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全ての人が使えるプラットフォームの提供が役割ーTencentのインドネシア・アジア戦略【本田】

[読了時間:2分]

2012年6月7-8日、インドネシアのジャカルタで開催されたStartup Asia Jakarta(TechInAsia主催)。そのハイライトを4回に分けてお届けする。2回目は、中国最大のネット企業Tencent(中国語名:騰諮 日本語読み:テンセント)のインドネシア・アジア戦略。

TencentのSuyang Zhang氏(左)と聞き手はTechInAsia主催のWillis Lee氏
(Photo:Masahiro Honda)

 テンセント・モバイルのグローバル部門のアジア地域ディレクター、Suyang Zhang氏の発言から重要な点を抜き出した。


Q:中国とインドネシアの相違点と類似点は何か?
 違いはいくらでもあるが、インドネシアと中国にはいくつかの共通点がある。大きな人口を抱え、仕事を見つけるため大都市に集まった人々は同じライフスタイルを持つ。そして交通事情が酷い。人々はバスなど車の中で多くの時間を過ごすはめになり、手持ち無沙汰になる。そこに我々が繋がる必要がある。それこそが、モバイルコミュニケーションが時間つぶしに持って来いといえる理由だ。

Q:WeChatとQUTEの違いは何か?
(訳注:QUTE(キュート)は、無料通話やテキストメッセージが出来るモバイルアプリ)


ジャカルタ市内はBlackBerryが花ざかり

 WeChatはグローバル、QQmobileは中国向け。一方、QUTEはローカライズされたコンテンツも含め、インドネシアに特化したプラットフォームだ。QUTEのターゲットは明確である。インドネシアでは、iPhoneでなくBlackBerryユーザーが大半を占める。さらに、多くの種類の携帯電話が使われている。我々はそういった全ての人々が楽しめる製品を作る必要がある。(訳注:とはいえ、WeChatもインドネシア語対応を済ませている)

 それはインターネットの精神そのものだ。インドネシアの人のコミュニケーションは、社会階層の違いに応じた断片的なものになっているが、そうした経済レベルに関わらずコミュニケーションが取れるプラットフォームを我々は作りたい。それは、貧富の差という社会問題の解決にも繋がるかもしれない。だからこそ、我々は、時間を潰したり、ゲームをしたり、安価にコミュニケーション出来るプラットフォームを提供する。インドネシア人が参加できる場所を用意するのだ。

 施策は一歩ずつ進めている。コンテンツの前にプラットフォームを提供する。そして、現地のパートナーと組み、最適なコンテンツを提供する。パートナーには、Telkom(訳注:同国最大の電話会社)や主要な企業が含まれる。

Q:今後期待することは?
 Tencentはまだインドネシアではスタートアップであり、巨大であるが新参者だ(訳注:インドネシア進出からまだ6ヶ月)。我々には多くのリソースがあるので、是非我々と一緒に仕事をして欲しい。我々はもっと多くのことが出来るし、多くのビジネスを立ち上げられる。そしてジャカルタはそれが出来る場所だ。

蛇足:私が思うに、
 同氏は、Tencentが中国で普及した要因として、かつて中国で多くの人に仕事がなかった時代、Tencentは彼らにも格安のサービスを提供することで拡大したことを上げていました。それが今のQQの登録者数、7億5000万に繋がっています。

 Tencentは同じ事をインドネシアでも展開しようとしています。いわゆる下層階級の人々にもサービスを提供することで、まずはIDを取得するのです。今は大きな収益源とならなくても、彼らの一部はインドネシアの成長とともに中間層となり、これから消費を拡大させていくでしょう。

 その時にTencentが彼らと繋がっていることで、同社が得られる利益・恩恵は計り知れないものがあります。

蛇足:オレはこう思う

 インドネシアのユーザー向けの話になっているけど、一番大事なことはtencentが中国語圏外に注力し始めたことだと思う。中国13億人を狙うだけでも十分な市場なんでこれまではそこばかりに注力してきたのだけど、モバイルSNSのWeixinのグローバル版をWeChatと改名したことからも分かるように、いよいよ世界を獲ることに本気になってきたのだと思う。

 そしてその戦略は、低所得者層を狙うことだ。いきなり高所得者層を狙えば、Facebook、Apple、Googleと正面衝突する。この段階で正面衝突しても何もいいことがない。なので米国勢が絶対狙ってこない低所得者層をまずは狙う戦略なのだろう。アジアの低所得者層はいずれ中間層に成長することは間違いない。オカッパ本田の指摘通り、その成長に合わせてTencentの収益も膨らむという読みなのだろう。

 実はこの戦略は、ソフトバンクとインドのBharti財閥の合弁会社Bharti SoftBankの戦略と同じ。このままではTencentとBharti Softbankとの正面衝突になりそう。今年2月にインドでBharti Softbankの幹部を取材した際に、確かに彼らはTencentを非常に意識していた。Facebookに対してはほとんどライバル意識を持っていなかったのと対照的だ。

 21世紀はアジアの時代。シリコンバレーの動きだけを追うような20世紀的な視座では、世界のITの動向を見誤ることになると思う。

著者プロフィール:本田正浩(Masahiro Honda)

写真家、広義の編集者。TechWave副編集長
その髪型から「オカッパ」と呼ばれています。

技術やビジネスよりも人に興味があります。サービスやプロダクトを作った人は、その動機や思いを聞かせて下さい。取材時は結構しっかりと写真を撮ります。

http://www.linkedin.com/in/okappan
iiyamaman[at]gmail.com

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