サイトアイコン TechWave(テックウェーブ)

iTunesから生まれた新しいラジオ「Music Beam」「僕のラジオ」、音楽発掘の喜び 再び【増田(@maskin)真樹】


[読了時間:3分]

IMG_0016

 iTunes Music Storeでは楽曲購入前に数十秒間をプレビューできるようになっているが、最近、そのプレビュー部分を連続で再生することができるアプリが注目されている。ひとつはランキングヒットチャートのように人気曲を集め連続再生できる無料のアプリ「Music Beam」。もう一つ3月9日にリリースされた「僕のラジオ」。こちらは170円の有料アプリ(3/31まで半額キャンペーン中)だが、Storeの楽曲全体を検索して好きなアーティストなど特定の曲だけに絞り込み再生できる高機能さが売りだ。

音楽専門番組のような感覚




 「自分で好きな曲をプレビュー再生できるのに、なぜわざわざこのアプリで聴く必要があるの?」と疑問を感じる人もいるかもしれないが、このいわば「プレビューラジオ」の魅力はラジオの様にかけっぱなしで聴けるという点にある。たった数十秒ではあるが、楽曲の雰囲気をつかむのにはほぼ十分。ラジオのように聴き流すのには最適だし、「これもっと聴きたい!」と思ったらそのまま直接Storeで購入することができる。これが利用者にフィットしているようで、MusicBeamは無料アプリのランキング上位に常にいるし、僕のラジオも人気が出るのは時間の問題だろう。

 「ラジオやテレビで、この曲いいね!」と思っても購入に繋がらないストレスを感じたことがある人は多いと思う。その問題を完璧に解決した音楽専門番組と考えてみれば十分な価値がある。プレビューコンテンツをメインにするという逆転の発想が市場に受け入れ始めていることを見ると、発掘できる価値はまだまだ意外な場所に残っているのかもしれない。

 iTunes Music Storeに代表されるデジタルミュージックマーケットはiPodやiPhone、その他のデバイスによって拡大の一途を辿っているのは言うまでもないが、音楽との出会いの場がそれほど豊になってきたとも思えない面もある。かつてのCD/レコードショップで音楽を購入していた時代のように、ジャケットやそれぞれのお店の個性でフィルタリングされたコンテンツを手にすることができないし、TVやラジオによる音楽専門番組も数が少なくなっている。

プレビュー連続再生による番組化


 プレビューラジオの興味深い点は、例えばMusic Beamのように、多用な切り口でヒットチャートを選出している点。ジェネリックなランキングひとつだけ、ではなく自分の好みのジャンルを連続再生するというニーズはあるだろう。海外用、アニメ用アプリも別途リリースされていたりする。


 僕のラジオにもカテゴリー再生はあるが、キーワード検索によりこまかく絞り込める高機能さで対抗している。Music Beamにはできないアーティストのみ絞り込みする機能は人気が出そうだし、連続再生の曲のつなぎを自然にするなど、より “ラジオ” として気持ち良く再生できるような心くばりがある。

 両方ともアプリからのiTunesで楽曲購入を促しアフィリエイト収益で利益を産もうとしているが、Music Beamの場合は楽曲を無料で入手できる「giftbeam」という参加型サービスを別途提供し「プレビューラジオでお気に入りを発見」→「giftbeamで無料でゲット」という循環を生み出そうと奮闘中だ。giftbeamは、スポンサーからのお題をクリアする代わりに楽曲が無料で入手できるというもので、それほど大量のイベントを立ち上げられるわけではないため、Music Beamは必然的にヒットチャート狙いで人気の集まるものにフォーカスしている状態にある。

 まだまだ成長する余地のあるプレビューラジオ。ここからどう派生ビジネスに展開できるかが音楽業界の試金石となるかしれない。

【関連URL】
・Fluent – Making the future of email
http://itunes.apple.com/jp/app/id506239642?mt=8
・Music Beam
http://itunes.apple.com/jp/app/music-beam/id484398803?mt=8

蛇足:僕はこう思ったッス
数千枚のCDを保有する僕としては、海外のCDをあさる場が国内で激減したことを不満と感じている。iTunes Storeも海外版に自由に切り替えるようにして欲しい。もちろんデジタルで入手できる場は沢山あるし、海外のラジオを聴けば最新かつ独特な楽曲と出会うこともできるのでいいのだが、音楽発掘環境はもっと多用になるべきだと思うし、そこに音楽市場の復興の鍵があるんじゃないかと改めて思う。

著者プロフィール:TechWave副編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
 8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代は週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーでベンチャー起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 DJ、emacs使い。大手携帯キャリア公式ニュースサイト編集デスク。TechWaveでは各種イベント、創出支援、スタートアップ支援に注力。メール等お待ちしております!
メール maskin(at)metamix.com | Twitter @maskin | ChatWork: maskin | 書籍情報・詳しいプロフィールはこちら


モバイルバージョンを終了