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テレビに革命を起こす方法が分かった?伝記の中のジョブズの一言でiTVのうわさ再浮上【湯川】

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 スティーブ・ジョブズ氏の伝記本「スティーブ・ジョブズ 」が発売になり各所で話題になっているが、その本の中でジョブズが語ったとされる一文が大きな波紋を呼んでいる。その一文とは「I finally cracked it(ついに分かった)」。本来は「ついにその暗号を解けた」というような意味だ。

 その一文の前にジョブズ氏は伝記作家のWalter Isaacson氏に次のように語っている。「非常に使いやすい統合されたテレビを作りたい。すべてのデバイスやiCloudとシームレスに連携にするようなテレビだ」。「(リモコンやDVDプレーヤーやCATVなどの配線に悩むこともない)最もシンプルなインターフェースを持つテレビだ。ついに分かったんだ」。(ワシントン・ポストの関連記事:Jobs’s final plan: an ‘integrated’ Apple TV

 ジョブズ氏はこれまでAppleのテレビ関連事業を「趣味」と呼んでいた。テレビ業界は音楽業界以上にテクノロジーで大きな変革を起こすことが可能な領域。ただテレビ局やCATV会社など、既得権益を持つ企業との調整が非常に難しく、なかなか変革を起こせそうにない。諦らめずにじっと時機を待つという意味でジョブズ氏はテレビ関連事業を「趣味」と呼んだのだと思われる。そのジョブズ氏が「ついに分かった」と語ったというのである。iPodが音楽業界に引き起こしたような大変革をテレビ業界にも引き起こす方法を、ジョブズは思いついたのだろうか。Appleがテレビ事業にいよいよ本腰を入れるのではないか。一部で大きな話題となっている。

 


 このジョブズ氏の一言を受けてPiper JaffrayのアナリストGene Munster氏は、Appleが2012年に平面パネルのインターネットTVを発売し、同年に140万台を売り上げるという予測を明らた。同氏はこれまでに何度もAppleがテレビ事業に乗り出すと予測。これまでは予測が外れた形になっているわけだが、今回のジョブズ氏の発言を受けて自信を深めたのか顧客向けのメモの中で具体的な売上予測まで発表したようだ。一部報道によると同氏はアジアで会合を持ち、Appleが3.5インチから50インチまでのLCDディスプレイの供給を確保しようとしていることが分かったという。9月に関係筋と会合を持った際には、既にテレビの試作品が完成間際だったという。(関連記事:Apple TV 3G with Siri Remote Control Being Prototyped – Report

 なぜApple自体がテレビを作らなければならないのだろうか。これまでのようにApple TVのようなセットトップボックスではだめなのだろうか。

 Munster氏は、iPhone4Sに搭載された音声エージェント技術SiriがiTVにも搭載されることになるだろうと指摘している。リモコンなしでもテレビの操作が可能になるわけだ。

 SiriはAppleが特許を持つ独自技術。他社に同音声技術をライセンス提供する前に、まずはApple自体が同技術を搭載したテレビを開発し、完璧なエクスペリエンスを示す必要があるとAppleが考えていても不思議はない。

 一方で、シリコンバレーの著名モバイル開発者Joe Hewitt氏は、独自開発の理由の1つはデバイス間の通信にあるという。デバイス間の通信に少しでもタイムラグが生じるようでは完全なエクスペリエンスを提供できない。家庭にあるようなwi-fi通信では十分でないので、テレビ自体にルーターを組み込むか何かの方法でデバイス間のより高速な通信を実現するためにテレビを開発する必要があるのではないか、と指摘している。確かに完璧なエクスペリエンスの提供にこだわるAppleなら、まずは自社でテレビを製造する必要があると考えるかもしれない。

 デバイス間でまったくタイムラグのない高速通信が可能になればどのようなことができるのだろうか。その一例を今日既に存在するAppleの技術AirPlayに見ることができるという。

 果たしてこれがジョブズ氏の考える「統合されたテレビの形」なのだろうか。「非常にシンプルなインターフェース」なのだろうか。またAppleが開発中とされる次世代テレビは、本当に広く普及しAppleにとっての「趣味の事業」から、Appleの未来を担う本気の事業になるのだろうか。

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