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シリコンバレーに近い海に浮かぶ船「Blueseed」、外国人起業家のVISA問題のためのソリューション【三橋ゆか里】

[読了時間:2分]

シリコンバレーに近い海の上にスタートアップ環境をつくってしまう「Blueseed」というプロジェクトについて、三橋ゆか里さんがファウンダーへの取材を交えて書いてくれました。

三橋ゆか里
(@yukari77)

 人口の多さや高いスマートフォン普及率など、ビジネスにとって魅力的な市場アジア。最近はシンガポール、中国、インドネシアなどアジア圏で起業したいと考える人、またその環境に関する情報も出回るようになってきた。そんなアジアのスタートアップエコシステムは良くも悪くもまだまだこれから。

 一方起業家の聖地とされる シリコンバレーには60年以上の歴史がある。そこには長い歳月を経て生まれたエコシステムがあり、その結果として未だに世界中のどこよりも優秀な人材や才能が集まる場所であり続けてる。ところが、シリコンバレーを目指して事業を始めた外国人起業家が、労働VISAが降りず強制送還される例が少なくない。今回紹介する「Blueseed」は、そんな問題へのソリューション提供を試みる。

船の上のスタートアップ環境「Blueseed」

 シリコンバレーの「近く」で、世界中の優秀な起業家を集めようというプロジェクトが「Blueseed」。陸から離れた(12マイル)船の上に一種のインキュベーションのような環境をつくることで、外国人起業家が直面するVISAの問題をクリアしようというもの。アイディア、お金、失敗を恐れない文化があるシリコンバレーを目指す外国人起業家はたくさんいる。でもVISAの問題でビジネスを継続できなくなったり、そもそも始められないという現状がある。もっと多くの外国人起業家を受け入れるために国会で提案された「Startup Visa Act of 2011」も2011年の3月を最後に止まってる。そんな問題への解決策がBlueseedなのです。1,000人の起業家を集め2013年Q3キックオフを目指して稼働中。このプロジェクトには、Facebook、LinkedIn、Yelpなどに初期段階で出資し、PayPalの共同創設者であるPeter Thiel氏も出資してる。

Blueseedの仕組みと環境

 Blueseedに参加するためにはビジネス/ツーリスト(B1/B2)VISAが必要。この記事を書くために話を聞いたBlueseedの共同創設者でCIOのDan Dascalescuさんによると、労働VISAに比べると取得が容易だそう。でも上記のVISAでは米国領土での労働は許されていない。そこで登場するのが船。シリコンバレー(陸)に行ってネットワーキングや会議などに参加し、仕事は戻って船の上(米国政府の管轄外)で行うという仕組み。毎日朝と夜に陸へのフェリーが出る、所要時間は30分。またオンデマンドの小さな高速ボートも用意される予定。

 Blueseedの使用料金(現金の場合)は、1人1ヶ月1,200ドル(マックス4人のルームシェア)、オーシャンビューのプライベート部屋に関しては一番高い部屋で1人1ヶ月3,000ドル。サンフランシスコの平均家賃は月1,750ドルなので比較的リーズナブル。大学の寮でもあり、365日体制でハッカソンやコワーキングができるBlueseedが目指すのはGoogleplexのような“Live/Work/play”な場所。ジム、プールテーブル、コンビニ、ゲームルーム、ATM、郵便局、カフェ、コンシェルジュといった設備も整えるそう。その他にも、シリコンバレーのネットワーキング、投資家やベンチャーキャピタルへのアクセス、トレーニングプログラムなどなど、起業家を後押しするあらゆるインキュベータ的サービスを提供する予定。こういった機能を提供する代わりに、Blueseedはスタートアップの株式を少し取得する。具体的な保有率は不明。

Blueseedが生まれた背景

 Danによると、Blueseedは「Seasteading」というさらに大きな構想に商業的要素を加えて派生したもの。上手く活用できていない海を人の生活圏にして、その資源などを有効に活用しようという考え。Blueseedのようなプロジェクトは過去にもあったけれど、どれもビジネスモデルがなかったため失敗に終わってきた。今回のプロジェクトを始めたメンバーは、もともと2008年にシリコンバレーで設立された海の上のコミュニティを研究する唯一のシンクタンクであるSeasteading Instituteで働いていたそう。ここで仕事をする中で多くの外国人起業家と接し、彼が抱える問題を解決するために独立。2011年7月からBlueseedが動き出した。

Blueseedが求めるスタートアップ

 Blueseedに入居を希望するスタートアップは、紹介(リファラル)でチームに連絡を取るか、サイトから直接申請することが可能。経験豊富なパートナー(エンジェル投資家やベンチャーキャピタル)による選考プロセスを経て参加スタートアップが決まる。具体的にどんな素質を求めているかをDanに聞いてみました。

1.問題を解決するか。人の生活にインパクトを与えるようなサービスや製品か
2. それをユニークな形で実現しているか
3. それを上手く達成する能力があるか
4. クールなブランドを持っているか

応募方法

 2013年Q3の実現を目指して進行するBlueseedには既に473人の起業家が集まっているそう。スタートアップの数にすると123社、国でみると38カ国。興味があるスタートアップの皆さんは、blueseed.coでサインナップするか、質問がある場合はinfo[at]blueseed.co.までどうぞ。Blueseedの詳細は以下のスライドからも確認できます。壮大なプロジェクトのこれからに今後も要注目です。

【スタッフブロガー】三橋ゆか里

肩書きウェブディレクター。ディレクションの他、翻訳やライティングなど、フリーでお仕事してます。2011年1月15日に公開の映画『ソーシャル・ネットワーク』の字幕監修をさせていただきました。ツイッターIDは”yukari77“。

個人で運営している【TechDoll.jp】というサイトで、海外のテクノロジー、ソーシャルメディア、出版、マーケティングなどの情報を発信しています。目指せタイムリーな情報発信!

これまで雑誌のECで→UIデザインのコンサル→ウェブ制作会社などを渡り歩いてきました。そこで得たスキル、人、全部かけがえのない財産。幸せの方程式は、テクノロジー(UI, IA..)×マーケ×クロスカルチャー×書く・編集。いま一番夢に近いとこにいる。

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