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「Facebookコマースの可能性は計り知れないが米でもまだ様子見」 PowerReviews社 Andy Chen氏【湯川】

[読了時間:4分]
 世界12都市で同時開催中のイベント「Social Media Week」。その一貫として都内の電通ホールで行われたセミナーの1つ「米国ソーシャルコマース最新情報」で講演した米PowerReviews社の共同創業者Andy Chen氏に直接会ってお話を聞く機会を得た。米国企業は、Facebook上のソーシャルコマースにどの程度力を入れているのか。新しいソーシャルコマースの形は見えてきているのか。米国の最新状況について聞いてみた。

 Chen氏によると、PowerReviews社は世界26カ国の約5500のECサイトにソーシャルコマースのソリューションを提供する大手ベンダー。具体的なソリューションとしては、ECサイト上に設置するものとして、商品ごとに設けることのできるカスターマーレビューや、商品について問い合わせるできるQ&Aのコーナーがある。またFacebookと連携するツールとしては、Facebookのニュースフィード上で商品に関する質問ができるツールなども開発している。

 ECサイト上のソリューションであるカスタマーレビューは、いわばAmazon.com上で見かけることができるカスタマーレビューのようなもの。ただAmazonのレビューと異なり、複数のユーザーのレビューが読みやすい分量に自動的にまとめれれるのが特徴という。

 Q&Aコーナーは、メーカーやECサイトの担当者、購入済の消費者に対して質問できるようになっているのが特徴という。

 一方でFacebook上のソーシャルコマースに関しては、Facebookページを利用するのではなく、ECサイトと連携しECサイト上で「友達に相談」というツールを利用すれば「この商品をどう思う?」というようなメッセージが商品ページへのリンクとともに友人のニュースフィードに流れる仕組みになっているという。先日、日本でもビルコムが発表したFacebookコマースツール「ReBuy」と似たような仕組みだ。(関連記事:ビルコムがFacebook用ソーシャルコマースアプリ「ReBuy」を提供開始【湯川】

 ではこうした仕組みの次にどのような仕組みが出てくるのだろうか。ReBuyの記事にも書いたが、結婚式のお祝いを親戚・友人で手分けする「ギフト・レジストリー」の仕組みや、誕生日に合わせてプレゼントを贈る仕組みなどは、Facebook上にはまだ現れないのだろうか。Chen氏に聞いてみた。


ーFacebook上に「今日は〇〇さんの誕生日です。誕生日を祝うメッセージを送りましょう」という表示が出るけれど、その際にプレゼントを贈るというソーシャルコマースソリューションは可能なはず。どうしてまだ登場しないのか?

 「われわれのクライアントは全社、誕生日プレゼントを送るソリューションを開発できないか、われわれに問い合わせてきている。でも実際には簡単ではない。なぜなら誕生日を一般公開しているユーザーってそれほど多くないんだ」

ーそれは意外。ほとんどの人が公開しているのだと思っていた。

「友人には公開している。でも一般公開していないのでECサイト側でその情報を入手できないんだ」

ーユーザーにアプリをインストールしてもらえれば、友人に公開している誕生日データなどもECサイト側で入手できるのでは?

「ユーザーがアプリをインストールしてくれれば可能。でもユーザーがインストールするアプリ数は平均で数個しかないと言われている。その数個の中にECサイトが入るのは簡単なことじゃない」

ー有力ブランドならアプリをインストールしてもらえるんじゃないか。Amazonとかなら。

「可能かもね。ただギフトは非常に難しいビジネスだと思う。実際にソーシャル上でのギフトビジネスは非常に大きな市場になるとは思う。われわれは過去の膨大なデータから、だれがどんなときにどんなプレゼントを贈るのかということは分かってきている。ただそれをタイムリーに消費者に提案する方法がまだつかめていない。またFacebookがつかんでいるようなユーザー一人ひとりの属性データをECサイト側がうまく入手できないのが現状。なので今のところはECサイト側から的確な提案をユーザーに表示できていない。ただわれわれのクライアントに大手の花屋があるが、彼らはFacebookの持つ可能性に非常に大きな期待を寄せていて研究開発を続けているようだ」

ー新婚のカップルのために親戚・友人で家財道具を分担してプレゼントする「ギフト・レジストリー」のようなものも、まだしばらくはオンラインに乗ってこないのだろうか?

 「いやそんなことはない。非常に大きな可能性のある領域だし、どこかが手がけてくると思う。ただわれわれは特定のクライアント向けのツールで得たデータを他のクライアントと共有するつもりはないので、ECサイトを横断したギフト・レジストリーのようなサービスを展開する考えはない。Amazonなら手がけるかもしれないけれど」

ーFacebookはコマースに力を入れ始めているのでは?FacebookとAmazonが組んだりしないのだろうか?

「Facebookが最初に力を入れた業界がゲーム。次はコマース。既にコマースの分野の有力な人材を採用し始めているので、この分野にも力を入れてくるだろう。Amazonもその波に乗ると思う」

ーそうなれば御社にとってAmazonが脅威になるのでは?

「確かに。でもFacebookがAmazonと独占的な契約を結ぶことはないと思う。Amazon自体がいろいろな局面でFacebookと競合関係になる可能性があるので、FacebookはそこまでAmazonを特別扱いするとは思えない。Amazonがコマース事業の最初の協力パートナーになるかもしれないけれど、動きが早いところが勝つとは限らないし」「Facebookはコマースで収益を上げるのではなく、EC事業者が収益を上げる仕組みを作って、その上でEC事業者からの広告収入を狙っている。弊社は有力EC事業者を多数クライアントに抱えているので、今後もわれわれもAmazon同様、優先的に扱ってくれるものと思う」

ーこれからPowerReviews社が力を入れる領域は?

 「これまでのツールは主にコンバージョンが目的だったけれど、これからは新しいユーザーを見つける「ディスカバリー」に力を入れていきたい。ECサイト上でユーザーが特定のジャンルをフォローできるようにしたり、特定の商品に対してFacebook上で友達に相談したりできるようにすることで、Facebook上の友人の中にそのジャンルや商品に興味のありそうな新しいユーザーを見つけることができる。人間関係を通じて新しい顧客を探し出すというところに力を入れていきたいと思う。9ヶ月前に独自に調査したところ、われわれのツールを使ってFacebookのニュースフィード上にエントリーが上がるたびに15ドルから16ドルの売り上げにつながるという結果が出た。今のところわれわれのツールを使ってエントリーをFacebook上にアップするユーザーは全体の0.1%程度しかいないが、この数字を上昇させることで大きな売り上げにつながると思う。まずはここに力を入れたい」

ーECサイトやメーカー、ブランド企業などのFacebookコマースの現状は?

「今はまだ99.9%の企業が様子見。大きな可能性は感じているのだが、少額投資で効果的なソーシャルコマースの方法を模索しているのが現状」

ーPowerReviews社の考える効果的なソーシャルコマースとは?

「アイデアはいくらでもある」

ー例えば?

「・・・。今はまだ言えない(笑)」

 PowerReviews社は日本では株式会社マーケティング・リソース・センターと提携、日本のソーシャルコマースの発展に貢献していきたいとしている。

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