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2012年2月2-3日にシンガポールで開催されたStartupAsia。これに合わせ、シンガポールを初め東南アジアに進出し出した日本のベンチャー企業を中心に取材を行いました。この地域に対する認識・目標など企業としての考えに加え、アジアで生きる個人としての目線も含めて伺っています。全5回。
第2回目は、シンガポールに進出する日本のスタートアップがこぞって利用しているレンタルオフィス「クロスコープ・シンガポール」。入居者の中から、mediba小堤音彦さん、ワンオブゼム佐渡栄仁さん、gooya北野哲さんの3人に出てもらいました。
東南アジアで使われるアプリに現地ユーザーにあった広告を配信
KDDIのグループ会社であるmedibaは、拡大するスマートフォン市場において、アジア諸国でのアドネットワーク事業やコンテンツ事業強化のため、2011年10月にシンガポールに駐在所を設立した。小堤音彦氏はアジアパシフィク地域マネージャーとしてここに赴任している。
シンガポールには、モバイルアドネットワークが多数存在する。その中から、アドエクスチェンジが出来そうな提携先を見つけ、またmediba adを使ってもらうパブリッシャー(アプリの開発者)に知ってもらうための活動を行なっている。市場調査としてシンガポール政府に認可を受けた駐在所は営業活動が出来ないため、いいパートナー候補が見つかったら、日本のチームに繋げることが小堤さんの役割である。開拓の触手は当然、シンガポール以外の東南アジア地域にも及んでいる。
シンガポール進出の背景としては、この地域でのアドエクスチェンジのニーズが日本の開発者から高まっていたことが要因の1つとして上げられる。改めてアドエクスチェンジを説明すると、mediba adを導入したアプリが海外でも使われるようになってきた。海外で外国人に日本の広告を出してもほとんど意味がない。より効率のいい広告を出すため、海外のアドネットワークを通じ広告を出す。これを市場の拡大が見込める東南アジア地域でも展開するわけだ。「海外からのインプレションも無駄にせずに収益化したいというデベロッパーからの声は、かなりありました。」(小堤)
ライバルの海外企業も続々とアジアの本部をシンガポールに置き、ここを拠点に東南アジア全体を狙う激戦区だ。欧米勢は英語サービスのため英語圏は強いが、ローカライズはそこまで出来ていない。そのため、業界大手のInmobiやAdmobでさえモバイル・スマホでは、いい広告主を捕まえ切れていないというのが小堤さんの感触である。
今後は、現地の代理店との繋がりや現地語化対応という2つの意味でのローカライズが、差別化戦略において重要になってくるだろうとのこと。
ここは、日本人が経験して来なかったコミュニケーションの仕方が起こる場所
2011年10月にグロービスとIVPから約3億円に上る出資を受けた株式会社ワンオブゼムは、同年12月に子会社 ONE of THEM ASIA-PACIFIC Pte.Ltd.をシンガポールに設立。ディレクターとして25歳の佐渡栄仁氏を送り込んだ。
佐渡さんは現在、海外の市場調査と企画づくりを行なっている。同社はソーシャルゲームの会社という評価だが、こちらではゲームにこだわらず、現地で必要とされるものを展開する意向だ。そのための情報収集には余念がない。一口に東南アジアといっても、事情は各国によってかなり異なる。情報を徹底的に集めることで相手の文化を理解し、宗教的、政治的にダメなことやタブーが分かってきたという。それが分かっているだけで、そこに割くリソースや無駄な資金を削減出来ると見ている。
コミュニケーションの仕組みを作りたいというのが、佐渡さんだけでなく、同社全体の意識でもある。「これから、東南アジアの人々のライフスタイルが変わっていく。そして、日本や欧米のような経済成長を経験しない段階でスマホやタブレットが広まる。そうなると、僕達がして来なかったコミュニケーションの仕方が起こる。それが何かはまだ分からないけど、そういうものの仕組みを作りたい。」(佐渡)
日本人向け不動産情報を足がかりに現地の情報メディアを作る
web制作やITコンサル、そして「ギフトナウ」で知られる株式会社gooyaも、昨年10月にオフィスを構えた。同社がシンガポールで開設したのがSingat(シンガット)というシンガポールの不動産情報を提供するwebサイトだ。不動産業界での長い経験を経て2006年からgooyaに参画した北野哲氏がその責を担う。
Singatは不動産情報の中でも、シンガポールに進出する日本人を対象にしている。
シンガポールは、不動産(賃貸料)が東京よりも高いことで知られるが、シンガポール独特の住宅構造と生活様式の違いから、日本人に向いた物件を見つけ出すのは難しい。例えば、シンガポールのある程度の価格帯の住居では、住み込みのメイド部屋が用意されていることが多い。また、メイドが料理をすることが多いため、キッチンは奥まったところにある。しかし、メイドを必要としない場合、これらの構造は不要・不便極まりない。また、日本人は概して華美でない、普通のマンションぽい住宅を好む傾向があるそうだ。
Singatは、こうした日本人を扱えるエージェントが持っている物件を厳選することで、手数料をとるビジネスモデルを採用している。出来たばかりのためコンテンツはまだ揃っていないが、不動産情報をベースに今後は日本人向けのNo.1情報ポータルを目指す考えだ。
Singat以外にも、オフショアの開発拠点を東南アジアで設置し、オフショア先を探す日本のベンチャー企業の助けとなることも念頭においているという。
取材で訪れたクロスコープ・シンガポールについて触れておきます。
ここは単なる場所貸しでなく、入居者に対し政府系組織や事業会社の紹介、採用のお手伝い、それぞれの国のマーケットや事業環境などの情報提供を行うなど、シンガポールを初めASEANに進出する主に中小ベンチャー企業をサポートしています。
現在44社入居されているそうですが、数年後にはアジアで成功する企業がここから輩出される日が来るかもしれません。
クロスコープ・シンガポールの成り立ちも中々興味深いため、【アジア進出メモ】の第3回目でも引き続き取り上げる予定です。
写真家、広義の編集者。TechWave副編集長
その髪型から「オカッパ」と呼ばれています。
技術やビジネスよりも人に興味があります。サービスやプロダクトを作った人は、その動機や思いを聞かせて下さい。取材時は結構しっかりと写真を撮ります。
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