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ゲーム要素を取り入れた社会貢献プラットフォームを目指す“i-kifu”【三橋ゆか里】

[読了時間:1分]

i-kifuというNPO支援のサービスをつくったNhat Voungさんへ三橋ゆか里さんが取材を行いました。こういうサービスが増えるのは嬉しいですね。(本田)

三橋ゆか里
(@yukari77)

 JustGivingJapan、ekokoro、Charity Platform、Give Oneなどは、どれも日本で使える寄付やNPO支援のプラットフォーム。でもこれらのプラットフォームの認知度や利用度は決して高くない。大学に進学する際、成績や試験の結果だけでなくボランティアなどの社会活動も問われるアメリカなどに比較して、日本では残念ながら寄付やボランティアが一般的ではない現状がある。

“Fun”が加わった社会貢献プラットフォーム 「i-kifu」

 そんな日常的ではない寄付やボランティアという社会貢献活動に、“Fun”を加えることで広く認識し実行してもらおうというアイディアのもと生まれたのが“i-kifu”(あいーきふ)というプラットフォーム。FacebookやTwitterなどのSNSと連携させ、ゲームフィケーションの要素を取り入れることを目指す。i-kifuのファウンダーであるNhat Voungさんにインタビューをしました。

 日本語と英語の2カ国語で展開されるi-kifu。現在このプラットフォームに参加するNPO等非営利団体の数は23。非営利団体はそれぞれのプロフィールページを持つことができて、具体的な活動の内容や動画などを掲載できる。一方、参加するユーザは、7つのカテゴリー(環境、教育、災害、動物保護、社会問題、子ども、健康)から興味のある団体やプロジェクトを見つけて、あらゆる形で貢献していける。

団体への寄付ではなく、団体の個別の活動に寄付できる

 FacebookやTwitterでプロジェクトを広めることはもちろんのこと、ただ団体に寄付するだけではなく、寄付金の用途を選んで寄付できるのがポイント。例えば、“Japan Water Forum”というNPOの「開発途上国に清潔な水を!」プロジェクトを支援する場合。井戸を作るコンクリート・リング、水を送るためのホース、雨水用のタンク設置費用などをそれぞれ選んで寄付できちゃう。寄付金の用途が明確なのは、寄付する側にとって嬉しいし安心にもつながる。

すべてのアクションでたまる“カルマポイント”

 また、ただ寄付するだけでなく、i-kifuのプラットフォームで起こしたあらゆるアクションにはカルマポイントが付与される。FacebookやTwitterで広めたら50ポイント、雨水用のタンク設置費用8,000円を寄付したら8,000カルマポイントなど。一回一回のアクションがそこで終わるのではなく蓄積されていく。今後は、このカルマポイントをオンラインだけでなく、オフラインでも利用できるようにすることでユーザのモチベーションをあげていきたいと考えているそう。

i-kifuの5つの特徴


1:ユーザフレンドリー
 すっきりしたデザインのウェブサイトはユーザを迷わせない。また、いかに簡単に最小のステップで寄付をしてもらうかを考えてる。“Don’t make me think”などの書籍がインスピレーションになってる。

2:SNS連携
 現在はFacebookやTwitterと連携。各種SNSと連携させることで、いい意味のソーシャルプレッシャーが発生する。寄付をしてくれるDonerを、promoterに変えていく。

3:透明性
 各NPOは、毎月1度フィードバックのレポート提出を定められてる。今月の活動、今後の予定などを応援してくれる人に共有し、安心して寄付や参加ができるようにする。プロジェクトの右上に☆5つで表示されている「透明性レベル」がそれ。レポート提出をきちんと行えば透明性レベルは高くなり、逆に怠った場合もそれが明示される仕組み。

4:ゲーミフィケーション
 カルマポイントという制度を設けることで、社会貢献のアクションに楽しさを加えてる。今後は、写真共有、チェックイン、QRコードなどを取り入れ、またオンラインとオフラインを紐付けることでより一層“Fun”とモチベーションを高めていく予定。

5:ビジネスモデル
 スポンサーがないNPO団体の場合、寄付金の10%がi-kifuの活動費になり、90%がNPOに入る。スポンサーがいる場合は、i-kifuの10%はスポンサーから出るため、NPOに全額が寄付される。

i-kifuが生まれた背景

 ファウンダーのNhatは、スイスで生まれ育ったベトナム人。子どもの頃に初めてベトナムに旅したとき、子どもが物乞いする風景などを目の当たりにし、何か自分にできることがないかと常々思っていたそう。ゲーミフィケーションを取り入れたi-kifuのアイディアを思いついたのは2010年10月。そこからエンジニア2人とサービスを構築し、リリースに至った。

 ゲーミフィケーションという言葉は色々な形で使われるけれど、Nhatと盛り上がったのは、Volkswagonの“Thefuntheory.com”。“Fun”の要素をプラスすることで、ゴミ箱にゴミを捨てる、エスカレーターではなく階段を使うといった行為を楽しくしてくれる。楽しく、世の中をもっと綺麗にしたり、人々をもっと健康にできる。この動画を見たとき、Nhatもこれだ!ってピンときたんだって。

 書籍”Paradox of choice”に、選択肢の多さが自分で決めた判断への満足度を変えるという話がある。2つしか選択肢がなければ決めやすいのに対して、10も選択肢があると判断に時間がかかる揚げ句に、結局これで良かったのか?と自分の判断に満足できない、と。i-kifuは、個別のNPOや非営利団体に対して、自分ができることを絞り込んでわかりやすく並べてくれてる。どこから始めたらいいのかわからない人をきちんとリードしてくれる。

i-kifuのこれから

 サービスはまだ歩き始めたばかり。不安がないと言えば嘘になるけれど、”For me, the opposite of success is not failure, but it’s not trying.”と話すNhat。成功の反対は失敗ではなく、チャレンジしてみないことだと。i-kifuは、エンジニアを含む主要メンバー数名を除いてボランティアで成り立っているそう。バイリンガルな方、そうでない方も協力したいという方は@ikifuに連絡してみてくださいな。

【スタッフブロガー】三橋ゆか里

肩書きウェブディレクター。ディレクションの他、翻訳やライティングなど、フリーでお仕事してます。2011年1月15日に公開の映画『ソーシャル・ネットワーク』の字幕監修をさせていただきました。ツイッターIDは”yukari77“。
個人で運営している【TechDoll.jp】というサイトで、海外のテクノロジー、ソーシャルメディア、出版、マーケティングなどの情報を発信しています。目指せタイムリーな情報発信!
これまで雑誌のECで→UIデザインのコンサル→ウェブ制作会社などを渡り歩いてきました。そこで得たスキル、人、全部かけがえのない財産。幸せの方程式は、テクノロジー(UI, IA..)×マーケ×クロスカルチャー×書く・編集。いま一番夢に近いとこにいる。

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