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アメリカ西海岸にある“500 Startups”での出会い、学んだこと 【三橋ゆか里】

[読了時間:3分]

スタッフブロガーの三橋ゆか里さんが500 startups(アーリーステージ企業への比較的少額の投資やアクセラレータープログラムを運営。2010年の創設から既に150社近くに投資。)を訪問してきました。気になるサービスだけでなく、彼らの息遣いも聞こえてくるレポートです。(本田)

三橋ゆか里
(@yukari77)


 ちょっと前にサンフランシスコに行って色んな人に会ってきたよ。シェアオフィス“Parisoma”で開催されるPR for startupsというというクラスに参加したり、Sillicon Valley New Tech(SV New Tech)に出てみたり。

 中でも、西海岸でメジャーなインキュベーション“500 startups”での時間が本当に楽しかった。Caltrainという電車のMoutain View駅から徒歩10分くらいのところにあるのだけど、オフィスに遊びに行っただけじゃなく、その後みんなで韓国料理を食べに行ったりしてゆっくり時間が過ごせた。今回はそんな500 startupsで出会ったサービスや聞いた話について。

ヘッドハンティング

 500 startupsの特徴は面倒なエントリープロセスがないこと。ヘッドハンティングみたいな感じに面白いスタートアップに直接声がかかるみたい。今回特に話をしたサービスは主に4つだけど、Dave(500 startupsの創設者Dave McClure)とか他のメンターから声がかかったって言うチームが多かった。メンターだけで150人以上いて(Cookpadの堀江さんもいらっしゃる)、Daveの元に話がたどり着くまでにかなりのフィルタリングがかかっているから。そこまでたどり着いたらもう後はジョインしてもらうだけって感じなんじゃないかな。

Twitterで声がかかる?なんせ早い

 今回そもそも500 startupsに会いに行ったのはSnapetteというおしゃれな靴やバッグの写真共有サービスの創業者に会いに行くため。2人ともハーバードビジネススクールを卒業した才女で、わたしがサービスをブログで紹介したことがきっかけて話始めて今回直接会ったの。彼女たちはなんとツイッターで話かけられたんだって。2日後にはもう500 startupsのインタビューにきてその場で話が決まったそう。別のスタートアップも2日で口座にお金が入金されてたって言うからすごいスピード。

今回出会ったスタートアップ

 特に話をしたのはこの4つのスタートアップ。他にアメリカ版の「みんなのウェディング」的なサービスをやっている人とかもいた。彼らは3ヶ月プログラムを「クラス」と呼ぶみたいで、最近3回目のクラスのスタートアップが決まったばかり。初回は12社くらい、2回目が20社強、3回目も同じくらいの数が決定。SnapetteやAppgrovesは初回クラスの出身だけれど、人数が1、2人だけなのでまだ残れているみたい。ビルのワンフロアだけだから、人数が3、4人以上になると長くは残れないっぽい。新しい人たちもどんどん入ってくるしね。また別途サービス紹介の記事を書くと思うけど、まずは簡単に4つのスタートアップを紹介するね。

“Snapette”

 今回そもそも会いに行った2人、SarahとJinheeが“Snapette”の創業者。身の回りの可愛い靴やバッグを写真に撮って共有するサービス。米国のユーザが多いけれど、なんとパキスタンのユーザも多いんだとか。たぶん女性が目以外を隠す文化だから、実際に見につけられなくても世界中のおしゃれなアイテムを見て楽しんでいるのかも。そういえば映画SEX AND THE CITY Movieでもそんなシーンがあった気がする。

 アプリを試してみるとわかるけど、世界中のハイブランドの靴やバッグを店頭で撮ってる写真が多い。日本だとこれをすると店員さんが声かけてきたりするからやりにくいんだけど…この点はSarah達も認識していて、今後はもっと幅広いアイテムが共有されるようになるといいなって。ディスカバリー(発見)を提供するサービスになりたいそう。

 特にハイブランドの写真を共有するっていうコンセプトはなかったけど、蓋をあけてみたら実際にユーザがそういう使い方をしていた。こうやって自分達が想定する使い方じゃなくて、実際にユーザがどう使うかをきちんと見るのは大事だよね。いまいる場所から近い写真だけを見ることもできるから、買い物のときにも役立つかもしれないし、世界中にウィンドウショッピングしに行くこともできちゃう。

“FROM.US”

 これは共同ギフトサービス。Danielとマークだったかな、たぶん2人とも大学卒業したくらいで若い。“FROM.US”は誰かに何かをあげるときにみんなでカンパしてギフトを贈れるサービス。1人だけだと結局金額が決まってしまうからあげられるものも限られちゃうけど、みんなから集めれば例えばコンピュータだってプレゼントできちゃう。実際に500 staruptsのメンバーの一人にみんなでPCをプレゼントしたこともあるって。あらかじめギフトをあげる人たちが選択肢をいくつか用意してあげて、最後の最後までサプライズをキープ。ギフトを受け取った人が、どのギフトを欲しいかを選べる。このサービス前から欲しかったのだ。

Untitled from Eric Scott on Vimeo.

“Wander”

 まるでどこかに旅をした気分になれるアプリ“Wander”。3人のチームで、DarienとDaronとあともう1人の方はお名前を忘れてしまった…。旅というより、実際にそこに住んでいる人の生活に入り込める感じ。ガイドと呼ばれる世界中のサービス登録ユーザが、ランダムにマッチングされて期間限定でコミュニケーションを楽しむことができる。旅先は北京かもしれないしベニスかもしれない。

 当たった相手ときちんとコミュニケーションをとってもらうことが目的だから、スキップとかはあえてできないようにしてる。またコミュニケーションが活発になるようにあらかじめ質問を用意してるのが上手。例えば「あなたの部屋の窓から見える景色はどんな?」ってな具合に。上海に住んでいる人が送ってきた写真には、早朝の公園で体操してる人たちが写ってたりする。Darienがサービス説明をしてくれたのだけど、“Structured”っていう言葉をすごく使ってた。”We’re making the world smaller”っていうキャッチコピー、いいね。

“Appgroves”

 柴田さんはアメリカのインキュベーションに入ってる唯一の日本人かな。“Appgroves”もDaveから声がかかって入ることになったそう。アプリのレコメンデーションをしてくれるiPhoneアプリ。けっこう競合がいるけれど、ユーザのiPhoneに入っているアプリを探知する率が他より高いことがひとつの特徴。また、2つのアプリを並べてどっちのアプリが好きかを選ばせる機能をつくることで、ゲーム的要素も取り入れてる。日本の人にももっと使って欲しい!って言っていたのでみんなもダウンロードしてみてね。


Speedy and Surely

 アメリカの表現で“Slowly but surely”っていう言葉がある。ゆっくり、でも確実に。今回500 startupsのみんなを見て、speedy and surelyだなってすごく思った。スピードはすごく早くて色んなことを試してトライアンドエラーをしているのだけれど、最初から大きくしないでまずは既存ユーザとじっくり向き合ってどうアプリをブラッシュアップしていくか、どういう方向に持っていくかを着実に進めている感じ。

 150人以上のメンター、あとはスタートアップがみんなそれぞれ切磋琢磨してる環境がある。同じチームじゃなくてもアイディアを出し合ったりブレインストームしたりアドバイスをしたり。よくシリコンバレーにはエコシステムがあるっていうけれど、それを実感する旅になった。現地で知り合ったイギリス人の友達も言っていたけれど、アメリカ人の(国籍はバラバラだからアメリカにいる人って言った方が正確かな)仕事におけるネットワーキングへの姿勢とか能力ってすごい、って。イベントに参加するために同じ部屋に集まったらそれだけでみんな知り合い、友達。隣の席に座れば自己紹介するし、飛行機で隣だって会話が始まる。

 ほんとに充実した一週間だった。次回はもっと長く行こっと。

【スタッフブロガー】三橋ゆか里

肩書きウェブディレクター。ディレクションの他、翻訳やライティングなど、フリーでお仕事してます。1/15に公開の映画『ソーシャル・ネットワーク』の字幕監修をさせていただきました。ツイッターIDは”yukari77“。
個人で運営している【TechDoll.jp】というサイトで、海外のテクノロジー、ソーシャルメディア、出版、マーケティングなどの情報を発信しています。目指せタイムリーな情報発信!
これまで雑誌のECで→UIデザインのコンサル→ウェブ制作会社などを渡り歩いてきました。そこで得たスキル、人、全部かけがえのない財産。幸せの方程式は、テクノロジー(UI, IA..)×マーケ×クロスカルチャー×書く・編集。いま一番夢に近いとこにいる。

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