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ソフトバンクがスマホ決済サービスでPayPalと合弁 孫正義氏にしかできないと思う理由【湯川】

[読了時間:3分]

 ソフトバンクとPayPalは、日本でデジタル決済を推進する合弁会社「PayPal Japan」を設立する計画を発表した。米国、カナダ、香港、オーストラリアに続いて、日本がグローバルモバイル決済ソリューション「PayPal Here」の5番目の導入地域となる。PayPal Hereは、スマートフォンに挿す親指大のカードリーダーと無料のモバイル・アプリケーションを使って、クレジットカードやデビットカード、PayPalによる支払いを受け付けることができるサービス。これまでコスト等の問題でクレジットカードの導入が難しかった中小規模事業者も、PayPal Hereを利用することで、スマートフォンを使っていつでもどこでもクレジットカードなどの決済を行うことができるようになる。

蛇足:オレはこう思う

 TechWaveの読者にとっては、Squareのようなサービスと言ったほうが、理解が速いかもしれない。僕自身、去年秋にシリコンバレーに行ったときに、タクシー運転手がSquareを使っていたので体験済みだが、非常に便利。レシートは電子メールで送られてきた。

 日本でのサービス開始が期待されていたものの、業界関係者の間では実質的にサービスインは無理と見られていた。日本クレジットカード協会が同様のサービスに対して否定的な見解を出していたからだ。

 昨年4月に同協会が「スマートフォン決済の安全基準等に関する基本的な考え方」という題で発表した文書は、「スマートフォン決済においても、通常の決済端末と同様、以下の機能が必要となる」として「売上票を出力する機能」を挙げている。つまりクレジットカード利用票などを紙にプリントアウトすることが望ましい、としているわけだ。

 紙にプリントアウト?何だ、それ!

 プリンターが必要になるわけだし、スマホ1つで決済できるというSquareのメリットがなくなってしまう。

 またクレジットカード業界を所管する経済産業省商務情報政策局取引信用課から、次のようなコメントを受け取ったとしている

 「本件取組は、クレジットカード情報の保護の強化を率先しようとする取組として一定の評価ができる。今後は、より広く関係者の意見を求めつつ、クレジットカード業界全体において取組が進むことが期待される」

 もちろんこれは業界の「考え方」に過ぎず、法律や条例ではない。

 しかし某業界関係者は「法律ではないけれど、業界団体がこういう意見を表明したのだからSquareの日本進出は難しいでしょうね」と語っていた。

 こういう状況なのだから、米国のベンチャー企業が日本支社を立ち上げてもうまくいかないんじゃないかと思っていた。

 変化を恐れない、力のある企業が動くしかない。

 そしてソフトバンクが動いたわけだ。ソフトバンクしかできない話だと思う。

 SquareでなくPayPalと組んだのも、Squareはクレジットカード決済サービスなんで完全にアウトだからじゃないだろうか。PayPalはあくまで送金サービスで、手段の一つとしてクレジットカードを利用しているに過ぎない、という主張が可能なんじゃないだろうか。

 日本ではアーリーアダプター以外になかなか普及しなかったPayPalだが、ソフトバンクと組んだことで知名度がアップすることは間違いない。

 さて日本のクレジットカード業界はどうするのだろう。反対の姿勢を保っていては手数料収入はPayPalの所有するクレジットカードライセンスに流れるだけだ。これまでコスト面の理由でクレジットカードを導入できなかった中小規模事業者の市場がすべて海外に流れるわけだ。日本のクレジットカード業界は前言を撤回してPayPal Hereを受け入れるしかないんじゃないだろうか。

 日本のオンライン、オフラインの決済が変わる。時代がまた一歩先に進んだ。

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