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僕は1985年から2000年までの15年間、サンフランシスコ周辺に住んでいた。そのころはシリコンバレーといえばサンフランシスコから車で1時間ほど南下したサンノゼ市周辺がその中心地と認識されていた。ところが2005年にYouTubeが産声を上げたのは、サンノゼよりもサンフランシスコ寄りのSan Mateoという町だった。
シリコンバレーとは、実在する自治体の名称ではなく、カリフォルニア州北部のテクノロジー企業が集積している地域の俗称。なので著名なテクノロジー企業が新しく登場するたびに、人々の中でのシリコンバレーと呼ばれる地域の境界線が移動する。僕は一時期San Mateoに住んでいたことがあったので、YouTubeが注目を集めるようになってSan Mateoがシリコンバレーの北端と認識されるようになって、なんとなく嬉しく思ったことを覚えている。(ちなみに増田副編集長も偶然、同時期にSan Mateoに住んでいた)
ところが今回のシリコンバレー取材で感じたのは、シリコンバレーの境界線がさらに北上しサンフランシスコまでもがシリコンバレーの一端とみなされるようになっているということ。いやさらに言えば、サンフランシスコこそがIT業界の中心地になっているという事実だった。
今回取材したテクノロジーイベント「TechCrunch Disrupt」に登壇したEd Leeサンフランシスコ市長によると、同市には1503社のテクノロジー企業が既に存在するという。テクノロジー業界の就業人口は約2万8000人。サンフランシスコの人口は約80万人だから、かなりの割合の住民がテクノロジー企業に勤務していることになる。
確かに町を歩いていてたまたま聞こえてくる住民同士の会話の中に「オレの彼女がFacebookに勤めていてさ」とか「こないだTwitterへ行ってきたんだけど」などというフレーズが普通に交わされている。
10年前までは倉庫街で夜になると治安が悪いと言われていたSouth of Marketと呼ばれる地域はものすごい勢いで再開発が行われている。訪れたオフィスの壁には、同地域に存在するテクノロジー企業の分布図が貼られていた。シリコンバレー在住のある日本人は、「シリコンバレーの中心は完全にサンフランシスコに移りました。それなのに今だに大手日本企業は南のほうに事務所を構えようとする。大企業は動きはどうも一周遅れになりがちですね」と語っていた。
さて地元新聞社のサンフランシスコ・クロニクルがあったビルには今だにサンフランシスコ・クロニクルの看板が上がっているものの、中は創業間もないスタートアップ企業が同居するCo-Working Spaceと呼ばれるオフィスになっていた。また市内の日系アメリカ人コミュニティーだったジャパンタウンにあった邦字新聞社「北米毎日新聞社」はすっかりおしゃれなオフィスビルに生まれ変わり、ここもやはりスタートアップ企業のためのCo-Working Spaceになる予定だという。町のあちらこちらにある新聞の自動販売機はカラのものが目立った。売り切れているわけではない。多くの新聞が廃刊になったのだ。
新聞記者からテックブロガーに転身した自分としては、なんとも感慨深い時代の急速な変化である。