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黒沼透
Google+の使用感や機能については、おそらく何処かの早いブログで解説が行われていると思うので、あっさりとだけ触れます。それよりも、今回のGoogle+の登場を通して、Googleが今後目指しているであろう方向性について、考え至る部分があったのでまとめました。
全体のざっくりとした特長
Google+では、ソーシャルグラフ管理に新しいシステム「Circles/サークル」が採用されています。サークルという概念は、多数あるものをグループ分けするのとはちょっと違って、一人の人物を複数のサークルに登録することも可能です。会社の同僚のAを、「友人」サークルに入れることも、「仕事」サークルに入れることも可能です。このへんは、Twitterのリスト機能と近い気がします。いいとこどりですね。
さらに、新機能の「Sparks/スパーク」ですが、これは「はてなブックマーク」などの、ソーシャルプラグインとかなり使用感が近いです。興味のある言葉を登録すると、ある程度選別された「ネタ情報(ニュース)」が集まります。決して、単純にGoogleの検索結果が表示されるわけではなく、ネットで話題になっている記事やニュースなどの「ネタ情報」を読むことができます。この機能があるおかげで、Google+を離れることなくユーザーは興味のある情報にアクセスできます。
といった具合で、FacebookをGoogle流にカスタマイズした使用感で、完全実名といった縛りもなく、さらにサービスとしての完成度も高いためSNSとして一定の利用者数は獲得できるかもと考えてます。何しろGoogleがメインの検索エンジンな人(もしくはGoogleの提供するサービスを日常的に使っている人)にとっては、常にページの最上部に、黒い帯とともにGoogleのサービスナビゲーションが出るのだから、Google+のアクセスのしやすさといえば、ほかのSNSを圧倒してると言っていいでしょう。
Googleが目指すゴール
今回のGoogle+のリリースを知ったとき、最初に考えたのが、「Googleは表面的なSNSとしてのサービス自体よりも、そこで集まるデータがほしいんじゃないか」ということでした。Googleは2009年より、検索結果のパーソナライズをずっと進めていて、今日現在ユーザーがGoogle検索して出てくる検索結果は、同じキーワードで調べていても、個人によって違うものになってます。検索履歴や、Googleのサービス群の利用履歴から、関連性の高そうな項目を優先的に上位に表示しているため、それだけ正確な検索結果が出せるというわけです。
僕は、Googleが目標としているのは、この検索結果のパーソナライズをGoogle+で得たソーシャルグラフ・個人特性をもとに、さらに最適化したかたちに進化させることだと考えています。
そう考えると、Google+の新機能はパーソナライズにとって魅力的な材料でいっぱいです。プロフィールでの個人情報に始まり、「ストリーム」では個人のリアルタイムでの位置情報付きで活動履歴を取得できます。「+1」と「Sparks/スパーク」を通して個人の興味傾向を集め、「Circles/サークル」を通して、友人知人関係まで把握できます。Facebookと違って、完全実名制にこだわらず匿名性を許可した状態でサービスインしたのも、とりあえずの普及が重要で、Facebookほど実名での振る舞いを重要視する必要がないからだと考えられます。
これだけの情報があれば、かなり個人に合わせた検索結果が表示できそうです。同時にAdwordsの内容も、ずっと洗練されるでしょう。究極まで洗練された広告システムは、きっとユーザーの意を汲みとって動いてくれる完璧なコンシェルジュと変わらない。そこまで来るとユーザーはGoogleというサービス名を意識することなく、今よりもっと日常としてGoogleを利用するでしょう。そのころGoogleは、ユーザーに寄り添う空気のような存在になっているはずです。
そんなGoogleの未来、あなたは「心地良い」と感じますか?「不気味だ」と感じますか?
ソーシャルメディアプランナー/デザイナーソーシャルメディア上でのクリエイティブ制作のポイントなどを解説。ユーザー間のコミュニケーションを円滑にするテクニックや、システム仕様変更時の対応策などを、いち早くお届けします。
ソーシャルメディアインサイト(http://www.actzero.jp/social/)
株式会社アクトゼロ – ACTZERO Inc.(http://www.actzero.jp/)
個人的にはGoogle+にほとんど興味がないんです。何人かから招待状らしきメールが送られてきたように思うんだけど開かずにアーカイブしちゃったし。
デザインがいいので日本で流行るって意見もあるみたいだけど、さあこれからSNS始めるぞっていう場合ならそうかもしれないけど、もうFacebookの中に自分の大事な人間関係が構築された人にとってはちょっとしたデザインの変更くらいで新しい空間には移動しない。つまりアーリーアダプターは今さらFacebookからGoogle+へ移動しないと思う。
で、もっとマスに近い層、20代の女性とか、はmixiでの交流がますます盛んになっているので、ここにもGoogle+は食い込めないんじゃないだろうか。
その中間の層、極端なアーリーアダプターじゃないけど、mixiユーザーでもない層。つまりまだFacebookはそれほど使ってなくてGoogleのサービスが中心の層には、確かにGoogle+は魅力的に映ると思う。でもそうした中間層は、いずれアーリーアダプターに引きずられる形でFacebookが中心になると思う。
Googleの目指しているところは、黒沼さんの言う通り。今後ますますいろいろなデータがソーシャルメディアの周辺に出てくるわけで、それを入手できないままだとGoogleの検索エンジンはまじでやばくなると思う。
検索だけじゃない。Gmailだってそう。事実、僕の周辺の超アーリーアダプター層の人たちはメールではなくFacebookのメッセージでコミュニケーションすることのほうが増えている。メールは初めての人とだけ、まだ人間関係が構築されていない人とだけのツールになりつつある。
ちょっと乱暴な例えだけど、GoogleとFacebookの関係って、水産業の専門新聞社と築地の魚市場のような関係に似ている。今まではGoogleという水産業の専門新聞社が各地に記者をおいて漁港の情報を集めて各地に流していたのが、築地にFacebookという市場ができて、漁業関係者がみんなそこに集まり自分たちで情報交換し始めたようなもの。専門新聞って便利だけど、魚市場の生の情報のほうが価値が高いよね、ってみんなが感じ始め、専門新聞の相対的価値が低下しつつある。今はそんな感じかも。
しかも魚市場の周辺には、牛丼屋などのビジネスが数多く成立し始めた。
そう、これからのビジネスはコミュニケーションの場の周辺に成立するようになる。位置情報サービスもビデオチャットも、それ自体は収益をあまり期待できないんだけど、その周辺に収益性の高い事業が成立する可能性が高い。そのことをみんな分かっているので、コミュニケーション系のサービスが今、高値で買収されているんだ。だからGoogleも、どんなことをしてでもコミュニケーションの場がほしいのだと思う。
でもFacebookの真似をしている間は無理じゃないだろうか。だって時代はFacebookの次にもう動き出したのだから。スマートフォンの急速な普及が、今またパラダイムを移行させようとしているからだ。
僕はFacebookの次の覇者は、パソコンを無視してスマートフォンに最適化したコミュニケーションツールを制した者になると考えている。だってパソコンユーザーとは比較にならないほど数が多く、よりマスに近い層のユーザーをスマートフォンは抱えることになるのだから。
既にパソコンユーザーを多く抱えるFacebookもGoogleも、パソコンユーザーを無視したサービスは絶対に作れない。せっかく無数のユーザーという資産を抱えているのだから、その資産を有効活用するのは当たり前の話。ベンチャー企業と同列にハイリスク・ハイリターンの賭けはできない。
なので今後もパソコンでもスマートフォンでも使えます、というサービスを出してくる。しかしそれでは勝てない。今ごろどこかのガレージの中で、Facebookの次の覇者になろうと、熱病にでもおかされたかのようにパソコンのキーボードを叩き続けているやつがいる。そうしたやつらが開発するスマートフォンだけに最適化されたサービスの中に、今後のマスに近いスマートフォンユーザーのコミュニケーション欲求にぴったりとくるサービスがあるかもしれない。FacebookやGoogleのサービスは、そうしたサービスには絶対に勝てない。
盛者必衰の理。未来は、FacebookにもGoogleにもない。