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「PeaTiX」が米国へ本社を置く理由、500 Startups など米有力VCから資金を調達【増田(@maskin)真樹】


[読了時間:2分]

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 オンラインチケットサービス「PeaTiX」の開発・運営などを行うOrinocoは12月15日、米国に本社機能を持つPeatix, Inc.を設立したと発表した。米Peatix CEOには原田卓氏が就任し、日本から数名のシステム開発者およびデザイナーが渡米する。これまでの日本法人は米Peatixの日本子会社としてOrinoco Peatixと名前を変え営業活動などを引き続き行うとのこと。

 米法人設立にあたり、しばしば来日しているDave McClure氏率いるベンチャーキャピタルファンド「500 Startups」、および日米で投資活動をするファンド「DFJ JAIC」や「ZenShin Capital」などから資金を調達する。この数年、ITスタートアップの分野では日本人の米国進出意欲が加熱したが、Peatixのように最初から米国資本が参入するケースは珍しく、ましてや日本の法人が本社機能を米国に置くような動きもあまり目にすることはない。

 CEO 原田卓氏は海外生活が長く前職ではAmazom.co.jpやAppleで活動。500 Startupsのメンターとしても活動している。「Peatixの前身Orinocoが設立されたのは2007年。最初から国籍を問わないチームで活動をしてきた、今後もこの方向は変わらない」とグローバル視点を強みにした活動をしていきたい考えだ。

北米進出の狙いはエンジニア&デザイナー人材確保





 Orinoco Peatixは2007年の創業以降、bitlyエンタープライズSurvey Monkeyなどの海外サービスの日本展開に注力しつつ、独自でオンラインドキュメント販売サービスをスタートアップするなどの活動をしてきた。その独自サービスは失敗に終ったものの「そのスタートアップにおける失敗が今のPeaTiXの成長原動力になっている」と原田氏は語る。

「ITスタートアップの成功/失敗の分岐点は色々あると思いますが、私たちの失敗は明白でした。UI/UXがいけてない。ですから、PeaTiXの開発を始めた際、まずUI/UXからサービスをデザインしていきました。Helpを読まなくても使えるUI/UXにする。そこを先に決めてからシステム側を開発していく方法です。PeaTiXは2011年5月にローンチしましたが、すでに1000件以上のイベントに利用され、順調に売上も伸ばしていきました。以前失敗したサービスとは成長率が全く異なり手応えを感じました。

実は、PeaTiXのデザインは、海外の国籍を持つスタッフによるもので、その力が大きいのです。こういった人材は大切にしたいし、もっと多くの人材を獲得し良質なサービスを開発していきたい。だから、今回の米国本社設立は、まさに人材を獲得するための進出なのです」(原田氏)。

シリコンバレーからアジア圏とのネットワークを構築

 シリコンバレーおよびサンフランシスコは人材獲得競争が激しいがある地域。世界中から優秀な人材が集中し、競合も多く、その厳しさは日本以上かもしれないが「やはりそれだけの人材がいる」と原田氏はいう。

「北米本社設立における、もう一つ重要な要素。それは、アジア圏とのネットワークの構築です。変な話ですが、シリコンバレーの方が日本に関心のあるアジア圏のビジネスパートナーや投資家などとの接点が構築しやすいのです。実は、現時点ではPeaTiXの北米進出すら計画にありません。シリコンバレーに本社を置く理由は、この地域に根づく世界規模のITビジネスネットワークとそこにいる人材との関係を構築することに他なりません」。

 確かにベイエリア(シリコンバレー・サンフランシスコ間)は、アジア圏の移民などが多く “オリエンタルの街” と揶揄されることが多い。“IT x アジア” 日本のIT業界におけるホットキーワードの鍵となるこの地域でPeatixはどう躍進するのだろうか。今後の展開から目が離せなくなりそうだ。

【関連URL】
・Orinoco | Eコマース、ソーシャルメディアの未来を創造
http://www.orinoco.jp/
・PeaTiX : だれでもチケット販売サイト | PeaTiX
http://peatix.com/

蛇足:僕はこう思ったッス
 TechWaveでもDebutDayなどのイベントで利用しており、複数のサービスを比較した際、その日本人離れした完成度の高いUXが採択の要因の一つとなっていた。
さて、原田氏はブログの中で、大企業のキャリアを捨て希望の光さえ見えない状況で挑戦し続けすることを「極上のバカである。」と表現する。失敗ばかり。そんな彼らはシリコンバレーに足しげく通い、現地サービスの日本展開を代理する事業を着々と獲得していく。「ポツリ、ポツリ、と一見関連性が無いように思える日常の細かい経験にも実は連続性があり、そこには良く見つめてみれば辿るべき発展・自己形成の道しるべが存在している」という彼の言葉に深く共感する。今回の米国本社も、ある種の必然があったのだと思う。少しだけでも前に進もうとする力は、いずれ一つの大きな流れとして結実するのだと僕も信じてゆきたい。

著者プロフィール:TechWave副編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
 8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。codeが書けるジャーナリスト。1990年代は週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーでベンチャー起業に参画。帰国後、ネットエイジで複数のスタートアップに関与。フリーで関心空間、富裕層SNSのnileport、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。“IT業界なら場所に依存せず成功すべき”という信念で宇都宮市から子育てしながら全国・世界で活動中。スタートアップ支援に注力。自らもプロジェクト立ち上げ中。イベントオーガナイザー・DJ・小説家。 大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。コラボしてくれる人、会社募集中。
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