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ユーロスタートアップはいかが?【佐藤達夫】

[読了時間:2分]

フランス・パリで、ローカルの人と旅行者を結びつけるP2Pサービス「Shiroube」を起業した佐藤達夫さんに、ヨーロッパのスタートアップシーンの概況と、佐藤さん自身の挑戦について寄稿してもらいました。(本田)

佐藤達夫
(@tatsuoshi)

 スタートアップと言えば、米シリコンバレーからベイエリアが本場ですが、ここヨーロッパも負けていません。ヨーロッパで起業する日本人テックアントレプレナーの当方が、ユーロテックスタートアップシーンの特性と魅力をご説明し、日本から海外の様々なマーケットへの展開を志す方へ情報をシェアできれば幸いです。


ユーロテックシーン

 現在は円高で、ユーロも日本人にとってだいぶ安くなりました。ヨーロッパはその統一通貨に代表され、またシェンゲン協定という国境での行き来が自由な枠組み、また数十の言語グループや民族が行き交う日本では感じることの出来ないマーケットのダイナミズムがあり、この背景にある文化はテックシーンにも大きな影響を与えています。

 こちらでも本場のベイエリア系のスタートアップは非常に人気が高く、情報の伝播、サービスのコピーも非常に早いのですが、地場のスタートアップも負けていません。初期から多言語でサイトを作る事や、文化毎の差異、国ごとに異なる規制を乗り越えることを最初から意識したサービスを作る事が特徴といえるでしょう。SkypeやSpotifyもユーロが生んだ人気のスタートアップです。


 国や地域で分けるとドイツ、ベネルクス、北欧、フランス、中・東欧系、ロシア、イスラエルのスタートアップは技術、ソフトウェアに特化したサービスが多く、南欧系のスタートアップは言語が共通なことを生かして最初から南米のマーケットへの参入が多い傾向が見ててくるかもしれません。

 アメリカにおけるベイエリア、日本の渋谷のようにテックハブと呼ばれる先端産業集積地域はヨーロッパにもあります。以前は、イギリスのシリコンフェン、南仏のソフィアアンチポリスなどが著名でしたが、WEB、インターネットビジネス界隈ではテックハブも大きく様変わりしてきました。例えば、ロンドンのオールドストリート近辺のシリコンラウンドバウト(私自身も10年前にここで仕事をしていた思い入れの深い場所です)、フランスのパリ2区、ドイツのベルリン、オランダのアムステルダム、イタリアのミラノなどは欧州でも有数のテックハブとして、多くのコワーキングスペースやアクセラレータ、スタートアップイベント、が開かれるような場所として機能しています。
 

Peer to peer (P2P) travel 起業のキッカケ

 私自身は、中国と東南アジアで2年ほど、イギリスに2回トータルで3年、個人的にスイス、フランスは3回目でトータル5年程度在住、また訪れた国は100カ国を超え、社会人生活のほとんどを海外と関わり、過ごす事になりました。

 とりわけヨーロッパは陸続きで短時間の移動でも言語や文化が変わる非常に面白い環境にありますが、たとえ短い滞在期間であっても、そういった現地のローカルシーンを体験できないか?というのがShiroubeが提案しているコンセプト (Peer to peer travel)です。

 サービスの原形は私自身が東欧で現地の大学生に日本語を教えながら、彼の住む地方都市にある大学、小学校、地元のレストラン、バー、クラブなどリアルなローカルシーンに触れられた事で、ガイドブックには決して載ることはないであろう、その実際の生活を経験できたことは、まるで自分が映画の中のシーンにいるようでした。また、その学生は引換に、日本語のスピーキング機会を得ることができ、双方にメリットがある経験が出来ましたが、当時はまだこういったやり取りを出来るサービスがあまり無く、その学生さんを探すのに苦労していました。Shiroubeは私自身の感動体験を元に、ローカルの人と訪問者をつなぐことを目的としています。

スタートアップの運営

 このShiroubeは、全員でたった3人、私がフランスのパリで、サービス運営とマーケティングを行なっているのですが、実は技術開発、運用は共同創業者であり、元上司でもある的場(株式会社Mafe)が東京という、珍しい形態で行なっています。(業務のほとんどを世界中にクラウドソースしています)しかしながらこういった運営形態を選択した事は、ビジネスとして市場を精査した結果でもあります。

 あまり知られていないことですが、世界の旅行マーケットの半分以上はヨーロッパが占めており、まさに激戦区であるとともに、一方で社会、文化、ビジネス的にも旅行が普段の生活に染み付いており、旅行系スタートアップにとっては非常に最適な環境です。

 私自身は創業者として、またマーケターとして、本場で人々に受け入れてもらえるようなサービスの提供を使命と考えておりましたが、一方で、客観的に日本を振り返ると、テクノロジー、デザイン、運用レベル、ユーザーのオンラインサービスに対する受容性の高さ、など世界でもトップクラスである事も事実です。

 そこでアイデアを的場に相談した所、現在のテクノロジーや環境であれば両方をミックスした方がスピード感もあり、効率もよく、我々の提案価値の最大化が出来るのではと運用形態の決断に至りました。

自分たちを理解してもらう為に


今年参加したTNW(The Next Web) Conferenceにて

 しかしながら、目標と信念をもってサービスを開始し、自分たちは正しいと信じていても、誰にも振りむいてもらえない時期は長く続きます。

 なぜなら、オンライン上だけで完結するサービスと異なり、我々のサービスはオフラインで実際にユーザーに現地で触れ合ってもらうサービスです。それには世界中でまずサービスを知ってもらう必要がありますが、当時の我々は理想だけでコミュニケーションの手段もなく、リソースにまで全く考えが至っていませんでした。

 そこで再度自分たちを振り返り、そもそも、なぜこういったコンセプトを実現しサービスをしたいのかを再度問いかけた結果として、我々自身が人に直接感動体験を共有しなければ、そもそも誰にも理解される事は無いのでは無いかと考えました。

 そこで、創業者である私自身が、とにかく世界中の人にオフラインで、Shiroubeの話をして行く事を決心しました。現在は1年のうち半分程度は世界中のスタートアップやテック、旅行業界のイベントに直接参加し、のべ数千人以上にShiroubeの話を届けています。そして、その結果や反響は徐々に現れつつあり、現在のユーザーオーディエンスの獲得しつつあります。

ユーザーがフォローしてくれる

 スタートアップを運営していて、もっとも嬉しいのは、何といっても自分が新たに作ったコンセプトをシェアしてくれるユーザーが世界中に現れたことです。実例をご紹介できればと思います。

 例えば、パリ在住のアメリカ人ティファニー(http://shiroube.com/ads/2112)は、子供連れの方のケアも可能なローカルガイドで、普通の旅行ではあまり知ることの出来ないパリのクールなエリアを案内してくれます。

 また都市でだけではなく、自然のネイチャーガイドも多く、変わった所ではヒマラヤの登山ガイドまで登録しており、使い方やツアーコンセプトは千差万別でユーザー自身がどんどん新しい使い方や可能性を生み出しています。

 日本人は内向きであるとよく言われていますが、そんな事は無いと思います。サービスを運営していても多くの日本人ユーザーさんがいらっしゃいます。是非、皆さんも私がしたような感動体験を味わってみて下さい。世界が変わりますよ!

著者プロフィール:佐藤達夫

4カ国在住、5言語、100カ国超訪問の日本人テックアントレプレナー、オンラインマイクロローカルガイドスタートアップ、Shiroube(シルベ)を2011年起業し3,000都市、10万人の旅行者にサービス中。パリを中心に年間の半分は世界中のテックイベントでマーケティングをする日々。在外選挙区を実現する会 会頭

@tatsuoshi
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