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TechCrunch Disruptの北京大会で優勝したことで注目を集めている米テキサス州のスタートアップOrderWithMe社。そのビジネスモデルは、中小のアパレル店舗の注文をオンライン上でまとめて、中国での買い付けを代行するというシンプルなもの。こうした共同購入のモデルはネットの商業利用が始まったころから存在するのに、ここにきてなぜOrderWithMe社が注目を集めているのか。同社に出資した日本の独立系ベンチャーキャピタルInfinity Venture Partnersを通じてOrderWithMe社のCEOをインタビューしたところ、同社の強みは意外にもデジタルではなくアナログな手法にあることが分かった。同社は近く日本向けにもサイトを開設し、中国製のファッション関連製品を低価格で日本の店舗に卸す事業に乗り出すという。
OrderWithMe社のCEO、Jonathan Jenkins氏はテキサス州生まれ。小さいころからカウボーイに憧れ、荒野を目指したいと考えていたという。現在の荒野といえば中国。そう考えた同氏は2003年に中国に留学し、いったん米国に帰国したのちに2006年に再び中国に戻って起業することになる。そこで目にしたのが、米国との価格差だ。米国で50ドルで売られているようなハンドバッグが中国の工場で5ドルで仕入れることができるのだ。同氏は中国でファッション雑貨を仕入れ、故郷のテキサス州で販売するというビジネスを23歳で立ち上げ、あっという間に9店舗を経営するまでに成功した。
ただそこで問題が発生した。工場から買い付けるには100個以上の大口ロットで注文しなければならない。9店舗を展開するとはいえ100個単位で注文すれば、必ず幾つかは売れ残り不良在庫となった。
そこで思いついたのが米国に20万店舗も存在するという中小の小売店舗のために中国での買い付けを代行するという共同購入ビジネス。もちろん中国製品を米国に輸入して流通させるチャンネルはこれまでにも存在していたが、複数の中間業者がコストを積み上げる形になっていた。また中小の小売店舗はITリテラシーが低く、ファックスで注文したり表計算ファイルを添付したメールを送付するような形が主流だという。
そこでウェブサイトを開設しオンラインで注文できるサービスOrderWithMeを立ち上げた。
ただここまでならウェブページ製作ノウハウを持っている人ならだれでもできること。同社の強みは意外にアナログなところにあった。
同社に出資を決めたIVPの田中章雄氏は「彼らが買い付けに行く中国の問屋街を見て回ったんですが、どんでもないところなんです。ハードルが高過ぎる。ほかの企業には真似できないと思ったんです」と語る。
何万という問屋がひしめき合うような暗くて狭い路地。見て回るのも大変で、「身の危険を感じるような場所(笑)」だと言う。
買い付けにはJonathan氏の夫人のDanielleさんも同行する。東京で会ったときには上品に着飾っていたDanielleさんだが、「もちろん中国の買い付けはこんな格好ではしませんよ」と言う。質素な身なり、厳しい態度で交渉に望むのだという。暗く狭い路地での買い付けの現場を見ると「わたしの仕事をしたいと思う人はだれもいませんよ」と笑う。
IVPはOrderWithMeに200万ドルを出資し、ある個人投資家が100万ドルを出資したという。今回の出資を受け、中国杭州に1100平米の倉庫を設立し、新たにスタッフを雇用、年央までに日本、オーストラリア、英国向けにもサービスを開始する計画。取り扱うのはファッションや家庭用ファッション雑貨が中心で、将来的にはスポーツ用品なども手がけたいという。世界中の中小の店舗のための共同購入サービスになれば、非常に大きなビジネスになる。IVPの田中氏は「グルーポン事業に投資し成長のスケール感を味わったが、OrderWithMeもうまく行けば次のグルーポンになるかもしれないと思った」と語っている。
Googleのように、何から何までデジタルで解決するというやり方で大きく成長できる領域のビジネスって、Google、Facebookぐらいでそろそろ一段落ついたんじゃないかな。数年はFacebookの次は出てこないように思う。
一方で今、世の中で求められているのは、テクノロジーを使って各種業界を大きく進化させることだと思う。最新のテクノロジーを使えば便利になることが間違いないのに、旧態依然とした仕組みや慣習がいまだに続いている業界がまだまだ多い。そこの部分を変革するのって、単にテクノロジーを提供するだけではだめなんだろうと思う。パソコンを使えない人が多いのならFaxやケータイを使ったサービスを作るとか、進化の方向を見定めながらもユーザーのリテラシーの変化に合わせてツールを徐々に進化させていくことが重要なんだなと思う。
そうしたやり方で、イノベーションを起こすことは可能だし、業界の新しいプラットフォームになることは可能なはず。Facebookの次を狙うのも大事だけど、B2Bの領域にもビジネスチャンスは多く存在するように思う。