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総合ニュースアプリ「RideNews」とニュース消費のカタチの変化【湯川】

[読了時間:4分]
 DECOPICでおなじみの株式会社コミュニティファクトリーは、スマートフォン向け総合ニュースアプリ「RideNews」をリリースしたと発表した。特徴は、Twitterのつぶやき数などをベースに世の中で話題になっているニュース」をランキングし、さらにその中から友達が読んでいるニュースを優先表示する、というもの。業界用語を使えば、リアルソーシャルグラフをベースにした総合ニュースサービス、ということになる。

 サービス内容を発表文からコピペすると以下の通り。

■サービス概要について
1.提供期間:2012年6月5日(火)

2.サービス内容
■あらゆるジャンルのニュース
おもしろネタ、エンタメ、恋愛、スポーツ、社会、ITなど、あらゆるジャンルの最新ニュースを合計で約300本/日配信いたします。(※Android版のみ順次対応となります。)

■友達の読んだ記事がわかる
友達の誰がそのニュースを読んだのか、何人が読んだのかがわかるので、自分では見つけられなかったニュースにも興味が持てます。

■記事への感想投稿が簡単
エモーティコン(感情アイコン)をタップするだけで、記事への感想を投稿できるので、友達がニュースをどう思っているのかがわかります。

■記事にコメントをつけて簡単シェア
気になった記事にコメントを書いて、mixi、Twitter、FacebookなどのSNSに簡単にシェアできます。

3.アクセス方法
本アプリはApp Store、Google Playストア(旧Androidマーケット)よりダウンロードできます。
App Store → http://itunes.apple.com/jp/app/ridenews/id528214826
Google Playストア → https://play.google.com/store/apps/details?id=com.cfinc.ws.ridene
あるいは、「RideNews」で検索してください。

4.画面イメージ

蛇足:オレはこう思う

 1,2年前だったと記憶しているけど、某サイトのニュース部門のチームが僕のところへ意見交換しに来たことがある。「ソーシャル」という言葉が流行り出したので「ソーシャルニュース」というようなテーマで新しいニュースのコーナーを作りたい、というような相談だった。「日本に実名文化はなじまない」と主張する人のほうが多かったころだから「ソーシャル」といってもバーチャルソーシャルグラフ、つまりどこのだれか分からないユーザーの人気投票的なものでランキングが決まるようなサービスを彼らは考えていた。

 そのときの僕の意見はというと、そうしたバーチャルソーシャルグラフを使ったサービスは、はてなブックマークとか、いろいろ既に存在するわけだし、これからは実名でリアルな人間関係がネット上に乗ってくる時代なんだからリアルソーシャルグラフを使ったサービスを作ってはどうか、というようなものだった。

 リアルソーシャルグラフがネットの核になるとはほとんどの人が思っていない頃だから、僕の提案は受け入れられなかった。

 なので今回のニュースアプリ「RideNews」って、我が意を得たり、って感じですごくうれしい。ニュースサービスだけではなく、音楽も雑誌もビデオも教育も、ありとあらゆるサービスが、リアルソーシャルグラフを加えることでまったく別のサービスになると思うし、そこに大きなチャンスがある、という意見は今でも変わっていない。

 だから「RideNews」には、心から拍手をおくりたいと思う。

 その一方で、時代はさらに先に進んだんじゃないかとも思う。New York Timesの何年か前の記事で、取材を受けた大学生が「僕のほうからニュースを探さなくても、僕にとって大事なニュースならニュースのほうから僕を探してくれる」と答えたって話があったけど、まさしくそういう状況になってきていると思う。

 ニュースや情報を取得する目的って、大ざっぱに言ってしまえば2種類あると思う。自分の所属するグループでコミュケーションしやすいように共通認識、前提条件として、同じような情報を持っていることが望ましい。グループ内で活動するために、ある程度の情報は持っておきたい。そのための情報収集というのが1つの目的。

 例えば僕の場合だと、最近では香港に関係するFacebookのグループ内で活発に発言しているんだけど、その中で流れてくる情報やニュースは読むことが多い。あとは友達にIT関係者が多いので、友達がニュースフィードに流している記事を読む。そのほかには「メディア」「位置情報」「コマース」「音楽」とかいろんな分野のグループに入っているんだけど、その中のニュース記事は目を通すことがある。あとは日本という国にも所属しているので、ほかの日本国民、日本在住者とのコミュケーションのためにテレビのニュースなどもちょっとは見る。こういったニュース摂取は「重要なニュースは向こうからやってくる」という感覚だ。

 もう一方の情報収集は「こちらから情報を取りに行く」という形。僕の仕事はもちろんそうだし、ほかのどんな仕事でもそうだろうけど、仕事に関する情報は、検索なり調査なりで自ら積極的に働きかけて入手しなければならない。社会の中で自分ならではの価値を創造するという目的のための情報収集だ。

 つまりグループやコミュニティの構成員として活動するための情報収集と、社会で自分ならではの価値を出すための情報収集の2つがあるということ。

 前者は、オンラインコミュニティに属していれば向こうから「ニュースがやってくる」状態。テレビをボーと見ていても、ニュースが「やってくる」状態。つまり総合ニュースアプリやサービスを必要としない。

 後者は「こちらからニュースを取りに行く」必要があり、そのためのツールとしては検索エンジンが最強。あとはRSSリーダーなどもまあ健在。以前は前者の目的でRSSリーダーを使っていた人も多かったけど、今RSSリーダーを使っている人は仕事での情報収集という目的が中心だと思う。

 こう考えると、新しいニュースアグリゲーターサービスって、もう求められていないのかもしれない。新聞記事も友達の身辺雑記も、同列に「ニュースフィード」として読む時代になったんだと思う。Facebookが友達の身辺雑記もニュースフィードの「ニュース」という定義に含んだのは、ある意味、正しかったんじゃないかな。

 では今後はニュースアプリやサービスに未来はないのか、というと、何か新しいものは出てくるようには思う。

 例えば「向こうからやってくる」情報収集の場合は、Flipboardのようにタブレットを意識し、写真を中心にし、情報を雑誌的に楽しむというアプリなら存在価値がある。読む、情報を収集するという「前のめり」の情報摂取ではなく、ソファーでくつろぎながらコンテンツを楽しむためのアプリやサービスはこれからもいろいろ出てくるようには思う。そうしたアプリやサービスのキモは、デザインやUI(ユーザーインターフェース)、UX(ユーザーエクスペリエンス)になる。

 一方「こちらから取りに行く」情報収集としては、専門家の友人たちが今オンラインかどうか、忙しいかどうかが分かって、友人の専門家にその場で話を聞けたり、議論できるようになればうれしい。もちろんFacebookでも今それができるんだけど、そうした友人とのやりとりって重要な情報なんだから、どこかに再利用できるようにストックできるようになればいいと思う。

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