能。消費者にいろいろな購入方法の選択肢を提供しているわけだ。
もはや消費者にとってオンラインもオフラインも関係ない。いろいろな購入の選択肢を簡単に比較できる状況になりつつある中で、消費者はリアル店舗を何を求めるのだろうか。新しい消費行動にリアル店舗はどのように対応すればいいのだろうか。リアル店舗に戦略の転換を迫るO2Oの波が日本に押し寄せるのも、そう遠い将来ではない。