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主催の一人なんで「参加してきました」って表現も変なんだけど、基本的に企画、運営は香港・深圳(シンセン)に住む友人たちがやってくれたので僕も実質参加者の一人って感じで見てきました。
1カ月前に深圳(シンセン)にいったときは、若者の街や、電気街、ショッピングモールなどを見て回ったんだけど、今回のツアーではそうした場所に加えて中国インターネット最大手の腾讯(Tencent テンシュン tengxun)、大規模書店「深圳(シンセン)書城」、ウオーターフロント街「快乐海岸(ココビーチ)」などと見てきました。
腾讯(Tencent テンシュン tengxun)での取材の件は、別の原稿にまとめるつもりなので、今回の記事では大規模書店とウオーターフロント街のお話を写真を交えてしたいと思います。
立ち読み奨励の巨大書店
この大規模書店「深圳(シンセン)書城」、とにかくめちゃくちゃ広い。ネットの情報によると8.7ヘクタールの敷地内に82000平方メートルの2階建てのビル。1階と地下1階が書籍コーナーで、2階にはレストランなどが入居しています。
オープンは2006年11月。日本の黒川建築設計事務所によるデザインだそうです。
朝の10時ごろにいったので、そのときはまだ人の数は少なかったんだけど、しばらくすると人がどんどん増えてきました。そしてなんと、多くの人が本を手に取ったと思ったら、その辺りに座り込んで読み始めるんです。本屋の立ち読みならぬ「座り読み」。
なんでもこの書店は国営なんで、本を売って収益を上げることよりも国民の知識レベルを上げることを重視しているので、立ち読みに対して寛容らしいんです。児童書のコーナーも巨大でありとあらゆる本が並べてあって、そこにも子供たちが群がって、貪るように本を読んでいました。学ぶことにここまで貪欲な子供たちを見てこの国は今後ますます発展していくんだろうなと思いました。
それでこの本屋の屋上へ上がれば、まるで公園のような巨大な空間と突き抜けるような青空が広がっていました。
なんなんだ、この豊かさは。
進化したお台場、ココビーチ
さてそのあと訪れたのが红树林、快乐海岸(ココビーチ)。深圳湾沿いにあって、向こうに香港を眺めることの最新スポットです。東京で言うとお台場のような場所なんだけど、お台場よりも大きく広く、高級感が漂っているような感じの街です。
海の近くのバーでビールを飲んだんだけど、ゆったりしていて本当にリラックスできました。バーを出た頃には夕方で、涼しくなっていて、夜は若者たちのデートスポットになるんだと思います。
JETROレポートによる深圳のデータ
深圳に関する日本語や英語の情報が少ないので、統計的なことが分かりづらいんだけど、JETROが「深センスタイル」という非常に有益な情報冊子を作っているので、その中から幾つか気になる情報をピックアップしました。
深圳(シンセン)は香港の北に隣接して、面積は約1953平方キロメートル。人口1400万人。
一方で東京は、2187平方キロメートルで、1300万人。東京とほぼ同じ規模ということです。ただ深圳(シンセン)の平均年齢は28歳と非常に若い街であることが分かります。ちなみに日本の平均年齢は45歳だとか。
30年の歴史しか持たない「移民都市」なので、「中国の他の都市とはまったく違う雰囲気を醸し出している」、としています。
出典:JETRO
出典:JETRO
出典:JETRO
日本企業にとって、「中国市場と言え ば上海」という固定観念が強く、華南地域のここ「深圳」に目を向 ける人は多くありません。
消費市場としての深圳は、例えば 2009 年の 1 人当たりの年間 可処分所得が 2 万 9,244 元、消費額が 2 万 1,526 元と、いずれの 数値も上海や北京、広州を凌ぎ全国一の水準にあります。隣接する 香港との間では、人とモノの交流が活発になり、経済圏、生活圏と して一体化が進んできています。 日本のサービス産業の海外展開では、香港で成功をおさめ、隣の 深圳を中国大陸進出の足掛かりにするといったケースが目立ってきています。香港で流行ったものが中国に浸潤していく過程で、ゲー トウェイとしての深圳が期待できます。全国からの移民都市である 深圳は、住民の多くが故郷とのつながりを持っており、中国全土へ の波及効果が大きいと言われます。
2015年には新高速鉄道、いわゆる中国の新幹線が、香港の西九龍駅から深圳(シンセン)北駅間で開通し、深圳(シンセン)北駅から香港までをわずか16分で結ぶことになり、今後ますます深圳(シンセン)が栄えるものと思われます。
今回のTechWaveツアーでは、深圳(シンセン)や香港に住む事業家や投資家の方、10人以上が集まってくれて、いろいろとお話を聞かせてくれました。田渕さんというお名前の投資家の方は、中国全土をいろいろと見て回ったそうなんですが、やはり今、深圳という街が一番熱いと語ってくれました。
2020年には深圳(シンセン)を中心としたこの辺り一帯が、経済圏としてニューヨークを抜く、とも言われています。
今、世界で最も追い風が吹いている地域だと思います。
帰国後、中学生の息子に、いかに深圳(シンセン)が豊かできれいな街であるかという話をしたんですが、息子の反応は「でも中国ってなんか嫌だなー。ずる賢いイメージがあって。それに街も汚そう」という感じでした。なんなんだろうこの先入観。
権力者が意図的にこうした先入観を植え付けているのか、それとも国民自らがこうした理解の仕方を望んでいるでしょうか。
確かに、中国の新幹線は日本のまるまるパクリであるとか、携帯電話の偽物が横行しているとかいうニュースを目にすることが多いです。そうしたニュースだけに接していると、中国人ってあまりいいイメージではありません。
でも深圳(シンセン)で出会った中国人の人たちは、みな愛想よく親切でした。日本人の間で「深圳(シンセン)の原宿」と呼ばれる東門と呼ばれる街では、屋台の前で立って食事していたら、ベンチに座っていた10代の女の子が「ここに座ったら」って席を詰めてくれました。原宿で女子高生がオッサンのために席を詰めてくれるなんてことは絶対ないと思います。
まあパクリ文化も事実なんだろうけど、その一面だけで中国を語るのもなんだかなあ、と思います。
ちょうど30年前にロサンゼルスに留学したときも同じようなことを感じたことがあります。ただしその頃「ずる賢い」とアメリカ人に思われていたのは中国人ではなく日本人でした。日本人はエコノミックアニマルと呼ばれ、金のためならなんでもする動物、というイメージでした。「人間」じゃなく「動物」だったんです。
米国に納めるべき税金をごまかした日本企業のニュースや、人種差別、女性差別的な発言をした政治家のニュースが大きく取り上げられていました。
そんな空気の中、日本人としてアメリカに生活するのは結構辛かったです。日系アメリカ人の友人たちは、「おれたちは日本人ではなく、アメリカ人。ひどいのは日本に住む日本人。おれたちじゃない」と主張し、自分たちと日本人の間に線を引こうと必死でした。
企業スキャンダルや政治家の失言は、確かに事実でした。しかしその一面をもって日本人全体を評するアメリカ人には「なんだかなあ」と思ったものです。
そのころは「Japan as No.1」という本がベストセラーになり、日本経済が急成長し世界中の賞賛を浴びていたころでした。日本の急成長をおもしろくないという感情が多くのアメリカ人の中にあったのかもしれません。そうした感情が、日本の悪い面ばかりに必要以上にスポットライトを当てていたんじゃないかと思います。一般アメリカ人も日本の悪いニュースのほうばかりを喜んで読んでいたんじゃないでしょうか。
それと同じことを今の日本人もしてはいないでしょうか。権力者の情報操作や、時代の「空気」に流されてはいないでしょうか?
時代の空気が一方向に流れているときこそ、自分の目で世界を見る必要があると思います。一般的に言われていることと違ったものが見えてくるかもしれません。
そしてチャンスは、時代の空気に流されている人ではなく、自分で行動し自分で考える人にこそ訪れるものだと思います。